雨の日に赤信号を確認して早めに停車しようとしたものの、目測を誤って低速で転倒してしまったというホンダ・CB1000SF T2。
車体の右側は年式相応の状態でしたが、路面と接触した車体左側の転倒傷と、エンジンの調子の悪さが査定の評価を下げてしまいました。
以下、今回拝見させていただいたホンダ・CB1000SF 転倒車の車両詳細となります。
足回り
社外品のカーボンフェンダーを装着し、一見すると年式の割に足回りは比較的綺麗な状態にみえるCB1000スーパーフォア。
細部を見ていくとフォーク下部やトップブリッジ付近にやや目立つサビがあり経年による年式相応の劣化も見受けられました。
転倒によるダメージはフロントフォークの軽いねじれ程度で、機能的には充分に実働に耐えられる状態です。買取価格への影響も軽微なマイナスに収まりました。
タイヤの消耗はあったものの、全体的にはまずまず良好であり、足回りに関しては年式並みといった評価内容に落ち着きました。
外装
車体右側は丁寧に保管されメンテナンスされていた事が伝わってくる美観ながら、左側に回り込むとガソリンタンクを筆頭に大きな擦りキズが複数あります。
写真でもご覧いただける通り、遠目からもタンクの転倒傷が非常に目立ち、見た目の印象を大きく損ねています。
新しいタンクを調達するか、パテで補修して再塗装をするか、綺麗に仕上げるためには時間も費用も掛かる分だけ買取価値を下げています。
次に目立つ転倒傷は、CB1000スーパーフォアT2の特徴となっているビキニカウルの破損。左側が大きく割れてパーツ価値を無にしています。
ビキニカウルの転倒傷に関しては、取り外しても査定価格への影響は軽微です。というのも、アッパーカウルを取り外すとネイキッドのCB1000SFとなるのですがT2もCB1000SFも買取相場はそれ程違わないためです。
その他、ハンドル左部のクラッチレバー・バーエンドも複数箇所にガリ傷がありこちらも軽目ではありますが評価を落とす要因となりました。
エンジン周り
中古でご購入された際には既に現状と同じ状態だったそうですが、エンジン番号とフレーム番号がマッチしておらず。こちらのCB1000SF T2のエンジンは載せ替えられている可能性があります。
エンジン番号とフレーム番号の一致が重要となる希少な旧車とは異なり、量産車のCB1000SFは同一車種間でのエンジン載せ替え自体は査定価格に影響しませんが、積み替えによる不具合が無いか入念にチェックさせて頂きました。
セルも回って始動はできたものの、替えによる影響か、転倒によってキャブセッティングが大きく狂っているのか、アイドリング中にエンストを起こしてしまいました。
査定中10分程度何回も同じ現象が続いたため、キャブの分解洗浄を含むメンテナンスが必要という判定に。吹け上り時にも回転がバラつく傾向もありエンジン全体の評価を大きく下げてしまいました。
エンジンの見た目は外装の状態と同様、エンジン右側はそれなりに綺麗な状態ですが、左側へ回るとクランクケースを中心に打痕あり。
特に転倒によって、割れた左側のクランクケースカバーは欠品となっていてエンジン機能と同様に買取価値を下げています。
キジマ製のエンジンガード装着でダメージは最小限に留まっておりますが、割れた左側のクランクケースカバーは欠品。エンジン下部にも転倒痕だとわかるキズがあり見た目の印象を損ねています。
フレーム回り
転倒によるダメージがエンジンガードにも目立つホンダ・CB1000SFでしたが、エンジンガードを固定しているメインフレームの接合部に擦れた傷がついていますが歪曲したり剛性を損なうような損傷はなく充分に実働に耐える状態。
メインフレームは、エンジンガード接合部の擦り傷、シートレールの軽い曲がり(軽い曲りは転倒で良く発生します)、経年によるサビと腐食が散見される程度に留まっておりました。
念のためにと車体右側もチェックさせて頂きましたが、細かいキズがある程度で比較的綺麗な状態。
このレベルであればフレームに関しては年式相応かそれ以上で、気持ち高めの評価とさせて頂きました。
以前にも立ちゴケ程度のアクシデントは何度かあったそうですが、前述のエンジンガードがしっかり役目を果たしており、深刻なダメージを負っていなかったことが評価に繋がりました。
因みにエンジンガード自体の損傷ですが付属品なので取り外してしまえば査定に影響することはございません。
電装/保安部品
純正カウルを綺麗に維持し、丁寧なケアで乗り続けてきたというホンダ・CB1000SF。
電装系に関しては全て動作確認が取れ、配線類もオリジナルのままでかなりの好感触だと言えます。
ただし、転倒時の衝撃でカウルがパックリと損壊し、ミラー・左前方ウインカーにも小さめのキズが発生。
ライトの光軸も少々狂ってしまった様子で、これらの要素が電装保安部品の評価を下げてしまいました。
その他
VEGA SPORTS製の社外サイレンサーは事故によるダメージがほとんどなく、エキパイ部の焼け・サビさえケアできれば十分パーツとしての価値あり。
純正マフラーも大切に保管されており、気持ちよくプラス評価の材料とさせて頂きました。
リベットや各レバーが社外メーカー製となっておりますが、これはネイキッドの定番スタイルであるため、綺麗な状態であればむしろサビだらけの純正よりも好ましいと言えます。
ただし、ブレーキマスターシリンダーが車種名不明のものと交換されており、純正パーツが欠品状態ということで、若干ながらマイナスとなってしまいました。
総合評価と買取価格
以上が今回のホンダ・CB1000SF 転倒車の査定チェックポイントですが、右側はまずまず良好であったものの、 左側は複数の転倒キズでマイナスポイントが目立ち、少々残念な状態となっておりました。
- ▼CB1000SF T2としても査定価格が伸び悩んだ主な理由
- 交換か大胆な補修が必要なタンクの大きな転倒傷
- エンストを繰り返し吹け上り不調のエンジン状態
- 欠品となっているクランクケースカバー、大きく割れて破損しているビキニカウル
排気量を1300ccまでボアアップした後継モデル・CB1300SFや、その派生モデル・CB1300SBがモデルチェンジを繰り返しながら流通している現在、20年前に生産終了したCB1000SFは相場が下落傾向にある点も残念な点であります。
業者間では平均価格で17万円程度で取引されている為、買取の平均相場は10万円台前半となっているCB1000スーパーフォア。
上記のマイナスを鑑みて当初の査定評価では10万円にやや満たない97,000円をオーナー様にご提示させて頂き、判断して頂く形となりました。
お客様のご感想と買取後記
「思っていたより高い値段なんですが、限のいいところで10万円はどうですか?」というオーナー様のご希望を聞き遂げ、査定スタッフの独断で「わかりました、OKです」と即答差し上げて、買取金額提示からわずか10秒でご売却頂けました。
難点が目に付いたホンダ・CB1000SFでしたが、自社工場の整備技術を信用した上で、オーナー様のこれまでのケア状況を高く評価できたことが今回のご希望金額での買い取りに繋がりました。
97,000円もギリギリのラインで提示した査定金額ではあったのですが、お客様のご依頼の上手さに思わず即答いたしておりました。
弊社直営店での販売ではなく、業者間市場に転売する場合は相場の値動き次第では収支トントンになる可能性も否定できない買取価格。上司に小言を言われる可能性も否定できません。
1990年代初期に誕生し、カワサキ・ゼファー1100とともに「リッターネイキッド」というジャンルを盛り上げたホンダ・CB1000SF。
現在では後継モデルのCB1300SFが好調なセールスを続けており、中古バイク市場でも年々取引台数・平均取引金額が減少傾向にあります。
特にここ数年は平均取引金額が下がる一方で、よほどの美車でもなければ厳しいと言わざるを得ません。
以下、業者間取引におけるホンダ・CB1000SFの直近12ヶ月内の取引価格分布となります。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|CB1000SF
- 評価点5 状態が良く綺麗
- 評価点4 年式並み・やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み未満で難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
CB1000SFとT2|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
25万円以上 |
0台 |
2台 |
2台 |
0台 |
20~24万円 |
1台 |
18台 |
0台 |
0台 |
15~19万円 |
2台 |
41台 |
10台 |
3台 |
10~14万円 |
0台 |
28台 |
9台 |
1台 |
10万円未満 |
0台 |
0台 |
1台 |
7台 |
総落札台数 |
3台 |
89台 |
22台 |
11台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(CB1000SF T2とCB1000SFを合わせた数時)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
直近12ヶ月内では、CB1000SFが109台、CB1000SF T2が5台、全114台とリッターバイクとしては多めの取引台数ながら、そのうち8割弱に当たる90台が10万円台で取引されています。
20万円以上で取引されているのは全体の2割強に当たる23台で、さらに25万円以上となると3台のみとなっています。
25万円以上で取引されているCB1000SFはフルカスタムや高価な社外品が評価されているカスタム車で占められていています。
ノーマルに近い状態としては、20.8万円で取引されている評価点5で走行距離1万3千キロのフルノーマル車両がベンチマークとなりそうです。
大方の車両は業者間市場で10万円台で取引される事実から買取価格を逆算すると、業者の儲けに経費(出品手数料や運送費や人件費)を差引いた10万円台前半が実際の買取価格の基準点となりそうです。
10万円台前半をベースに状態に応じて若干上下するイメージでCB1000スーパーフォアの買取相場は間違いないと言えます。
全部で5台取引されているCB1000スーパーフォアT2に関しましてもサンプル数は少ないものの若干気持ち程度の上乗せ余地があるか相当と思って間違いないでしょう。
続けて不動車・事故車を表す評価点1の取引データを見て参りましょう。
コチラで最高値をつけたCB1000SFはカスタムパーツ多数でキャブ詰まりによる不動車両で簡易な修復で実働化し実働化後の商品価値の高い車両となっています。
最安値は欠品多数の事故車であったことを考えると、その他の車種同様に修理ベース車は修復コストと修復後の価値。部品取り車は再利用できるパーツの数が大きな判断材料となっております。
今回のような転倒車両の場合、市場での売却価格が買取価格を下回る”原価割れ”を嫌って安全マージンを大きく取る業者が多いのですが、 自社工場による修理と整備に自信がある弊社パッションであれば、直営販売店の仕入れ価格(業者間市場での取引値+消費税+落札手数料)をベースとした買取価格も仕入れ需要に応じて可能となっております。
出張査定は完全に無料となっておりますので、お気兼ねなく相見積もりのお声がけを頂ければ幸いです。
年式モデル別の買取相場
- ▼年式モデルとフレーム番号|CB1000SF
- 1993年 SC30-10
- 1994年 SC30-11
- 1996年 SC30-12以降
- 海外仕様 JH2SC30
CB1000SF実働車|年式モデル別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
1993年 |
1994年 |
1996年 |
海外 |
25万円以上 |
2台 |
1台 |
1台 |
0台 |
20~24万円 |
12台 |
5台 |
1台 |
0台 |
15~19万円 |
38台 |
10台 |
4台 |
2台 |
10~14万円 |
26台 |
6台 |
5台 |
0台 |
10万円未満 |
0台 |
0台 |
0台 |
1台 |
総落札台数 |
79台 |
22台 |
11台 |
2台 |
平均落札額 |
16.7万円 |
17.9万円 |
17.1万円 |
17.1万円 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
1992年から販売終了される1998年まで大きな仕様変更を伴うモデルチェンジもなく、スタイリングやカラーリングの変更が2回あったCB1000SF
サンプル数が少ないものの年式モデルによる相場差は誤差の範囲と言えそうです。
CB1300スーパーフォアやCB1300スーパーボルドールがモデルチェンジを行い、CB1300SFで旧型のもSC40などは大きく相場が下落している相場環境にあって、CB1000SFは上値が重いと言えます。
今後も緩やかに下落しつつも安定的に10万円台で取引されていくものと思われます。
急激に相場が下落することは予想しづらく、長らく保持していても車両の価値はそれほど下落しないと言えるでしょう。
(買取販売店としてはお客様に積極的に売却して購入して欲しいところではありますが)大事にされているオーナー様にとってCB1000SFは車両の長期的価値の観点からも急いで売る必要のない車両と言えます
CB1000スーパーフォアとT2
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 114台
- 平均価格: 169,183円
- 最高価格: 458,000円
- 最低価格: 96,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 11台
- 平均価格: 108,182円
- 最高価格: 184,000円
- 最低価格: 39,000円
相場情報:2018年1月6日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。
■CB1000スーパーフォアT2豆知識
1992年に販売を開始し、1998年の後継モデル・CB1300SFへのモデルチェンジを期に販売を終了したホンダ・CB1000SF。
元祖”BIG1”の勇猛なオーラを放ち、思わずカスタムしたくなるような、いい意味での”隙”の多さで人気を博しました。
2018年現在も、後継モデルのCB1300SF・SBらが好調なセールスを記録しており、国内におけるビッグバイクの代表格のひとつとなっております。