「125ccの2種スクーターとしてはデザインが格好良く、新車として買ったものですが、意外に乗る機会が少なくて、思い切って売ることにしました」 という初年度モデルのホンダ・PCX125。発売時から8年弱のモデルですが、全体的に外装の劣化は少なく、かつ低走行という高額買取が狙える状態にありました。
ただし、各部のメッキパーツがサビ・腐食の目立つ状態にあり、この点が査定金額に影響を及ぼしてしまいました。
このようなプラス材料・マイナス材料が同程度ある場合、買取査定にはどのように反映されるのでしょうか。
以下、今回拝見させていただいたPCX125 JF-28型の車両詳細となります。
足回り
メンテナンス性の良いことで定評のあるホンダ・ PCX125。足回りに関してはサスの動きも良く、経年を考えると上々の部類に入ります。
ガス注入などの整備歴なしとのことでしたが、これだけの状態であれば十分評価に値します。その一方、フロントカバー内側を覗いてみると、お住まい地域の関係からか茶色いサビが目立つ状態。
ディスクローターやリアサスペンション、ブレーキマスターシリンダーなどにも多少のサビ・腐食が目立ち、この点が査定評価を下げてしまいました。
外装
新車購入時からのワンオーナー車であり、フルノーマルのままで良識的な乗り方を心がけていた車両らしく、外装類は全体的に綺麗。
車体色がホワイトであり、細かいキズが目立ちにくいというのも高ポイント。しかし、難点となったのはステップボード下の擦りキズで、これが大きなネックに。
それほど大きなキズではないのですが、白の車体に黒い下地が見える深さのキズはかなり目立ち、この点がマイナス評価になってしまいました。
ステップボードやフロントボックスなど、インナーの樹脂製パーツの劣化は年式相応の範囲で収まっておりましたが、トップブリッジやキーシリンダー、 バーハンドル全体に広範囲でサビが目立つ状態であり、全体的には綺麗めでしたが、これらが評価を大きく下げる原因となってしまいました。
エンジン周り
Fフォークなどのサビ・腐食に比べ、エンジン周りに関してはサビなどの頻度は少なめ。寒い冬場でもセル一発で始動できるほど状態は良く、アイドリングも終始安定しておりました。
スロットルをひねっての吹け上がりに若干のもたつきが感じられましたが、白煙吹きや異音などもなく調子は上々でした。、エンジンに関しては良い評価となりました。
フレーム回り
転倒・事故歴仰られる通り、フレームに関してのダメージは確認できませんでした。ただし、塩害によるサビはなかなか厄介な問題で、フォークブリッジなどを中心にそれなりに進行したサビが発生。
耐久性の面はともかく、一度外装を外して軽いメンテを要するという判断により、買取に当たっては若干のマイナスポイントに。
電装/保安部品
エンジンのチェックと共に行わせて頂いた電装系は、保安部品各種の状態は良好。バッテリーも1年半ほど前に交換されており、実用においては問題ないレベル。この点に関しては申し分がなく、高い査定評価となっております。
ただしキーシャッターの穴がイタズラされて機能しない点はエンガティブな査定項目となりました。
その他
全体的に外装類は綺麗な状態にあるのですが、フロントカバーなどの隙間が所々浮いている箇所が発生し、若干経年による歪みが発生しつつあります。
こちらが若干のマイナスポイントですが、メーカーオプションのリアキャリアが装着されていることから、これを相殺する形で評価させていただくことに。
PCX125 JF-28型 買い取り|査定総評
以上が今回のPCX125 JF-28型の査定チェックポイントです。走行距離はJF28としては平均並み。購入時から8年弱の初期モデルの割に外装カウルには艶がありパッと見は非常に綺麗に見えます。
しかし、海の近い地域に住まわれているが故、細部に目を凝らしていくとメッキや金属部分にサビ・腐食が多く、この点が非常に残念なことに。
- ▼主にマイナスとなった査定ポイントとして以下が挙げられます。
- ハンドル回りやリアサス、フォークブリッジなど比較的目立ちやすい箇所へのサビ・腐食
- スイッチ類の色あせ・軽微な劣化
- 削れているサイドモールの転倒傷、カウルとインナー樹脂パーツの接合部のズレ具合(転倒車によく見られる症状)
- 穴が広がり機能しないキーシャッター
- ▼主にポジティブな査定項目としては以下が挙げられます。
- 一発始動、安定しているアイドリング、異音や白煙吹きオイル漏れのないエンジン
- 電装系の状態
- 外装カウルの綺麗な状態(外装カウルのくたびれ感は磨いても復活が難しいため)
見た目が車両価値に反映されやすいスクーターモデルのため、こうしたサビ・腐食・擦りキズは一つ一つが買取査定価格に直結する重要なポイントです。
弊社工場での再生は十分に可能ですが、該当パーツの交換を要する点であるため、交換用パーツのコストやメンテナンス性から総合的に判断した結果、110,000円という買取価格に落ち着きました。
以下の買取相場をご覧いただければお分かり頂けると存じますが、」現在のJF28の平均的な査定額の実勢は10~13万円がボリュームゾーンです。
今回の劣化が目立った車両としては非常に競争力のある査定価格で買取させて頂いた1台です。 仮に上記の様なマイナスポイントがなければJF28としては上限に近い15万円程度の買取価格が付いていました。<
お客様の談話|買取査定後記
「うーん、やっぱりこれだけサビが出ていると難しいのですね。分かりやすい説明で納得がいきました、この金額でお願いします」とはオーナー様の談。
街乗り用としてはお気に入りだったものの、お仕事の忙しさで家族サービスなどの都合から、現在では自動車に乗る方が増えてしまったそうで、敷地内の保管スペースの関係から手放す決意をされたとの事でした。
関東でも沿岸部の場合、地域によっては濃度の高い潮風にさらされることもあり、「次に買うバイクはしっかりカバーをかけて十分保護しなくちゃですね」と苦笑い。
それでも限界ギリギリの査定金額にご満足頂け、オーナー様にお喜び頂けたことは幸いでした。
モデル別のPCX125の査定相場の比較
2010年3月に国内で発売され、たちまち人気車となったPCX125。2012年に発売された高速道路も走行可能なPCX150は人気を博す状況には至っていません。 人気に衰えがみえない状況で2014年4月には早々にフルモデルチェンジした2代目に当たるJF56型のPCX125が発売されました。
初期型JF28と2代目JF56の買取相場に違いがあるのか?以下に一覧形式で比較してみました。
- 初期型JF28 2010年~国内発売
- 二代目JF56 2014年~
年式別のPCX125の査定相場の比較 |
モデル/ 落札価格帯 |
JF28 |
JF56 |
平均落札額 |
13.3万円 |
20.0万円 |
総落札台数 |
101台 |
67台 |
25~29万円台 |
0台 |
1台 |
20~24万円台 |
0台 |
30台 |
15~19万円台 |
12台 |
35台 |
10~14万円台 |
88台 |
1台 |
5~9万円台 |
1台 |
0台 |
(2017年12月時点で、業者間市場の落札データを過去1ヶ月間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
2014年にJF56が発売された頃は、JF28の相場に変化はなく高値で推移していました。JF28の相場が下落し始めたのは2016年頃からじわじわと下がり現在では平均落札額で13万円程度まで下落しています。
2014年以前は、現在のJF56と同様の相場を形成してたことを考えると、今後の上がり目は期待できず、型落ち車両として引続き緩やかに相場が下落していくものと考えられます。
2018年モデルのメーカー希望小売価格が32.9万円のJF56。メーカーの儲けを極限まで削ぎ落とした販売店では新車の車両価格は24万円台~出回っています。
納車整備や登録代行やローンなどのオプションで何とか利益が出ますが、メーカーの利益を剥すと新車の車両価格は20万円台前半であるといえます。 そのことは業者間市場で走行0kmの新古車が22~25万円台で落札されていることが証明しています。
JF56に関しましては、新古車を除くと走行が非常に少ない極上車で20万円台での落札。最も多い落札価格帯は10万円台後半~20万円に掛けてとなります。
JF28に冠しましては、かなり状態の良い車両で15万円以上。大多数は10~15万円のレンジで取引されています。
上記は業者間での流通価格ですので、買取業者の提示できる実際の査定額は上記から業者の儲けと諸経費(運送費や出品手数料など)を除いた額となるため、 JF56に関しては実際の買取額の中心は15~17万円付近。JF28に関しては9~13万円付近となります。そこから状態の良し悪しによって金額が若干上下するイメージを持って頂ければ相場に沿った買取額と判断して間違いはありません。
JF28型 PCX125豆知識
タイ・ホンダ生産のグローバルモデル(世界戦略車)として、2010年より日本で販売を開始したホンダ・PCX。
発売開始当初は125ccの原付2種クラスのみの設定でしたが、好調なセールスを記録したことで、排気量を152ccへボアアップした上位モデル・PCX150が2012年に追加。
優れたデザイン性と燃費性能、従来の2種スクーターよりも快適なライディングポジションを誇り、2010年のグッドデザイン賞受賞など世界的な評価が高いモデルです。
2012年には新開発のグローバルエンジン「eSP」を搭載し、原付2種クラス最高レベルの燃費性能を誇り、2014年にシリーズ2代目となるJF-56型PCX125にフルモデルチェンジされるまで、 125ccバイクとしては販売台数首位の座を守り続けました。
PCX125【2010~2012年モデルのJF28型】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近1ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 101台
- 平均価格: 133,238円
- 最高価格: 174,000円
- 最低価格: 98,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近2ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 72台
- 平均価格: 98,792円
- 最高価格: 137,000円
- 最低価格: 45,000円
相場情報:2017年12月9日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。