「ちょっと傷が多いんだけど。FZRを売りたいんで見てくれる」と出張して査定させて頂いたのは1992年モデルのFZR400RR SP(Sports Production)。
エンジン・ホイール・カウルなどに目立つ転倒傷痕、金属部分の塗装ハゲや錆びなど使用感が目立った反面、エンジン機能や外装の色味などは年式より良好で、総合的な評価は年式並みでした。
年式並みの実働車の買取相場が20万円台前半となっているFZR400RR SP。
相場的には20万円台前半の買取価格となるところでしたが、弊社販売店での仕入れも視野に入れつつ修復して磨いて光るポテンシャルを高く評価して相場を上回る26.5万円で買取させて頂きました事例です。
以下、詳しい相場情報を交えて査定内容の詳細をご紹介しています。
出張買取のご依頼を頂戴して、保管場所のご自宅にて査定させて頂いたのはFZR400RR SP
拝見させて頂いた車検証に記載されているフレーム番号は3TJ-152。1992年モデルです。
ZR400RR SPは実はとっても中古の流通が少ない車種です。
いったいいくらの査定額となったのか?早速査定していきましょう。
外装
現場に到着して目にしたFZR400RR SPの第一印象は「けっこう綺麗」でした。
天気も良く太陽光を反射して、外装カウルが一層艶やかに見えました。
近づいて細かく見ていくと、細かい傷や塗装剥離などが多いことが分かってきました。
先ずはメインのセンターカウルから。おやっ、青いラインに違和感があり良く見ると、カウルの割れをパテ埋めしてオーナー様ご自身で補修されたのか?
凸凹した表面に刷毛でペンキを塗ったような塗りムラや食み出しがあります。要再補修の箇所で買取価値を損なっています。
シートカウルは、FZR400RR SPに良く見られる現象ですが色褪せしたデカールが所々で剥がれています。
タンクには近づくと細かい傷が多数あ付いていますが、遠目には目立つ傷はなく艶があって綺麗に見えます。
フロントフェンダーの先端は細かい欠けがありますが、艶があり状態は先ず先ず。
1人乗りのシートには破れがあり、再販に向けてはシートの張替えが必要ととなりそうです。
外装全体の評価としては、素人補修による凸凹の塗りムラや細かい傷が減点となりましたが、使い込まれているFZR400RR SPが多い中では年式並みかやや良い査定評価点となりました。
エンジンやブレーキなどの機能面
見た目上の問題ですが、センターカウルから顔を出しているジェネレーターカバーに目立つ転倒傷があり、買取価値を下げています。
ジェネレーターカバーの表面がデコボコしているのは、こちらもパテ埋めした後に均さずに耐熱塗料を塗っているか?見た目の印象を損ねています。
センターカウルの内側にあるエンジンは、キャブレターやエンジンンに腐食が浮いていますが、オイル漏れは確認できませんでした。
続いて機能を確認するために
セルを回してエンジンを始動させます。キュルルという音に続いて、社外マフラーからボンボンと排気音を響かせてエンジン始動を確認。始動性に問題はありません。
アイドリングは少し不安定で、ごく軽い白煙を吹いていますが、エンストするような兆候はありません。
ガスを開けて回転数を上げると白煙の色が少し濃くなるようですが、日常使用で気になるような白煙吹きではありません。
続いて、オーナー様の許可を頂いて実走行。
ギアを上げ下げして走行します。3速から4速へが入りづらい兆候、シフトダウンがやや硬い感覚がありますが、その他は引っ掛かりもありません。
加速や減速でのもたつきも少なく、エンジン機能の買取価値はは先ず先ずで、年式並み以上の評価点となりました。
ブレーキも問題なく効きます。前後のサスペンションも機能的には不食い愛は感じられませんでした。
足回り
目立つ転倒傷が多かったため、タイヤを一直線に並べて足回りの捩れを見ますが、1990年代初期のレーサーマシンとしては歪みは少なめでした。
ステムは塗装ハゲが目立ち、バーエンドは削れ、グリップは色褪せ、ハンドル回りにはやや強い使用感が滲んでいます。
続いて前後のホイールを見ていきましたが、フロントホイールに削れ傷があります。前後のブレーキキャリパーやディスクローター、フルードタンク周辺は錆びや使用感がやや強め。
シングルのリアショックは手の入りにくい位置にあるため、劣化もやや色濃いですが、フロントフォークは錆びも殆どなくオイル漏れもなく状態は先ず先ず。
交換したばかりのチェーンは綺麗で消耗品の交換という事で少しの金額ですが買取価値を高めています。
フレーム回り
ジェネレーターカバー、センターカウル、バーエンド、フロントホイールに転倒を示す傷痕が確認できたため、 フレームに衝撃を吸収した凹みや皺が寄っていないか接合部を中心に入念にチェックいたしましたが、フレームの損傷を示す痕跡は確認できませんでした。
損傷はありませんでしたが、メインフレーム各所や接合されているステップやステー・スタンド・シフトペダルなど周辺部にもに錆びが多めに見られその点で査定価格がやや落ちました。
それでも磨いて落ちる錆びと異なり、修復が困難なフレームの剛性を損なうような少々や痕跡がなかったことはポジティブな兆候です。
電装系・保安部品
メーター周りは使用感が強く、社外のインジケーターを接続し配線加工しています。
剥き出しの配線を何本もハンドル回りに絡ませているので、再販化に向けては配線類の調整が必要となります。
電装系はバイクのメカニックというより電気系の技師としての技術が必要となります。加工された配線は構造を理解すること自体に時間を要することもあり、査定評価を気少し下げてしまいました。
キーシリンダー付近は見事に塗装が剥げてOn/Offの表示も見えません。
ホーン・ウィンカー・ライト類は不具合なく動作します。
カスタムなど
サイレンサー、スクリーン、FRブレーキホース、Fキャリパー、ウインカー、チェーン、スプロケなどが社外品となっているライトカスタム車です。
サイレンサーについては純正品の保有があり、キャリパーは純正品は欠品ですがBrembo製で買取価値の上乗せとなりました。
総合評価と買取価格
査定を終えて、
ネガティブな評価となったのは、傷がやや多く、素人補修や配線加工なども含めて、再販化に向けてケアする要素がやや多かった点。
ポジティブな評価となったのは、機能的には先ず先ずのエンジン、損傷のないフレーム、色褪せや退色の少なかった外装。
ネガティブ要素は、買取後に弊社整備工場でケアが可能な点が多く、ポジティブな要素はリカバーの難しい要素でした。
査定時点では、ネガティブ要素が目立ち、年式並みの評価点である3.5点となりましたが、
弊社整備向上で整備したとの状態としては4点台が期待できそうなポテンシャルを秘めています。
下段で詳しくご紹介していますが、年式並みのFZR400RR SPの買取相場は20万円台前半。
相場的には20万円台前半となるところでしたが、弊社販売店御での仕入れも視野に入れつつ、ポテンシャルを高く評価して、相場平均を上回る26.5万円の査定価格を提示させて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
「何回か倒してその都度、バイク屋に持って行ったんだけど、どんどん代金が高くなってるような気がしてさ。もっと綺麗に出来ると思ったんだけど。我ながら不出来な塗装だよね。」 と大胆に補修された経緯を教えてくださったオーナー様。
「大分くたびれてきてさ。維持費も修繕費もバカにならなく無くなってきて、ここらが売り時かなって。今じゃ30~40万で中古が売ってるっていうんなら、この状態で26万5千円付けてくれるんなら不満はないでしょ。」 と査定額にご快諾頂いての買取となりました。
実は、
穴埋め塗装は難しい工程で、気泡が出来ないようにパテを塗り、乾燥後に3種類以上の粗さで丁寧に研磨して表面を均します。
続いて塗装の前処理(研磨・マスキング・脱脂・プラサフ塗装)を行い、
室内若しくは乾燥した風のない日に最後に塗装(同じ色での塗装・クリア塗装・ボカシ塗装・コンパウンド仕上げ)を行います。
上記の工程を丁寧に行っても天候などで上手に補修できないこともあります。
塗装を個人で行う場合は、入念に準備して上手く行ったら費用が浮いてラッキーくらいに思って良いかもしれません。
FZR400RR-SP 査定相場の比較
1990年/1992年/1994年モデルと3モデルが存在するにもかかわらず中古市場での流通数がとても少ないFZR400RR-SP
当時は83.9万円の本体価格で売り出されましたが、2018年現在ではFZR400RR-SPの中古車は30~40万円台の税込本体価格で店頭に並んでいますが、
いったいいくらで売れるのか?
日本の中古バイクの相場を決定している業者間オークション市場での取引データを使用して、買取相場をご紹介いたします。
業者間市場での取引データ
- ▼状態を表す評価点の目安|FZR400RR-SP
- 評価点5 極上車
- 評価点4 比較的状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並みで若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
業者間市場のデータを過去1年間遡りましたが、3台しか取引のなかったFZR400RR-SP。
過去2年間に遡っても6台の取引しかありませんでした。
6台の取引データを下記表にしました。
FZ400R|市場での取引データ |
取引価格 |
評価点 |
走行 |
状態 |
30.2万円 |
3点 |
3.5万km |
小錆・小傷多い |
26.2万円 |
4点 |
4万km |
フレームに皺 |
25.2万円 |
3点 |
3.5万km |
綺麗、エンジン不調 |
24万円 |
4点 |
4万km |
使用感強め |
22.1万円 |
1点 |
2.3万km |
不動車 綺麗な状態 |
11.1万円 |
1点 |
1.5万km |
不動車 劣化目立つ |
(2018年2月時点で、業者間市場の落札データを過去2年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
年式並みの実働車の買取相場は20万円台前半
過去2年間で4台の取引があったFZR400RR-SP
24~30.2万円とコンパクトなレンジで取引されています。
どの車両も若干の使用感があり年式並みといった状態です。良好車であれば30万円台、極上車であれば40万円台も狙える余地がありそうです。
レーサーレプリカでも水冷4ストのFZR400RR SPは、中古相場の高等に拍車がかかりプレミアム化しているNSR250R(
NSR250Rの買取事例一覧) やTZR250(
TZR250買取事例一覧)に代表される2ストレーサーレプリカとは異なって、新車価格を上回るようなプレミアム相場は形成されていません。
中古のFZR400RR-SPの本体販売価格が30~40万円台となっていますので、仕入れ値+10万円程度の値付けとなっていることが分かります。
というのも、『業者間市場での落札価格=販売御者の仕入れ価格』であるためです。店頭の中古車の本体価格は『仕入れ価格+経費(運送費用や落札手数料)+販売業者の儲け』となっています。
主題の買取相場ですが、『業者間市場での落札価格=買取業者の売却価格』でもあります。
査定現場での買取相場は、『業者間市場での落札価格-経費(運送費や出品手数料)-買取業者の儲け』となりますので、
年式並みのFZR400RR-SPの実働車は20万円台前半が買取相場となります。
年式並みのFZR400RR-SPの査定価格が20万円台前半であった場合は、適正で競争力のある価格と言えます。
ただし、当社パッションの様に業者間市場を通さずに直接販売店で買取が出来る買取販売店の場合には、20万円台半ばまで査定価格を伸ばす事ができます。
その理由は、買取業者の売却価格と販売御者の仕入れ価格は10%ほど差があるためです。
例えば、業者間市場で30万円で取引されたバイク。販売業者は落札手数料と消費税を載せた33万円程の金額での仕入れとなります。
つまり、業者間市場に出せば30万円で売れるのですが、販売店には33万円で売れるのです。30万円の車両で3万円程金額に違いが出ます。
これが、買取販売店の強みです。
FZR400シリーズの買取相場
過去2年間で6台と、極端に取引台数が少なかったFZR400RR SP より傾向を確かにしていくために、FZR400シリーズの系統をたどって買取相場を比較して見ましょう。
モデルチェンジ別の年式モデルと型式 |
年式 |
名称 |
フレーム番号 |
1986年 |
FZR400 |
1WG |
1989年 |
FZR400RR |
3TJ-11~ |
1990年 |
FZR400RR SP |
3TJ-14~ |
FZR400シリーズ実働車の取引相場 |
相場/ 年式モデル |
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
FZR400 |
10.3万円 |
19万円 |
22台 |
FZR400RR |
18.1万円 |
27.4万円 |
7台 |
FZR400RR SP |
26.4万円 |
30.2万円 |
4台 |
(2018年2月時点で、業者間市場の落札データを過去2年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
モデルが新しいほど相場も高いFZR400シリーズ FZR400に比べて、平均取引額でRRが8万円。RR-SPが更に8万円高くなっています。 上述いたしました、買取相場=『業者間市場での落札価格-経費(運送費や出品手数料)-買取業者の儲け』の式に当てはめたシリーズの買取相場は下記のようになります。
- ▼平均的な買取相場
- FZR400 7~8万円
- FZR400RR 10万円台半ば
- FZR400RR SP 20万円台前半
FZR400RR-SP
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 4台
- 平均価格: 264,000円
- 最高価格: 302,000円
- 最低価格: 240,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 2台
- 平均価格: 166,000円
- 最高価格: 221,000円
- 最低価格: 111,000円
相場情報:2018年2月11日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。