「自宅フェンスにチェーンで繋いだまま腐らせてしまったCRM50を廃車処分して欲しい」というご相談を受け、チェーン切断用のグラインダー持参で出張査定させて頂いたホンダ・1993年式CRM50。
50ccバイクでありながら、270mmというサスストロークが自慢の2スト50ccオフロードですが、サビ・腐食がキツく、一見して長らく放置されていた事が分かる傷みの激しい車両状態でした。
大量のオイル漏れ痕があるうえに焼き付いているエンジンは焼腐食で覆われ、足回りは錆びで固着、外装類も経年劣化で今にも割れそうなほど劣化しており、修復コストを考えると再商品化は不能なスクラップ状態。
それでも弊社販売店で再利用可能なパーツを中心に評価を積み上げ、処分費用を頂戴することなく無料で引き取り回収させて頂いた実例となります。 以下、査定内容の詳細をご案内させて頂きます。
今から10数年前、オーナー様が高校3年生の頃にエンジンを焼き付かせてしまったというホンダ・CRM50。
(いつかは直そう、直してもう一度乗ろう)と考えてはいたものの、修理費用と時間が取れぬままほったらかしにしてしまい、フェンスに繋いだ際の鍵まで紛失してしまったという状態。
長年の風雨によってエンジンを中心にサビ・腐食が目立ち、フェンスから伸びた蔓草が車体に絡みついたボロボロの状態となっておりました。
キックレバー踏み込み時の圧縮のなさなど、買取査定の上で非常に多くのマイナスポイントを抱えていたものの、なんとかオーナー様のご負担なしで無料にて引き取り回収させて頂くことができました。
以下、今回拝見させていただいたホンダ・CRM50の車両詳細となります。
足回り
50ccのバイクでありながら、本格的なオフロード仕様が自慢のホンダ・CRM50。
原付バイクとは思えないほどのロングストローク仕様となっているフロントフォークは、長期放置によって点錆び・腐食が発生。オイル漏れ・パッキン類のひび割れもあり、本来のコシはすっかり失われておりました。
前後スポークホイール・ディスクブレーキへの腐食も著しく、特にブレーキキャリパーは腐食で覆われていています。ブロックがツルツルとなっているタイヤのゴムは劣化によってヒビ割れしております。
チェーンは固着しており査定当初は車体が押し引き出来ない状態となっていました。
ブレーキワイヤーもサビによって断線しており、レバーを握ったまま車体を押し引きできるほど状態は悪く、残念ながら評価は最低レベルに留まってしまいました。
足回りは買取対象としてお値段をお付けできる要素が無く、処分費用を頂戴しての回収となるか無料での引取りとなるかの選択となる厳しい評価に留まりました。
外装
発売当時のデカール(ステッカー)の原型は留めていたものの、間近で見ると魚の鱗のようにボロボロと崩れた箇所があり、非常に年季の入った傷み具合となっておりました。
フェンダーをはじめとする外装パーツのほとんどが酷く劣化しており、まるで薄焼きせんべいのように頼りない強度に。外装カウルやシートは日焼けや色褪せで元々の色が想像できない程に変色しています。
塗装だけであれば問題はないとしても、ここまで外装類の強度が低下していると再利用化は難しいと言わざるを得ません。
その他、板海苔のように表皮が乾き切ったシート、内部のサビが非常にキツイガソリンタンクなど、外装についても引き取り対象の評価に留まってしまいました。
エンジン周り
(オーナー様に許可を頂いて)フェンスとバイクを繋いだチェーンを切断する前から薄々感じておりましたが、 開けた場所で改めて無数のサビと腐食で侵食され尽くしておりましたエンジンをチェックしてみたところ、キックを踏み込んだ際の圧縮も非常に弱々しく「エンジンは10年前に焼付いちゃいました」とオーナー様からののご回答。 腐食が激しく、大量のオイル漏れの痕跡もあり、焼き付きによる不動状態である事を考えると、再生コストはかなり厳しいものがあります。
商業的には修理コストが再生後のパーツ価値を上回るため、部品取り車としての判定も困難。
クランクケースはオイル漏れを隠しの意図でスプレーで自家塗装されており、エンジン回りに付きましても処分パーツの引取り対象の評価に甘んじてしまいました。
フレーム回り
白く塗られたフレームには無数のサビが発生しており、車体のいたるところに下地や茶色い錆びが散見できる状態。
長期放置による砂埃がフレーム各部に細かいキズを付け、そのキズからサビが進行してしまっております。
特にエンジン腹下の負荷が大きい箇所は傷みが激しく、大掛かりなケアが必要だと言えます。
それでも査定の結果、致命的なダメージは見られず、入念なサビ落としでレストア用フレームとしての価値ありと判断し、結果的にはこちらが処分費用なしでの引き取り回収を可能としました。
電装/保安部品
10数年という年季の入った長期放置により、バッテリー上がりで電装系は全て不作動。
左右スイッチ・メーター周りの劣化状況は激しく、かなり手厳しい評価となってしまいました。
それでも純正ウインカー等がオリジナルそのままの形で残っていた事実は大きく、些少ながらも再利用可能パーツとして計上させて頂きました。
その他/カスタムなど
ほぼフルノーマル状態のホンダ・CRM50でしたが、唯一のカスタム箇所はリアキャリア。
詳細を調べてみたところ、ホンダによる純正オプションだということが判明いたしました。
サビ・腐食によってかなり表面が傷んではおりましたが、入念なサビ落としで再利用は可能と判断し、こちらも非常に小さい金額ではありますが処分費用なしで無料回収できたことの理由の1つになりました。
無料引取りとなったエンジン焼き付きCRM50の総合評価
以上が今回のホンダ・CRM50の査定チェックポイントですが、非常に傷んだ車両状態であり、再販化が絶望的なほど荒んだ姿に変わり果てておりました。
特にエンジン周りの評価は厳しく、再利用可能なパーツ中心の査定となってしまったことを報告させて頂きます。
それでもできる限りオーナー様にご負担をかけないよう配慮し、弊社販売店でのストック用パーツとして、パーツ単位での評価を積み重ね、処分費用なしで無料引き取りとさせて頂きました。
- ▼有償での引き取り処分となりそうだった要素
- 腐食が激しく、大量のオイル漏れ痕があり、焼き付いているエンジン
- 劣化や腐食が激しく固着やひび割れして本来の機能を喪失していた足回り
- 色褪せが激しく、強度も失われている外装類
- ▼無料での引取り回収に貢献した要素
- 劣化や損傷ありますが再利用可能なフレーム
- 純正キャリアなど価値は低いものの再利用可能なパーツの積み重ね
お客様の談話と無料引取り回収後記
「もともとなるべく安く処分して欲しいとお願いしていたので、電ノコでチェーンの切断までしてくれて、無料で引き上げてくれるのなら文句ないです。」と無料での引き取り回収にご同意頂きました。 このホンダ・CRM50、歳の離れたお兄様のご友人から譲ってもらったバイクだったそうで、原付免許を取得してからはどこに行くのも一緒の相棒だったとのこと。
2ストバイク特有の焼き付き問題、そして10年以上野ざらしで放置されていた事による劣化のため、今回は買い取りには至りませんでしたが、次にバイクを買う機会があれば、 今度はちゃんと管理していきたいと語ってくださいました。
今回、引き取りさせて頂いたCRM50の廃車手続きについても無償で代行させて頂いております。
また、グラインダーを持参してU字ロックを切断することは良くありますし、足回り固着で押し引きが難しい車両でも50ccであれば手間もかからず、それ自体はサービスの付帯作業となっていますこともご報告させて頂きます。
CRM50 状態別の査定相場
- ▼状態を表す評価点の目安|CRM50
- 評価点4 年式並みより状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並みで若干難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
CRM50|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
15~19万円 |
2台 |
0台 |
0台 |
10~14万円 |
4台 |
0台 |
0台 |
5~9万円 |
7台 |
10台 |
2台 |
0~4万円 |
1台 |
11台 |
20台 |
総落札台数 |
14台 |
21台 |
23台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
実働車の査定平均額は5万円程度
買取業者の査定価格の指標となっている業者間市場の取引データを見ると、過去1年間で35台のCRM50の実働車が取引されています。
30年前の50ccとしては綺麗で状態が良いとされる評価点『4』の車体は5~14万円台での取引が多く、年式並みの評価点である『3』の車両は2~9万円台での取引が多いことが見て取れます。
全35台の平均取引価格は7万円。業者間市場の取引額から、買取業者の査定価格を逆算するには、出品手数料や運送費などの経費と業者の儲けを差引く必要があります。
50ccとして平均的な金額として2万円を差引くと、業者が提示する平均査定額は5万円であることが読み取れる相場となっています。
5万円を基点として、状態が良ければ10万円台まで伸びしろがあり、逆に状態に難があれば数千円まで下がるよりのある買取相場となっています。
事故車や不動車の平均査定額は5千円程度
事故車や不動車などを表す評価点『1』のCRM50は、過去1年間で23台が取引されています。
全23台の平均取引額は2.5万円となっていて、上記と同様に業者間市場の取引額から買取業者の査定額を逆算すると、平均査定額は5千円程度の相場となっています。
今回無料引取りさせて頂きましたCRM50と同様の状態である事故車と不動車の取引相場は、型式で分けて更に細かく取引額を区分した表が下記になります。
年式モデル別の相場
- ▼年式モデルの変遷
- 1988年~ 前期 フレーム番号MD10
- 1993年~ 後期 フレーム番号MD13
事故車 不動車|型式別の査定相場 |
状態/ 落札価格帯 |
MD10 |
MD13 |
5万円台 |
1台 |
1台 |
4万円台 |
1台 |
0台 |
3万円台 |
3台 |
2台 |
2万円台 |
2台 |
2台 |
1万円台 |
7台 |
4台 |
総落札台数 |
14台 |
9台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
モデルチェンジでリアホイールもディスクブレーキ化された後期型と、後輪はドラムブレーキである前期型で事故車・不動車に限っては相場差はありません。
(実働車ですと、後期型の方が2.5万円程、相場が高くなっています)
その理由は、元々の値幅が小さいことと、型式の価値より劣化や傷みの修復コストの問題が取引の値段により大きく反映されているためです。
全25台の内訳ですが、事故車はなく、全て不動車の取引となっています。
高額で落札されている車両は、車体が比較的綺麗でエンジン実働化させた後の価値が見込める車両。
低額の落札額に留まっている車両は、一目見て車両の傷みが伝わってくるような状態で、エンジン実働化させた後も車両価値が低いと思われる車両。
そこから、エンジンを実働化させるための修復コストが差し引かれた金額で取引されています。
今回無料引取りさせて頂いたような傷みが激しい不動車はその時点で取引額は1万円台になると思われます。
更に、焼き付いて故障、大量のオイル漏れがあり、腐食や錆びの激しいエンジンとなると、修復コストが大きく修復後の車両価値で回収できない、商業的にはレストア困難なスクラップ車両と言えます。
今回の無料での引取り回収が極めて競争的で良心的な価格であることが、相場からもお分かりして頂けるかと存じます。
CRM50 豆知識
1988年に先代モデルMTX50Rのフルモデルチェンジ車として発売され、93年に型式番号AD13を与えられて販売されたホンダ・CRM50。
80ccエンジン搭載のCRM80と同一の車体は全長1,880mmと押し出しが良く、当時の国内50ccバイク最大クラスのサイズを誇る一台でした。
過去のホンダ50ccオフロード車の中でも本格的な作りとなっており、クラス上限値の7.2psという出力は今でもファンが多く、腕次第では十分125ccクラスと渡り合えるマシンのひとつです。
CRM50(AD10とAD13)
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 35台
- 平均価格: 70,000円
- 最高価格: 170,000円
- 最低価格: 24,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 23台
- 平均価格: 25,478円
- 最高価格: 59,000円
- 最低価格: 13,000円
相場情報:2018年1月14日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。