「事故を起こしてしまったのですが、すぐに引き取りと回収をお願いできますか?」というお電話を受け、事故現場に急行してた査定員が目にしたのはフロントフォークが歪曲して車体が縮んでいる一見して事故車分かるボルティーでした。
1万円台から販売されている中古車を探す事ができ、業者間では実働車が平均で5万円弱で取引されている車種です。損傷の激しい事故車となると処分費用を頂戴しての回収が濃厚でした。
そこを何とか買取販売店の強みを発揮して、
弊社販売店のストック用パーツとして、難有のフレーム、始動しないエンジン、独自色に塗装されたカバーやテールカウル、使用感のあるシートや消耗品といったパーツ価値を地道に積み上げ、何とか無料で引取り回収することが出来ました。
無料での引取り回収となる旨お伝えして了承を得られましたので、廃車手続きを当社で無料で代行させていく手順をご説明させて頂き、車両を引き上げて積み込み、お客様を最寄りの駅に送迎して査定完了となりました事例です。
事故現場からお電話いただいて、事故現場で査定させて頂きましたボルティー、
山間部下りでよそ見をして側壁へ正面衝突してしまったそうで、フロント周りがまるで飴細工のように歪んでいて一見して事故車と認識できます。
当日は学生時代最後の思い出にと出かけたツーリング中だったそうです。「(あっ…!)と思った際に躊躇わずハンドルから手を離して飛び降りた」そうで、オーナー様が軽症であったことが不幸中の幸いでした。
以下、今回拝見させていただいたスズキ・ボルティの車両詳細となります。
足回り
側壁への正面衝突により、まるで冗談のような角度にグニャリと曲がってしまったVOLTYのフロントフォーク。
通常の自動車との接触事故等であれば、衝撃の逃げ場がある程度あるのですが、真正面から壁にぶつかった事故の場合、このように大きく折れ曲がってしまいます。
その影響はフロントホイールもその衝撃がモロに反射し、内側へベロリと曲がった異常な痕跡が残っていて、オーナー様が軽症ですんだのは、正直に申し上げて僥倖以外の何物でもないと思えました。
『実働車でも、業者間では5万円弱で取引されている車種です』
この状態では、修復コストが車両価値を上回るためレストアは商業的に困難という判定に。この時点で、部品取りの価値での査定となりました。
後部足回りは無傷のままでしたが、残念ながら車種の価値が低めのボルティーの使い込まれたリアホイールやブレーキ類に部品価値はごくわずかしかありません。
買取を視野に入れた査定から、無料で引取り出来るか?若しくは有償での処分代行になるか?の査定となりそうです。
外装
車体前半はともかく、車体の後ろ側はそこまで悪い状態ではなく、再利用できそうなパーツもありました。
しかしながら、オリジナルのカラーで再塗装されたサイドカバーやテールカウルは他車種への適合は配色的にほぼ無理、傷と劣化の目立つフェンダーやシートも車種の相場を考えると無価値に近いと言わざるを得ません。
ボルティーの外装では最も値の張るタンクは青に再塗装されていて大きく凹んでいるためパーツとしては計上できません。
外装としては無価値で何とか無料で引取り回収できるか?という評価に留まりました。
エンジン周り
イグニッションをONにすると後部ウインカー等の点滅はできたものの、事故の衝撃でエンジンにトラブルが起きているのか、セルは回れどエンジンはかかりません。
原因は多々考えられましたが、『実働車でも、業者間では平均で5万円弱で取引されているボルティの市場価値』を考えると修理しての再販化は難しく、残念ながら要修理エンジンにそれ程の価値を計上する事はできませんでした。
走行距離10,500kmと浅かっただけに残念ですが、車両を無料で引き取り出来るかも微妙な情勢となってきました。
フレーム回り
フロントフォークの曲がり具合から想像はできましたが、フレームの接合部に衝撃を吸収したことを物語る皺が刻まれています。
前輪がそもそも歪んでいる為、前後輪を一線上に並べて足回りやシートレールの歪みを確認することは出来ませんでしたが、目視や触診では大きなゆがみや変形は無さそうでした。
再利用は可能とも言えますが、皺が寄っているフレームの価値は大きく減額されるためこちらもパーツ価値としては低い評価に留まりました。
電装/保安部品
純正マフラーへのガリ傷があり腐食や錆びの目立つエキパイ、カップに亀裂のあるメーターなどは、ボルティーの純正品としては、他のパーツと同じように大きな価値は計上できません。
事故時の衝撃で損傷しているヘッドライト・前部ウインカー・ホーン類などは処分対象品の評価に。
自賠責保険証の記載では購入して4ヶ月少々といったところで、バッテリーに関してはほぼ新品に近い状態と言えます。
依然として焦点は無料で引取り回収ができるかといった評価に留まっています。
その他
フルノーマル状態で乗ってこられたバイクながら、現在のスズキ・ボルティの車両評価額は非常に厳しく、使える部品があってもお値段をつけられるのはごくわずかなパーツのみ。
生き残ったパーツも状態的にそれほど良くはなく、精一杯評価させて頂いても買取には至りませんでした。
無料引取りとなった事故車のボルティーの総合評価
以上が今回のスズキ・ボルティの査定チェックポイントですが、逃げ場のない衝撃によって負ったダメージは尋常ではなかったことをフロントフォークの曲り具合とフレームへの皺寄せが物語っています。
査定させて頂きましたVOLTY(1994~2004年の販売)は1994年式の初期型でした。
15~25年前の車両としては非常に多くの中古車が流通しているボルティーですがその市場価値は控えめと言えます。
業者間で中古車を取引する業者オークション市場では、実働車が平均価格で5万円弱で取引されています。初期の1994年式となると少し下がって4万円程度で取引されています。
もっというと、店頭での販売価格も車両価格で1万円台~(平均価格は14万円程度)で見つけることができる車種となっています。
そのような相場を形成しているボルティーにおいて、損傷の激しい事故車となるとその時点で買取は少し厳しめになることがご理解して頂けると思います。
今回査定させて頂いたボルティーでパーツ価値として計上できたのは、少々難有のフレーム、始動しないエンジン、独自色に塗装されたカバーやテールカウル、使用感のあるシートや消耗品といった類で どれもパッとしない内容となりました。
上記点を鑑みてもやはりお値段をいつけして買取することは出来ず、何とか処分費用を頂戴せずに、無料で引き取って回収させて頂くのが精一杯でした。
お客様の談話と無料引取り回収後記
廃車手続きを無料で代行させて頂くことをご説明させて頂き、移動に少々難儀したボルティーをトラックの荷台に積み込み、オーナー様を最寄りの駅まで送迎させて頂く道中に 「学業に励む傍、余暇を利用してアルバイトで貯めたお金をもとに購入したこと」などVOLTYにまつわる色々なお話をお聞かせ頂きました。
無料にて引き取りさせて頂いたボルティは、弊社販売店のストックパーツとして、部品として一部が国内で再利用されるか、現状のまま途上国向けに輸出されるか、そはのいずれかで次の乗り手に一部が受け継がれることをご案内させて頂きました。
「手持ちがガス代と食事代くらいしかなかったので無料で引き取って頂いた上に、送って頂いて助かりました。ご面倒をおかけしますがよろしく願いします」とご丁寧な御挨拶を頂きました。
ファーストバイクを4ヶ月少々で失ってしまわれたことは非常に残念ですが、体一つで乗るバイクの場合、事故は命に直結する大変危険なものです。
バイクを楽しんで乗ることはもちろん大切ですが、その分しっかりと気をつけて乗ることもバイク乗りとして基本の一つ。
またお金を貯めてバイクを購入する意思を示されているオーナー様ですが、次こそは愛車との事故のないツーリングを楽しめることを弊社スタッフ一同心よりお祈りさせて頂きます。
VOLTYの買取相場を比較検証
1994年に車両価格298,000円という非常に安価な価格設定により、「バイクの価格破壊」として多くのメディアで話題を呼んだスズキ・ボルティ。 そのシンプルな作りと穏やかな出力特性は、バイクに乗ること自体を楽しむためのお手本的な作りである、として現在でも多くのライダーに親しまれております。 しかし、中古バイク市場では後継車種の「ST250」が低めながら堅調な取引状態を維持しており、先代モデルであるスズキ・ボルティは年々下落の傾向にあります。 買業者の値付けの前提となっている、業者間オークション市場でと取引データを基にボルティーの査定同場をご案内差し上げます。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|VOLTY
- 評価点5 極上車
- 評価点4 年式並み、やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み 若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
10万円台 |
7台 |
5台 |
0台 |
0台 |
7~9万円台 |
2台 |
11台 |
0台 |
0台 |
4~6万円台 |
0台 |
29台 |
1台 |
27台 |
0~3万円台 |
0台 |
38台 |
35台 |
64台 |
総落札台数 |
9台 |
83台 |
36台 |
91台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
過去1年間で、実働車は128台の取引があり、評価点の内訳は5点が9台、4点が83台、3点が36台となっていて大半は評価点4の車両であることが分かります。
1994~2004年という販売期間を考えると、今後は5点の車両の割合は更に少なくなっていく事が予想されます。
評価点別の落札価格帯を見ると、評価点5点の車両は全て7万円以上で大半は10万円以上の価格で取引されています。対して評価点3の車両はほぼ全てが3万円台以下で取引されています。
このことから、評価点3の車両となると、業者が提示する買取価格でほとんど値がつかないことが分かります。
その理由は、上記表の落札価格から、出品手数料や運送費などの経費と買取業者の儲けを差引いた額が、買取額となるためです。
1万円台~3万円台で落札される評価点3の車両の買取価格は数千円~2万円程度であれば十分に適正な買取価格と言えます。
評価点で5点が付く極上車であれば5万円からをベースに10万円台の査定価格も充分に狙えることが読み取れます。
対して、今回、無料で引取りさせて頂きましたVOLTYと同じ状態である事故車や不動車を意味する評価点1点の車両の取引データに目を移してみましょう。
最高落札額は、4.7万円、最低額は1,000円となっています。
傾向としては、キャブ洗浄などの比較的容易な修理で実働車となり、車体が綺麗でポテンシャルの高い車両は2~4万円台。不動車でも劣化が激しいと1万円台。
損傷の激しい事故車でパーツ取りとなるような車両は1万円未満での取引となっています。
以上、状態別の相場情報をご案内させて頂きました。実働車でも評価点が3の車両となると、買取価格が付いても数千円~2万円程度が見込まれるVOLTY。
損傷の激しい事故車となると、高価な社外品が無傷で残っているなどのケースを除くと買取のお値段は先ずつきません。
おそらく販売店も持たない買取店ですと処分代を頂戴しての回収とならざるを得ません。
弊社が無料で引取り回収できた理由は弊社販売店でのストックパーツとして価値を見出したためです。
パーツ価値すらないと思われるような事故車・不動車・スクラップバイクも徹底的に査定して細かいパーツ価値を積み上げる事ができます。
どんな状態でもお気軽にお問い合わせくださいませ。
VOLTY豆知識
最高出力20ps、乾燥重量125kgという極めて扱いやすいスペックとなり、そのシンプルな作りで多くのファンを獲得したスズキ・ボルティ。
デビューした1994年当時、ヤマハ・SR400が巻き起こしたレトロブーム(現在のネオクラシック)の流れに乗り中型バイクの入門用として女性ライダーにも広く支持されました。
教習車のように素直で扱いやすい上、カスタムパーツも非常に多く、当時の新車価格がお手頃であったことを引き継いで中古車としても原付バイク並みにお求めやすい価格で流通しています。
ファーストバイクとしてお勧めの一台だと言えます。
ボルティー
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 128台
- 平均価格: 47,195円
- 最高価格: 148,000円
- 最低価格: 12,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 91台
- 平均価格: 23,209円
- 最高価格: 47,000円
- 最低価格: 1,000円
相場情報:2018年1月3日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。