エボリューションエンジンへとなって以降の1994年モデルながら、保管状況が悪く外装の痛みが非常に目立つハーレー・FXRスーパーグライド。
長期放置でエンジンはうんともすんとも反応しない不動車。
塗装割れを起こしたタンクなや色褪せしている外装をはじめ、キツめのサビ・腐食が目立つエンジン、へたり切ってしまった足回りなど、難点がとても目立つ状態となっておりました。
「激しくボロボロになったFXRを出来れば売りたい」とオーナー様から買取査定のご連絡を頂いた次第です。
以下、今回拝見させていただいたハーレー・FXRスーパーグライドの車両詳細となります。<
足回り
フロントフォーク全体にサビ・腐食が発生し、本来のダンパー性能は大きく低下。
前後タイヤもゴムの表面が激しく劣化し、とても走行可能な状態ではありませんでした。
ホイール・ブレーキ周りへの腐食もキツく、いかにハーレーと言えども無視できない状態に。
スカスカのブレーキレバー、腐食の激しいフルードタンクやステムなどハンドル回りも劣化が目立ち、基本的なメンテナンスや修理の他大がかりな磨き作業も必要な状態。
現在のFXRの車両価値から逆算し、買取可能なレベルながら、大きくマイナスとなってしまいました。

外装
直射日光と経年による色褪せもさることながら、ガソリンタンク上部に広範囲の塗装割れが発生。
まるでマスクメロンの網目のような割れ筋が無数に走り、外装評価を著しく下げるマイナスポイントに。
1994年モデルのハーレー・FXRスーパーグライドはメッキパーツが少ないモデルですが、外装のメッキパーツであるフェンダーステーは腐食が非常に目立ちました。
車体カラーである赤色のサイドカバーやフェンダーなどほぼすべての外装パーツが本来の色艶を失って色褪せしており、足回りに続き大きくその買取価値を大きく下げてしまいました。

エンジン周り
「転倒の影響か?取り付けなのか?気付いたら走行中に無くなっていた」とご説明のあったジェネレーターカバーは欠品。
ジェネレーターカバー付近に発生したサンドペーパー状のキツい腐食をはじめ、1340ccEVOエンジン全体にかなり重篤なサビ・腐食が目立ちました。
ショベルヘッド以前の年代物のオールドハーレーではよくある問題ですが、ほぼ全てのパーツが傷んでいることで要O/H判定。
バッテリー上がりでセルも回らず、残念ながら再生見込みアリのエンジン不動車という評価に留まりました。
バッテリーサイドカバーは社外品でしたが、劣化状況が進んでおり、残念ながらパーツ欠品扱いに。

フレーム回り
事故によるものと思われる痛みこそありませんでしたが、フレームも全体的にサビ・腐食が目立ち再販化にあたっては大規模なメンテナンスが必要と言えます。
特に右シート下部のシートレールには手のひらサイズの腐食が始まっており、フレームの評価を大きく下げる形となってしまったことが悔やまれます。
それでも大排気量車らしい剛性は損なわれておらず、そうした点を総合的に判断した結果、状態は良くないものの、レストアベース車両のフレームとして充分に買取に値するという形に納まりました。
フレームが使えるか使えないかによって、レストアベースの完成車としての価値になるか?フレームから積み下ろした再利用部品価値になるか?大きく買取価値が異なってきます。

電装/保安部品
完全に放電し尽くされてしまったバッテリーを筆頭に、保安部品は全て不作動。
通電自体はしそうでしたが、カプラー等の劣化を考えるとそのままの形での再利用は難しく、残念ながら要交換判定。
ウインカーステー・ミラー・社外メーターといった保安部品の劣化も激しく、こちらも低評価となってしまいました。
エキパイからサイレンサーまで傷や小錆びが目立つマフラーですが、排気口は錆びによる穴開きがあり、電装や保安パーツは総じて査定の評価点が低めとなりました。

その他カスタムなど
社外品のメッキ仕上げバッテリーカバーやサドルバック、ハンドルなど多数のカスタムが施されたハーレー・FXRスーパーグライドながら、傷み具合が激しく、カスタムパーツとして評価するまでには至りませんでした。
そのことはサイドバッグの劣化の状態を見て頂ければご納得して頂けると存じます。
特にシート表皮の破れは酷く、サスペンションの状態チェックのために手を当てた際には「ペリッ…;」と音を立てて綻びが生じてしまったほどで、純正パーツの保有もなかったことで大幅なマイナスに。

不動車としての総合評価と買取価格
以上が今回のハーレー・FXRスーパーグライドの査定チェックポイントですが、20年余りの長期放置による劣化は凄まじく、入念なメンテナンスを要する車両状態。
外装や足回りを中心に非常に減額箇所が多かったことが惜しまれます。
同じFXRでもショベルヘッドエンジン搭載モデルは価格が跳ねることもあるのですが、エボリューションエンジン搭載モデルですと価格も安定していて跳ねません。
エボエンジンを搭載車は実働車でも業者間で40~90万円程度で取引されている車種が多いです。
FXRのエボエンジン搭載モデルは実働車が業者間で60万円未満程度の平均価格で流通しています。
そんな相場環境の中、ハーレーの買取台数で日本でも1・2を争う弊社メカニックの再生技術を信じ、230,000円という破格の査定金額をご提示させて頂くことに。
お客様のご感想と買取後記
「処分費用もアリだと覚悟はしていたのが23万円ですか」と、買取の同意を頂けたハーレー・FXRスーパーグライド。
オーナー様は映画「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」の影響を受けて購入したそうですが、程なくして興味がシボレー・コルベットへと移り、すっかりほったらかしにしてしまったそうです。
昨年末にはお孫さんが誕生したとのことで、「この買取代金を孫が免許を取れる歳になった際に援助するための資金にするつもり」と語ってくださいました。
「孫が年頃になったころまで保管していたら完全に価格すらつかないスクラップになっていたでしょうね。
いい乗り手ではなかったと思いますが、誠実に見てくれる業者さんの手に預けることができ、最後は救われましたかね」とのお言葉を頂き、現在は弊社パッションの自社工場にて再生化へ向けた整備の真っ最中となっております。
GILERA SATURNO 350 の査定相場の比較
1982年にショベルヘッドエンジンで発売され、1985年にエボエンジンを搭載し1994年まで発売された初期のFXRスーパーグライド。
程度の良い車両は中古バイク市場でも高値で取引され、ショベルヘッドエンジンへの積み替えなどレストアカスタムも活発に行われております。
その一方、程度の良い車両と悪い車両の価格差も大きく、再生技術や豊富な経験のない買取業者には敬遠されやすい一面も。
以下の表で、買取業者の値付けの前提となっている、業者間オークション市場での落札データを使用して、FXRの状態別の買取相場をご案内差し上げます。
- ▼状態を表す評価点の目安|GILERA SATURNO 350
- 評価点4 状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み または若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
ハーレーFXR|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
80万円台 |
1台 |
0台 |
0台 |
70万円台 |
2台 |
0台 |
0台 |
60万円台 |
1台 |
1台 |
0台 |
50万円台 |
1台 |
0台 |
0台 |
40万円台 |
2台 |
2台 |
0台 |
30万円台 |
0台 |
2台 |
0台 |
20万円台 |
0台 |
0台 |
2台 |
10万円台 |
0台 |
0台 |
1台 |
総落札台数 |
7台 |
5台 |
3台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去24か月間間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)

落札されている15台全ては1986年モデル以降のエボエンジン搭載車で、ショベルエンジン搭載車の落札はありませんでした。
カスタム箇所が多い実動車が81.8万円の最高値をつけた一方、エンジンと車両状態の傷み具合が目立つ車両が34.6万円の低価格に終わり、50万円近い価格差が生じてしまいました。
「ハーレーは値崩れしない」と以前はよく言われておりましたが、近年ではそうしたハーレー神話にも陰りがあり、ここ5年程は相場は下落傾向が続いており毎年過去最安値を更新する車種が後を絶えず、 状態次第ではかなり厳しくなってしまうのが実情です。
評価点別では4点の車両が40~80万円で落札されているのに対して。3点の車両は30~40万円台で取引されています。
このことから、業者間市場での落札金額から出品費用や運送費などの諸経費を引いたうえで儲けを出す必要のある買取業者の査定価格を計算すると、評価点3の状態だと20万円台後半~30万円台の価格になることが読み取れます。
続いて評価点1の不動車・事故車の取引データに目を移すと。
評価点1の車両の取引が3台ありますが、全ては24か月でなく直近12か月以内の落札です。
過去の傾向としては実動状態までレストアした上で業者間市場に出品されることが多かったハーレーFXRスーパーグライドでしたが、実働車にレストアしても想定していた価格での落札が無いため、レストアせずに不動車や事故車の現状で出品する ケースが増えているようで、相場の下落を物語っています。
取引の詳細を見ると
エンジンが死んでしまった車両でも28.8万円の値段をつけた点はさすがハーレー、と言えますが、その一方で最低価格は19.5万円となり、20万円を切るところまで低下してしまいました。
買取価格ベースの金額になると、部品取りとなる事故車は10万円未満程度。レストアベースの不動車はその修復コストの応じて10万円台~20万円台となることが読み取れます。
いかに希少性が高いオールドハーレーと言えども、レストアに要するコスト問題は大きく、年々相場は下がりつつあります。
また、ショベルヘッド・エヴォリューションという両エンジンの過渡期のモデルであることもあり、ハーレーに関する知識が浅い業者に任せた場合、正確な車両価値を見抜けず買い叩かれてしまうことも。
弊社パッションでは、そうした扱いが難しい車両であっても最初にオーナー様へ現在の取引相場傾向をお伝えし、その上で現車査定によって買取金額が変動することをしっかり説明させて頂いております。
そのため、その他買取業者に依頼したことで囁かれるような買い叩きといった心配もなく、お気軽に買取査定のご相談を頂けるイメージを大事に尽力させて頂いております。
今回のケースのように他社では低評価に終わってしまった場合でも、諦める前にまずはご一報頂ければ幸いです。
ハーレーFXR豆知識
「ハーレー史上最高のハンドリングマシン」と呼ばれ、後のダイナファミリーに大きな影響を及ぼしたクラシックハーレーの名車・FXRシリーズ。
後年には復刻モデルの「ハーレーダビッドソン・FXR2」などのリバイバルモデルを生み出すなど、近代ハーレーの中でも通好みの一台だと言えます。
日本ではそれほど多く販売されたモデルではありませんでしたが、ハーレーの中ではコンパクトで扱いやすい部類に入り、カスタムファンも多いマシンです。
FXRスーパーグライド【1986~1994年モデルのエボリューション エンジン】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 132台
- 平均価格: 551,833円
- 最高価格: 818,000円
- 最低価格: 346,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 36台
- 平均価格: 249,667円
- 最高価格: 288,000円
- 最低価格: 195,000円
相場情報:2018年1月3日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。