『事故で損壊したバイクをなるべく早く回収して欲しい』とご依頼を頂き、お電話いただいた当日に一時保管されている警察署での査定となったのはXJR1300の全損事故車。
トラックと正面衝突した車両は一見して再生不可能と分かるスクラップ。再利用できるパーツも価値がほとんど見込めず、1人では押し引きもできない状態でした。
通常であれば1万円は下らない処分回収費用が掛かるところですが、販売店用のストックパーツとして小さいパーツ価値を積み上げて、2,000円という格安の処分費用にて回収させて頂きました。
『いつまでも警察署に置いておけないし、といって移動させる手段も移動させる場所も無いから。安く早々に処分できて気分的に少し楽になりました。』とはオーナー様のお言葉です。
以下、全損事故車の査定の詳細をご案内しております。
交通事故でオートバイの原形を留めない程にダメージを負った全損事故車のXJR1300。
『コーナーで膨らんで対向車のトラックと正面衝突する前に車体を投げて飛び降りました』と仰るオーナー様はバイクの損壊具合を考えると奇跡的に腕の骨折と手足の擦傷のみで済んだそうです。
事故翌日に入院先の病院からお電話を頂き、『事故で損壊したバイクをなるべく早く回収して欲しい』とご依頼を頂き、お電話いただいた当日に一時保管されている警察署での査定となりました。
車両の状態は一見して再生不可能のスクラップ車両。処分費用が掛かるか?無料で引き取れるか?少しは値段が付くのか?そのあたりの見極める査定となりそうでした。
以下、今回拝見させていただいたヤマハ・XJR1300の車両詳細となります。
足回り
90度に折れ曲がったバーハンドル、大きく傾いだフロントフォーク、前後共にベロリと変形したホイールなど、無事な箇所が何ひとつないほど凄惨な状態でした。
ご依頼主様からお電話で「押して動かせる状態ではないのですが、引き取り出来ますか?」とお聞きしていた通り、ハンドルとフォーク曲りで前輪の操舵性は失われ1人では動かせない状態。
足回りで再利用の可能性がありそうなのは、タイヤと前輪のホイールとブレーキキャリパー・チェーンのみ。どれも値段が付くか分からない状態の中古パーツです。
リアショック、リアホイール・フォーク・ハンドル・などは損壊し修復できない、または修復コストが修復後の価値を上回る状態。
ほぼ無価値の再利用可能パーツを何とか無料で引き取れるかどうかといった判断に。
外装
左右ともに歪に変形したガソリンタンク、事故時の衝撃の大きさを物語るテール周りの損壊状況など、あまりにも痛々しい姿のヤマハ・XJR1300。
唯一原形を留めていたサイドカバーを除くと、多くを語ることが躊躇われるほどの痛々しさであり、タンク・前後フェンダー・シート・スクリーン・テールカウルは全て無価値の処分対象品。
サイドカバーの価値とがわずかに見込めましたが、有料ゴミと化した処分パーツの多さによって相殺されてしまいました。
エンジン周り
非常にむごたらしい姿のエンジンに関しても筆舌に尽くしがたい状態でした。
空冷エンジン特有の大きな冷却フィンを持つヤマハ・XJR1300のエンジンですが、美しいことで定評のあるフィンはノコギリの歯のようにギザギザになり、見たことのないような衝撃の凄まじさです。
エンジン下部は割れてオイルは全て流れ出ている状態とあっては、再生コスト割れの処分対象としてのエンジンの評価に。
クランクケース・腹下のエキパイ・右側にマウントされたマフラーのもげ方など損壊状況は凄まじく、エンジン回りは何とかキャブレターに価値があるか?の判定に。
フレーム回り
テール周りが縦90度に捲れ上がるほどの変形を見せ、一瞬で再生不可能なことが見て取れるほどのダメージあり。全損事故車としてフレームが大きく変形していることが見て取れます。
シートの固定部も凄まじい衝撃で変形しきっており、事故の恐ろしい破壊力を示しています。
事故は単なる転倒だけに留まらず、車両を数回転させるほどのものであったことが推測され、エンジンマウント部など全体にダメージが確認でき、フレーム回りは全て処分対象品としての判定に。
電装/保安部品
前後左右のウインカーが全て欠損し、ヘッドライトもリムが外れるほど損壊。
電装・保安部品も壊滅的な被害を受けており、むき出しになった配線類が車体の凄惨さに拍車をかけております。
これはテール部にかけても同様であり、ほとんどの配線類が見る影もないほどダメージを受けており、電装保安パーツに関しても再利用見込みの部品は皆無で処分対象品の判定に。
その他
社外マフラーが装着されてはいたものの、エキパイの変形と裂傷・サイレンサー部の変形と見る影もないほどにダメージを負った状態。
こちらもパーツとして価値は計上できず、処分対象の判定に。
合評価と処分回収費用
フレーム変形の、破損して割れているエンジン、原形を留めていないタンクなど基幹部品は全て商業的な価値を喪失していました。
再利用できる可能施性のあるパーツとしてリストアップできたのは、サイドカバー・キャブレター・タイヤ・前輪ホイール・ブレーキキャリパー・チェーン。
キャブレターについては、状態不明で取り外して組付けてセッティングと状態確認して取り外す手間が部品価値と同等並み、その他は元々の価値が低い状態の悪い中古品とあって価値は知れています。
- ▼計上できた価値
- 上々に処理できても数万円に満たないパーツ価値
- ▼必要となる費用
- 価値の知れたパーツを取り外すコスト
- 残った廃品パーツの処分コスト
- 1人では押し引きも出来ない事故車の回収コスト
車両の価値と掛かるコストをお見積り押したところ、買取することは出来ませんでした。何とか無料での引取りをとも思いましたがコスト割れになってしまします。
通常であれば数万円の処分費用が掛かる車両の状態ですが、販売店のストックパーツとして部品価値を多めに見積もることで、何とか2,000円という格安の処分費用にて回収させて頂きました。
お客様のご感想と処分回収後記
『いつまでも警察署に置いておけないし、といって移動させる手段も移動させる場所も無いから。思っていたより安く早々に処分できて気分的に少し楽になりました。』とはオーナー様のお言葉。
1人では押し引きが出来ない状態でしたが、スタンドが曲がっていますが自立できるのが救いで、査定員2人がかりで移動させてトラックに積み込んだXJR1300。
一時外出して病院を抜けてきたお客様を病院までトラックでお送りする道中に事故の恐怖体験をお聞かせいただき、安全運転の意を新にした査定員2人でありました。
他県での登録車両と言う事で、登録県の陸運局で廃車手続きを行い(毎週100件単位で司法書士に外注しているため1件当たりの廃車処理コストは非常に安い)、廃車証のコピーをお客様にご郵送差し上げて 引取り回収業務は完了となります。
XJR1300事故車の 査定相場
現在、市場流通している空冷エンジン搭載バイクの中では、世界最大クラスの排気量を誇るヤマハ・XJR1300。
買取業者の査定価格の基準値となっている業者間オークション市場における取引データを、事故車や不動車に絞ってご紹介いたします。
- ▼フレーム型式と年式モデル|XJR1300
- RP01J 1998年~
- RP03J 2002年~
- RP17J 2006年~
型式別|事故車・不動車の査定相場比較 |
型式/ 落札価格 |
RP01J |
RP03J |
RP17J |
20万円台 |
0台 |
0台 |
3台 |
15~19万円 |
0台 |
3台 |
3台 |
10~14万円 |
3台 |
6台 |
3台 |
5~9万円 |
3台 |
7台 |
1台 |
0~4万円 |
1台 |
1台 |
0台 |
平均落札額 |
9.3万円 |
10.6万円 |
17.3万円 |
総落札台数 |
7台 |
17台 |
10台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
過去1年間で全部で34台の事故車や不動車の取引がありました。 事故車・不動車と一口に纏めても、キャブ&タンク洗浄などで実働化する不動車から、今回引取りしたような全損事故車まで、幅広い状態の車両が含まれている点に注意は必要ですが、RP17J以降とRP03J以前では相場が一段異なります。
最高価格の29.8万円で取引された車両は目立った損傷などは見当たらない2008年モデルの故障車。
一方最低価格の2万円で取引された車両はフォークやフレームが歪んでいる1998年モデル。
2万円で取引されていた事故車は、今回引取りしたXJR1300よりも再利用できるパーツは断然多く、見た目も今回のXJRよりはバイクらしい形を留めています。
相場が気持ち低いRP01である点を割り引いても、今回の処分費用が極めて割安であることがご浮き彫りとなります。
取引価格別の状態としては、7.1万円以下で取引されている車両は、フレームの損傷のある全損事故車となっています。
20万円以上で取引されている車両はRP17Jの型式でレストア後に高い再販価値が見込める車両となっています。
以上のように、型式と損傷状況(修復コストと修復後の価値/又は再利用可能なパーツ価値)によって市場で取引される価格はある程度推測できます。
買取業者の実際の査定価格は、上記市場での取引価格から儲けと経費(出品手数料や運送費等)として数万円を差引いた額となりますので、それを加味して相場に沿った適切な査定額か判断する事ができます。
今回引取りしたXJR1300は事故車としても稀に見る下の下のレベルですので処分費用を頂戴しての回収となってしまいましたが、この状態より良ければ買取ラインとなるのがXJR1300の相場です。
事故車であっても基本的には買取対象となる車種です。ご相談いただけましたら事前に幅を絞ったお見積り金額をご返答差し上げております。お気軽にご相談くださいませ。
XJR1300(フレーム型式RP01J/RP03J/RP17J)
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近3ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 79台
- 平均価格: 280,139円
- 最高価格: 734,000円
- 最低価格: 102,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 34台
- 平均価格: 123,147円
- 最高価格: 298,000円
- 最低価格: 20,000円
相場情報:2017年12月1日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。