エンジンが動かなくなった、故障した、キックが降りない、セルが回らない等
バイク故障・バイク整備修理やトラブルに関することに
パッション横浜本店の整備士が簡単にお答えしています
諸事情があって2年程乗らなくなってしまったバイク。
バッテリーやプラグを交換してもエンジンが掛からなくなってしまいました。
友人に相談したところ、キャブ内のガソリンが劣化し詰まっている可能性があるから一度オーバーホールした方が良いと言われました。
業者に依頼するべきか悩みどころです、出来るなら自分でやってみようと思うのですが自分でも可能なのか知りたいです。
業者に依頼した場合の費用や自分で作業した場合の費用、自分で行う場合の作業手順などが知りたいです。
バイクのキャブレターが詰まってしまう原因の多くは、キャブ内に溜まっているガソリンの劣化です。
劣化したガソリンがキャブレター内部で固着しガソリンの通り道を塞ぐことをキャブ詰りと言います。
キャブレター内部のどこで詰りが発生しているかによって症状は異なりますが、オーバーフロー(ガソリン溢れ)、アイドル不調、吹け上がり不調、エンジンがかからない等のトラブルに直結します。
キャブ詰りを直すには、キャブレターの清掃、若しくはオーバーホール(清掃に加え劣化した部品を交換する)が必須となります。
キャブレターのオーバーホールをバイク店に頼んだ場合、気筒数やキャブレターの位置によって差は出ますが、8,000~40,000円程度が相場になります。
キャブレターのオーバーホールは、機関系の修理としてはオーナーさんご自身でも挑戦しやすい部類に入ります。
とはいっても微細部品を扱う作業になりますので、細心の注意を払う必要があります。
今回は、ご自身で行うキャブレターのオーバーホール作業の手順を中心に、キャブ詰りの原因やメカニズムについてご紹介いたします。
そもそもキャブレターの役割とはなんでしょうか?
オーバーホール作業や修理依頼前にキャブレタ がバイクを動かすためにどんな役割をしているか知っておきましょう。
エンジンを動かすためにはガソリンと空気をエンジン内の燃焼室へと送り込まなければなりません。燃焼室に送り込まれたガソリンと空気はピストンにより圧縮され点火プラグの火花により爆発します。
その爆発が繰り返し起こりエンジンは動き続けます。キャブレターとはバイクを動かすうえで、エンジンに混合気(ガソリンと空気)を送り込む重要な役割を担っています。
もう少し細かく説明すると、キャブレター 下部にはフロート室と呼ばれるガソリンをため込む部分があります。フロート室に溜められたガソリンはエンジンのピストンが下がる事で 生じる負圧により(吸い込まれる空気により)キャブレター 内の細い通路を通ってフロート室からエンジンへと吸い上げられます。
吸い上げられたガソリンは霧状になり空気と混ざり合います。この混ざりあったガソリンと空気を混合気と言います。
キャブレターはアクセル開度やエンジンの回転数に応じて常に最適な混合気を燃焼室へ送り込む働きをしています。
キャブレター 本体や内部にトラブルが生じると上手くガソリンを送る事が出来なくなったり、混合の割合が適性にならず吹け上がりが悪くなったりエンジンの始動が悪くなったりエンジン始動できなくなります。
キャブレターの詰まりの原因の多くはガソリンの劣化によるものです。
車両に乗らずに放置していると半年程度でキャブレター 詰まりが発生しやすくなり、放置期間が長ければ長いほどその可能性は高まります。
少なくても数リットルのガソリンを入れるここがガソリンタンクとは異なり、キャブ内に貯められるガソリンは非常に少量で尚且つ空気に触れやすいため酸化しやすく、キャブレター 内のガソリンはタンク内のガソリンより早く劣化します。
劣化したガソリンは酸化や蒸発によって濃度と粘度が高くり進行すると黒いヘドロ状になっていきます。 長期間放置されていたバイクのキャブレターの外側に白い粉のようなものが固着していたら、それは蒸発しきって固着したガソリンです。
キャブレター 内にはスロージェットやメインジェットと呼ばれる小さな穴が空いた微細部品が使われています。
このジェット類の穴が詰まってしまったり詰まり気味になってしまうと適切な混合気が燃焼室に送り込まれずアイドリングや吹け上がり不調が発生します。最悪の場合はエンジンが掛からなくなります。
キャブ詰まりによるアイドリング不調や拭け上がり不調、始動しないなどのトラブルが生じた場合、キャブレターの清掃やオーバーホールといった作業が必要になってきます。
劣化したガソリンはジェット類の穴を詰まらせる他にもフロートバルブの固着やフロートの固着の原因にもなります。
フロートバルブやフロートが固着した場合には、オーバーフローやガソリンがタンクからキャブ内へ流れ込まなくなるという症状が現れます。
また、タンク内に錆がある場合、錆がキャブレター 内へ流れ込んでしまいジェットに詰まりエンジン不調を誘発したり、フロートバルブに挟まってバルブが閉じなくなりオーバーフローを誘発させる事もあります。
その他にもスポンジのエアークリーナーを使用してる車両で、スポンジ自体が劣化しボソボソになってしまうと吸気の際に空気と一緒にスポンジのカズを吸い込んでしまいキャブレター 本体の通路に詰まり、 ジェット類が詰まってしまった時と同じ症状が起きてしまいます。
キャブレター 詰まりには大まかにこのような原因が挙げられます。
キャブレターのオーバーホールや清掃をオーナーさんご自身でやってみたいという方は多く、問い合わせも良くいただいております。
実際にご自身でオーバーホール作業をしているオーナーさんも少なくありません。
単気筒のバイクであればそこまで難しい作業では無いので工具や知識があれば実際にご自身でチャレンジしてみるのも良いと思います。
チャレンジに当たっては作業ミスによる不調や破損といったリスクが伴う作業である事を念頭によく考えてから入念な準備と細心の作業をする事をお勧めします。
自信がなかったり不安に思う場合は専門業者さんでも快く受けてもらえます、その際にかかる費用は8,000円前後から40,000円前後になります。 この値段の差はシングル、ツイン、マルチとキャブの数が増えるほど単価も高くなります。
また、キャブレターを外すまでに、カウル等の外さなければならない部品が多い場合にも(キャブレターを外すまでの工数によっても)値段が変わってきます。
それではご自身で作業を行うにはオーバーホールが良いのか?清掃が良いのか?
上段の『キャブレター詰まりの主な原因とメカニズム』でもご説明した通りキャブレター 内にはメインジェットやスロージェットと呼ばれるガソリンの通り道となる穴の空いた微細部品が使われています。
スロージェットに関しては非常に小さな穴が空いており大変詰まりやすい構造になっています。
ご自身で作業を試みたものの(ジェットの詰まりが完全に取れておらず)「キャブの清掃作業をしたが調子が悪い」という声も多々聞きます。
そういった失敗を犯さないためには部品交換も行うオーバーホールをお勧めしています。
フロート室の蓋にはゴム状のパッキンが多く使われています。パッキンは劣化しやすく型がついている事も多いため、清掃と同時に劣化部品の交換まで行うオーバーホールをお勧めしています。
新品部品を使うことで、微細部品に対する作業ミスや未完了を事前に防ぐ事も出来ます。頭に入れ事前に準備をしておくと良いでしょう。
車種によってはオーバーホールキットという物も販売されているので、初めての方はその辺を購入し作業に挑むと良いでしょう。
オーバーホールキットにはジェット類やパッキンを含めフロートやニードル、パイロットスクリュー等が含まれているキットもあり、車種によって値段は変わってきますがキャブ一個に対し3,000円~4,500円前後で購入可能です。
※オーバーホールの場合ジェット類は新品に変わるためジェット類の清掃等は必要ありません。
ここではキャブレターの役割やオーバーホールの手順について説明いたしました。
キャブレターオーバーホールの作業はそこまで難しい内容ではありません。
愛着やバイクの構造等に興味を深める意味でも意欲がある場合には是非チャレンジしてもらいたい事でもあります。
しかし注意点として留意して頂きたいのは、
作業中の破損や二次トラブル、作業の見落としによって不調が改善されない事も起こりうるという点です。
また、キャブレターの詰まりと判断したが不調の原因が間違っている、分解作業中に他のトラブル箇所を発見するといった事も珍しくありません。
その辺りのリスク等も考えてから作業に移ると良いと思います。
キャブレター 詰まりは、その多くが車両の放置によるものです。 放置されていた車両に使われているゴム製品(シールやパッキン類)は放置により劣化の進行速度が速くなります。
劣化し硬くなってしまったゴム製品は長い放置後、動かされる事によりオイル漏れの原因になる事が多々あります。
フォークからのオイル漏れやエンジンからのオイル漏れ等の場合、走行の危険やバイクその物の破損にも繋がります。
その辺も踏まえキャブレターのオーバーホール後には車両全体の点検確認や、専門店へ点検依頼をする事を推奨いたします。安心して長く乗れる車両に整備することが肝要です。
当社は買取販売店であり、年間に5千台を超えるバイクを買取致しております。
その中には放置している間に劣化が進行し動かなくなってしまった不動バイクの買取依頼も多くございます。
なんとなく乗る機会が減っていった、自分の体格に合わず乗りにくかった等の理由でバイクから遠ざかり、気付いたら10年以上も放置していたというケースも良くあります。
車両を放置するとキャブレター内だけでなく当然、車台全体の錆によるダメージやタンク内、フロントフォークの錆の発生のリスクが一気に上がってしまいます。
放置期間が長くなるにつれバイクは劣化し買取価値も減っていきます。
エンジンがかからなくなると、放置期間が長くなる傾向があり、次第にタイヤのエアが抜けブレーキは固着して車両の押し引きすら難しくなっていきます。更に金属が朽ちていくと車体としての価値も無くなってしまいます。
そうなる前にもう一度本当に乗るのか考え出張査定を依頼してみても良いと思います。
思いがけない査定額が次の車両への架け橋になってくれるかもしれません。
■この記事の執筆監修
バイクパッション整備責任者
2級整備士
玉井 克幸
バイク整備の知識量と技術力は誰にも負けません。
修理や整備も常に冷静沈着。若手メンバーのお手本として活躍中。
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