何でも3万円の陸送費で自宅に届いたKZ1300は別荘で送られてきたキーを挿して回してもエンジンが始動しなかったとのこと。
「Z1300買ったんだけどエンジンかからないからチョット見てくれない。登録と車検もお願いしたいし」とお客様からご連絡を頂き、弊社整備工場に運んだところ、確かにエンジンは始動しませんでした。
電装系に加工がありエンジンを始動させるまでに数時間を要しましたが、無事エンジンは始動いたしました。
しかしエンジン始動後も不調箇所は多く。お客様から買取を依頼されたのですが、不調箇所がそのまま査定で減点となりネットオークションのご購入金額を下回る査定額となってしまいました。
以下査定内容の詳細をご案内差し上げます。
外観
写真では店舗の照明を受けて余計に綺麗に見えますが、実物もパッと見た目には綺麗に見えます。
1982年式としては劣化は少なく見た目は綺麗の部類です。
左右のマフラーに傷と熱で溶けた物質がの広範囲で固着している点が見た目の印象と買取価値を若干損ねていますが、オールペイントで再塗装されていることを考慮しても総じて年式並み以上の状態といえます。
見た目の査定評価は4点と先ず先ずの点数が付きました。
足回り
前後のサスペンションにややヘタリが感じられます。再販に向けてはオイル交換のオーバーホールが必要となりそうで、マイナス査定となっています。
前後の社外ブレーキキャリパーは効きが弱く、車両重量300kgを誇るKZ1300の公道走行では制動力に若干の不安を抱きます。
旧車の場合は、たとえ制動力が弱くても純正であれば価値は高いのですが、社外品でなおかつ純正以下の機能性となると査定ではマイナス判定とならざるを得ません。
エンジン回り
2連キャブが3つ連なった6気筒で水冷エンジンのKZ1300。トルク・パワーは十分なはずなのに排気音や手応えは軽く感じます。
何かがおかしいと、エキパイの振動を確かめると2番と3番は動いていません。
2番と3番を回復させる必要がありこれもやや大きなマイナス査定として買取価値を下げました。
更にクランクケース内のエンジンオイルは白濁していて、クーラントか何かの水分が混濁している可能性があります。
現状でも、始動して走行することは可能ですが、走行を続ければ遅かれ早かれ故障に繋がることは必至の状態です。
エンジンに関しては大掛かりなメンテナンスが必要で、査定評価点は2点に近い3点で買取価値を損ねていました。
バッテリー容量が大きく始動性に難が多い車両が多いKZ1300にあって、始動性は悪くない点は好材料となっていました。
電装系・保安部品
ハーネスを含め配線に加工があり、当初は配線エラーでエンジンが始動しませんでしたが、現在は回復しています。
ただ不具合が発生しやすく回復に手間取る構造になっている点は嫌気される可能性が高く若干ですがマイナス査定となりました。
走行するとメーター付近から振動で共鳴したハウリングが発生します。ネジやボルト類の締め直しで改善されず、メーター周りの材質の劣化が原因となっていました。
別途対策と修理が必要でその辺りも査定で軽い減点となりました。
フレーム回り
外装に目立った損傷はなく、派手な転倒的などは無さそうに見えますが、修復歴のある可能性もありますので、左右のハンドルの切れ角、フレームネック部分や接合部など大きな損傷の痕跡が残すか所を
入念にチェックいたしましたが、衝撃を吸収した痕跡や修復が施された痕跡は認められませんでした。
フレーム自体は剛性を損なっておらず、錆びや塗装ハゲなども少なめで旧車としては良い状態といえます。
査定評価点でも4点が付き外装と同様に先ず先ずの評価となりました。
カスタムなど
浅い角ばったタンクから初期型A2と思われますが、フレーム番号は1982年モデルのA4型です。
A2型のタンクと両サイドカバーはオールペンで再塗装されています。旧車の場合は特に最も価値があるのはオリジナルペイントの綺麗な状態ですが、汚いオリジナル塗装より綺麗なオールペンの方が価値が高いことも良くあります。
オールペン車両の買取価値はデカラーリングやパターンが大きく影響します。
定番の人気カラーや純正に近いパターンであれば綺麗なオールペンは価値があります。対して独特のカラーリングや奇抜なパターンだと買取価値を下げるのが一般的な傾向です。
その他、シート、ブレーキキャリパーに社外品が使用されています。
先述の通り純正より機能の劣る社外キャリパーは買取価値を損ね、純正品のないアンコ抜きの社外シートも若干ですが買取価値を損ねています。
総合評価と買取価格
以上が主な査定内容ですが、査定でのプラス項目とマイナス項目を列記すると下記のようになります。
- ▼プラス査定
- 始動性の良さ
- 剛性を損なうような損傷のないフレーム
- 比較的綺麗な見た目
- ▼マイナス査定
- 要オーバーホールのエンジン(2番と3番が不発、オイルの白濁化)
- 制動力の弱い社外ブレーキキャリパー
- 原材質劣化によるハウリング
- 溶けた物質のマフラーへの広範囲の固着
何と言っても要オーバーホールのエンジン状態が大きく買取価値を下げています。
下段で詳細していますが、KZ1300の買取相場はやや下落傾向にあります。また、中古販売のポータルサイトを見ると販売価格が高値で設定されているKZ1300/Z1300は2年程動いていない個体も目に付きます。
合わせてエンジンの修繕も開けてみないことには見積もりが出ずらく弊社販売店での仕入れベースでの見積もりが出しずらい状況です。
業者間市場での売却を念頭に、何とかギリギリ利益を出せそうな金額として60万円弱。そこに店頭査定の価格UPキャンペーンを適応させて頂き何とか60.5万円の査定価格を提示させて頂いての買取となりました。
お客様のご感想と買取後記
「いや~70万円安ぃ~。と思ってパッションさんに自慢しようかと思うくらいの勢いで買ったんだけど」
「そういえば、60万円位までは1,000円単位で競っていたんだけど、一気に70万円で引き離したから60万円位で買えてたってことかなぁ~」
「その業者が出している旧車は全部、販売店の販売価格の半値位で落札されてたんだよね・・・」
「ネットオークションで記載されていた実働ベース車って何だ?と思っていたけど、そういう事だったのかぁ~って感じだよね。」
「ほんとッ!走行動画では100万円で転売できるんじゃないかってくらいメチャクチャ綺麗に見えたんだよな。」
とはお客様のお言葉。
お客様のスマートフォンで走行動画を拝見せて頂きましたが、90秒の走行動画からは非常に綺麗で軽快に走行しているKZ1300の様子が伝わってきました。
プロから見ても70万円なら安いと思えるような動画でした。
ですが実際には、要エンジン修復の実働ベース車でした。
写真や動画ではオートバイは実態以上に綺麗に映る傾向があります。日光や照明を受けている車体は尚更綺麗に映ります。
写真で照明や日光を反射しているオートバイの実態を想像する際はある程度割り引いて考慮することをお奨めいたします。
2番・3番が不発でオイルが白濁しているエンジンの修復、制動力のあるキャリパーへの交換、マフラーの排気漏れ改善と固着物落とし、ハウリングの改善、国内登録を行い、車検を通すまで整備を行えば、
詳細はエンジンを開けてみてからの見積もりになりますが、エンジンを開ける前の見積目安としては20万円程度~となります。
場合によって部品交換が必要であれば、レプリカパーツもなく欠品で修復不能か、パーツの自作になる可能性もあり、修理額はからり嵩む可能性もあります。
そのような可能性もお伝えしたところ、KZ1300の売却をご決断されたオーナー様。
ぎりぎりの買取価格でお客様の損失を最小に抑える事ができた点だけはお役立ちできましたが、公道を走ることなく損切のご決断となってしまったことは非常に残念な結果となってしまいました。
KZ1300 査定相場の比較
販売店の店頭では120~130万円台が中心的な価格となっているKZ1300。一体幾らで売れるのでしょうか?
実は2017年半ばから相場がやや下落基調にあります。
日本の(買取と販売の)中古相場を決定している業者間市場の取引データを使用して、買取相場をご案内差し上げます。
先ずは状態別の買取相場から。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|KZ1300
- 評価点5 とても状態が良く綺麗
- 評価点4 やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み若しくは若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車