「レストア途中で行き詰まって、腐らせたバイクを安く処分して欲しい…」というご相談を頂いたGN50は、 ブレーキが固着し車両の押し引きもままならず、エンジンは圧縮が無く、車体は錆びや腐食で覆われていました。
実働車でも0.5~2万円程度の買取相場となっているGN50E。相場的には処分費用を頂戴しての回収となるところですが、海外貿易ルート―を活用することで無料で引取りさせて頂く事ができた事例です。
以下、査定内容の詳細をご案内させて頂きます。
「50ccトラッカーを作ろうと思って。友達が腐らせていたGN50Eを無料で貰引き取ったんですが、レストア用パーツのあまりの少なさに断念しました」と今回処分するいきさつを教えてくださいました。
エンジンに雪が積もっているのかと見紛うばかりの腐食をはじめ、まだら模様に汚れたシート等どれひとつとっても商品価値を見出すことは難しい状態ではありましたが、 アジア向けの貿易ルートで何とか商品価値を見出し、処分費用を頂戴することなく無料で引取り回収させて頂いた事例です。
足回り
125cc版のGN125E並のロングフォークを採用したスズキ・GN50Eは、GN80Eとほぼ同サイズの姉妹車です。
GN50E・GN80Eどちらも中古市場への出品が少なく、部品を調達するのが難しく、自作パーツを作成する必要性に迫られるなどレストア難易度の高い車種となっております。
さて足回りの状態を確認すべく、先ずは前後のサスペンションをチェックしたところ、茶色を通り越して無数の青サビや腐食が発生しており、 フロントフォークはまるでモップの柄のようにガチガチでフォークの減衰が確認できないほど劣化しておりました。
続いて前後のブレーキをチェックしていくと、リアブレーキは固着して、車体の押し引きが1人では難しいほどの抵抗を生んでいました。フロントブレーキは留め具欠品でキャリパーが離脱。前後とも商品価値のないジャンク品と化していました。
前後ホイール・リアショックといった重要箇所もサビ・腐食がキツく、パーツとしての価値を見出すことは事実上不可能でした。
外装
「友達から無料で引き取った時はもう少しましだったかな?」とオーナー様が仰る現在の状態は長らく放置されていたことで荒廃感に満ちております。
張り替えられたシートカバーがパリパリになっているシートにはパーツ価値を見出せませんでしたが、
内部が錆びているタンク、キツめの腐食が見受けられる前後メッキフェンダー、色褪せの目立つサイドカバー等は状態こそ良くはありませんが、パーツ価値として評価できる状態にありました。
足回りは散々な評価でしたが、外装で若干リカバーし無料で引取り出来る可能性も見えてきました。
エンジン周り
少なく見積もっても10数年以上の不動状態と思われるエンジンは、全体が白一色に見えるほどサビ・腐食に覆われ、並大抵のリペア作業では再生できない状態にまで侵されておりました。
キックレバーを踏み込んでの圧縮もほとんど反応がなくエンジンは死んでいる状態、再生させるにはクランク交換などフルO/Hが必要と思われました。
まだ部品供給が行なわれている車両であればともかく、市場評価額がそれほど高くないスズキ・GN50Eの場合、明らかに修理コスト方が高いと判断し買取での対応を断念せざるを得ませんでした。
圧縮が無く腐食で覆われたエンジンは完全に処分対象のジャンク品の扱いとなってしまいました。
フレーム回り
80年代のスズキ車らしい頑強さを持つGN50Eでしたが、フレーム接合部などに重度のサビ・腐食が発生しており、再生させるにはそれなりの補強が必要と思われる状態でした。
特にエンジンマウント部やダウンチューブサ・スタンド接合部などの錆びは激しいものがあります。
それでも剛性を損ねるようなダメージはなく充分に再利用可能な状態にありました。
GN50Eのフレームは100~150ccのエンジンを積むにも十分なスペースを有しています。
エンジンは処分対象の評価となってしましましたが、100ccクラスが流通の大部分を占める東南アジア向けにフレーム価値が見込めたことはポジティブな内容となりました。
電装/保安部品
ウインカー・ヘッドライトといった保安部品は一通りついているものの、バッテリーそのものが欠品状態。
現在の傷み具合から判断しても、正常に作動できる見込みが限りなく低く、見込み判定ながら最低評価に留まりました。
また、経年によるダメージはコード類表面も激しく劣化させており、配線の一部には焦げ茶色の腐食具合を示した箇所まであります。
ここまで進行してしまうと手の打ちようがなく、電装系の評価も低い内容に。電装・保安部品を含めてここまでの車両評価で、無料で回収できるか、処分費用が発生するか、微妙な情勢に。
その他
ハンドル以外はほぼ純正パーツのままでしたが、現在の市場評価額を考えると中古パーツとしての価値は甚だ低く、あらゆる部品に痛みや劣化が目立つ状態である点を考慮すると、車両価値ほぼゼロという結論に至りました。
オーナー様からは格安での処分ということでご相談頂いたのですが、何とか無料で引取り回収する事ができないかを模索するためしばしお待ち頂くことに。
無料引取りとなったスクラップ状態のGN50Eの総合評価
下記で詳細していますが、GN50Eは実働車でも0.5万円~2万円程度の買取相場となっています。
常識的に考えれば、サビと腐食がない箇所が皆無と言えるほど傷んでいるスクラップ車両に買取価値がないのは明白です。
再利用可能なパーツも非常に少なく、圧縮が無く死んでいるエンジンは修復コストが再販価値を上回るため、国内流通では処分費用を頂戴して回収しない限り赤字になることが濃厚です。
ただし、東南アジア向けのマーケットには適合するポテンシャルを有しています。そこで取引先の貿易業者に確認したところギリギリ無料で引取り回収できる有意な値段提示が!
弊社パッションの販売ネットワークを洗ってみた結果、無料での引取り回収が出来る事となりました。
お客様の談話と無料引取り回収後記
「いやぁ~。出来るだけ安く処分してとは言いましたけど。無料で引き上げてくれるとは思いませんでしたわ」と快諾してくださったオーナー様。
「もともとレストア用に無料で引き取ったジャンクバイクでしたから。貰った当時より今の方が状態は悪いしね。無料で引き取ってくれるんなら助かるわ。」と仰って頂きました。
「やっぱ、多少はパーツが揃ってないと相当きついね。」と組み立て最中のモンキーを見やりながら、多少の無念さが滲んでいたお言葉が心に残りました。
GN50E 査定相場
全長1,950mmの大柄なボディとなり、RG50Eと同型エンジンを搭載してデビューしたスズキ・GN50Eは、60km/h規制前のバイクであるため、実動車両はかなりパワフルな加速力を持っております。
しかしながら販売成績が振るわず、短命に終わってしまったこともあり、市場での流通は極めて少ないです。
毎週、数千台もの中古バイクが取引される業者間市場でも落札事例は少なく、過去24か月遡っても5台の取引しか確認できませんでした。
以下、業者間取引市場における直近24ヶ月の取引データとなります。
GN50E|取引相場の詳細 |
落札価格 |
状態 |
外観 |
3万円 |
実働車 |
使用感有 |
2.6万円 |
実働車 |
使用感目立つ |
2.6万円 |
不動車 |
見た目は綺麗 |
1.7万円 |
不動車 |
使用感有 |
0.9万円 |
不動車 |
劣化目立つ |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
過去24カ月間で合計5台の取引があったGN50E。内訳は実働車が2台、不動車が3台。平均取引額は実働車が2.8万円、不動車が1.7万円となっています。
実働車であれば、使用感が色濃い車両でも2~3万円程度の取引額は見込めそうです。不動車はそこから実働化に向けた修復コストが減額された額で数千円~2万円程度の取引が多くなりそうです。
上記、業者間市場での取引額から買取業者の査定額を逆算するには、業者の儲けと経費(出品手数料や運送費用など)を差引く必要があります。
逆算して見えてくる査定相場は、実働車では0.5~2万円程度、不動車になると修復コストの応じて、処分仕様を頂戴しての回収~買取で値段が付く場合は1.5万円程度までとなっています。
GN50E 豆知識
80年代50ccバイク最速を誇ったRG50Eと同型エンジンを搭載し、パワフルな50ccアメリカンというコンセプトで販売を開始したのがスズキ・GN50Eです。
残念ながら販売成績はさほど振るわず、早々と生産を終えてしまいましたが、兄貴分にあたるGN250やGN125は中国生産にて販売を継続中。
その生産コストと販売価格の安さで販売台数を伸ばしており、現在でも元気に走る姿を街中で見ることができます。
GN50E
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 2台
- 平均価格: 28,000円
- 最高価格: 30,000円
- 最低価格: 26,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 3台
- 平均価格: 26,000円
- 最高価格: 17,333円
- 最低価格: 9,000円
相場情報:2018年1月19日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。