今から10数年前、オーナー様が高校3年生の頃にエンジンを焼き付かせてしまったというホンダ・CRM50。
(いつかは直そう、直してもう一度乗ろう)と考えてはいたものの、修理費用と時間が取れぬままほったらかしにしてしまい、フェンスに繋いだ際の鍵まで紛失してしまったという状態。
長年の風雨によってエンジンを中心にサビ・腐食が目立ち、フェンスから伸びた蔓草が車体に絡みついたボロボロの状態となっておりました。
キックレバー踏み込み時の圧縮のなさなど、買取査定の上で非常に多くのマイナスポイントを抱えていたものの、なんとかオーナー様のご負担なしで無料にて引き取り回収させて頂くことができました。
以下、今回拝見させていただいたホンダ・CRM50の車両詳細となります。
足回り
50ccのバイクでありながら、本格的なオフロード仕様が自慢のホンダ・CRM50。
原付バイクとは思えないほどのロングストローク仕様となっているフロントフォークは、長期放置によって点錆び・腐食が発生。オイル漏れ・パッキン類のひび割れもあり、本来のコシはすっかり失われておりました。
前後スポークホイール・ディスクブレーキへの腐食も著しく、特にブレーキキャリパーは腐食で覆われていています。ブロックがツルツルとなっているタイヤのゴムは劣化によってヒビ割れしております。
チェーンは固着しており査定当初は車体が押し引き出来ない状態となっていました。
ブレーキワイヤーもサビによって断線しており、レバーを握ったまま車体を押し引きできるほど状態は悪く、残念ながら評価は最低レベルに留まってしまいました。
足回りは買取対象としてお値段をお付けできる要素が無く、処分費用を頂戴しての回収となるか無料での引取りとなるかの選択となる厳しい評価に留まりました。
外装
発売当時のデカール(ステッカー)の原型は留めていたものの、間近で見ると魚の鱗のようにボロボロと崩れた箇所があり、非常に年季の入った傷み具合となっておりました。
フェンダーをはじめとする外装パーツのほとんどが酷く劣化しており、まるで薄焼きせんべいのように頼りない強度に。外装カウルやシートは日焼けや色褪せで元々の色が想像できない程に変色しています。
塗装だけであれば問題はないとしても、ここまで外装類の強度が低下していると再利用化は難しいと言わざるを得ません。
その他、板海苔のように表皮が乾き切ったシート、内部のサビが非常にキツイガソリンタンクなど、外装についても引き取り対象の評価に留まってしまいました。
エンジン周り
(オーナー様に許可を頂いて)フェンスとバイクを繋いだチェーンを切断する前から薄々感じておりましたが、
開けた場所で改めて無数のサビと腐食で侵食され尽くしておりましたエンジンをチェックしてみたところ、キックを踏み込んだ際の圧縮も非常に弱々しく「エンジンは10年前に焼付いちゃいました」とオーナー様からののご回答。
腐食が激しく、大量のオイル漏れの痕跡もあり、焼き付きによる不動状態である事を考えると、再生コストはかなり厳しいものがあります。
商業的には修理コストが再生後のパーツ価値を上回るため、部品取り車としての判定も困難。
クランクケースはオイル漏れを隠しの意図でスプレーで自家塗装されており、エンジン回りに付きましても処分パーツの引取り対象の評価に甘んじてしまいました。
フレーム回り
白く塗られたフレームには無数のサビが発生しており、車体のいたるところに下地や茶色い錆びが散見できる状態。
長期放置による砂埃がフレーム各部に細かいキズを付け、そのキズからサビが進行してしまっております。
特にエンジン腹下の負荷が大きい箇所は傷みが激しく、大掛かりなケアが必要だと言えます。
それでも査定の結果、致命的なダメージは見られず、入念なサビ落としでレストア用フレームとしての価値ありと判断し、結果的にはこちらが処分費用なしでの引き取り回収を可能としました。
電装/保安部品
10数年という年季の入った長期放置により、バッテリー上がりで電装系は全て不作動。
左右スイッチ・メーター周りの劣化状況は激しく、かなり手厳しい評価となってしまいました。
それでも純正ウインカー等がオリジナルそのままの形で残っていた事実は大きく、些少ながらも再利用可能パーツとして計上させて頂きました。
その他/カスタムなど
ほぼフルノーマル状態のホンダ・CRM50でしたが、唯一のカスタム箇所はリアキャリア。
詳細を調べてみたところ、ホンダによる純正オプションだということが判明いたしました。
サビ・腐食によってかなり表面が傷んではおりましたが、入念なサビ落としで再利用は可能と判断し、こちらも非常に小さい金額ではありますが処分費用なしで無料回収できたことの理由の1つになりました。
無料引取りとなったエンジン焼き付きCRM50の総合評価
以上が今回のホンダ・CRM50の査定チェックポイントですが、非常に傷んだ車両状態であり、再販化が絶望的なほど荒んだ姿に変わり果てておりました。
特にエンジン周りの評価は厳しく、再利用可能なパーツ中心の査定となってしまったことを報告させて頂きます。
それでもできる限りオーナー様にご負担をかけないよう配慮し、弊社販売店でのストック用パーツとして、パーツ単位での評価を積み重ね、処分費用なしで無料引き取りとさせて頂きました。
- ▼有償での引き取り処分となりそうだった要素
- 腐食が激しく、大量のオイル漏れ痕があり、焼き付いているエンジン
- 劣化や腐食が激しく固着やひび割れして本来の機能を喪失していた足回り
- 色褪せが激しく、強度も失われている外装類
- ▼無料での引取り回収に貢献した要素
- 劣化や損傷ありますが再利用可能なフレーム
- 純正キャリアなど価値は低いものの再利用可能なパーツの積み重ね
お客様の談話と無料引取り回収後記
「もともとなるべく安く処分して欲しいとお願いしていたので、電ノコでチェーンの切断までしてくれて、無料で引き上げてくれるのなら文句ないです。」と無料での引き取り回収にご同意頂きました。
このホンダ・CRM50、歳の離れたお兄様のご友人から譲ってもらったバイクだったそうで、原付免許を取得してからはどこに行くのも一緒の相棒だったとのこと。
2ストバイク特有の焼き付き問題、そして10年以上野ざらしで放置されていた事による劣化のため、今回は買い取りには至りませんでしたが、次にバイクを買う機会があれば、
今度はちゃんと管理していきたいと語ってくださいました。
今回、引き取りさせて頂いたCRM50の廃車手続きについても無償で代行させて頂いております。
また、グラインダーを持参してU字ロックを切断することは良くありますし、足回り固着で押し引きが難しい車両でも50ccであれば手間もかからず、それ自体はサービスの付帯作業となっていますこともご報告させて頂きます。
CRM50 状態別の査定相場
▼状態を表す評価点の目安|CRM50
- 評価点4 年式並みより状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並みで若干難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車