個人でのプライベート参戦車両ながら、オールペン・レース専用パーツなどを組み込み、本格的なレース仕様車となっていたCBR600RR。フレーム型式はPC40型の北米仕様2012年モデルです。
レース中の転倒キズや車体全体に発生した塗装剥離などが目立ち、年式平均よりもかなり傷んだ状態と化しておりました。
今回の売却でオーナー様はレースから足を洗うとのことで、愛車との思い出をお聞かせ頂きながらの買取査定となりました。
以下、今回拝見させていただいたホンダ・CBR600RRレース仕様車の車両詳細となります。
足回り
出張査定の直前に転倒しており、フロントフォークには軽度のねじれあり。
この時のキズがフェンダー・ディスクローターなどに発生しており、買い取りさせて頂いた場合は再販に向けて一通り入念なケアを要する状態。
レース仕様に備えたCarrozzeria(カロッツェリア)製ホイールも多数のキズが付いており、誠に残念な状態。
ホイール交換時に純正ホイールは手放されたそうで、足回りの評価下げる一因になってしまいました。
タイヤは前後共にレーシングタイヤが装着されていましたが、消耗度が激しく要交換判定。
その他ブレーキパッド・フルードも劣化消耗が激しくこちらも要交換判定。前後のサスペンションにも傷や使用感が認められ足回りの査定評価はネガティブな内容となりました。
外装
オールペンにてボディカラーを再塗装していたCBR600RR PC40型でしたが、塗装の仕上がりが非常に悪い上に、全体的に細かいキズが多く、塗装が剥離している箇所も多く、このままの状態では再販が難しいほど外観の印象を大きく損ねておりました。
レース参戦のために保安部品なしのカウルへと換装されており、この外装で車検を通して公道を走行するためには、外装カウルに穴を開けて電装系を通し保安部品を調達しステーから取り付けが必要となります。
レーサーレプリカの印象を決める純正カウルが欠品している点は大きなマイナス査定に。
その他、転倒によるものと思われるキズの補修跡も数カ所あり、純正カウル調達のコストと照らし合わせ、かなり手痛いマイナスポイントとなってしまいました。
こうした社外カウル装着車の場合、保安部品の有無でも大きく評価が異なりますので、高額買取を狙うのであれば純正カウルは必須条件だと言えます。
エンジン周り
国内仕様に比べて若干馬力に勝るとも言われているPC40北米仕様CBR600RRのエンジンですが、始動性・アイドリングに問題はなかったものの加速時に白煙吹きと腰上からの異音あり機能的には良好未満の判定に。
またエンジン両側には一目でそれと分かる転倒キズもあります。カーボンカバーによる保護はあるものの、その下にもキズありとのことで外観上の印象を損ね買取価値を大きく下げてしまいました。
ハイテク化が進むスーパースポーツモデルで電子制御デバイスが多い車両は、高い開発コストに比例してエンジンの状態が査定価格に与える影響が高まります。
程度が悪いエンジンの修復コストはエンジンとコンピューターの組み合わせで多大になる可能性もあり低評価に、逆に高性能なエンジン車量は高評価に振れる幅が大きくなる傾向があります。
とはいっても近年のコンピューターの安定度は優れており、よほど状態が悪いエンジンを除けば買取価値を大きく下げる可能性は少ないと言えます。
フレーム回り
車体左側は遠目にも分かるような顕著なダメージがなかったものの、車体右側のメインフレームにははっきりそれと分かる転倒キズあり。
こうした転倒キズはスイングアームにも見られ、それなりのダメージを負っていることが確認できました。
軽量高剛性を誇るCBR600RR PC40型だけに、走行に大きな支障をきたすほどのものではなかったものの、これほど目立つ状態では見た目の印象を大きく損ない大規模な補修が必要なだけに買取査定価格にも大きなマイナス影響を与えました。
電装/保安部品
レース用カウルへの交換に伴い、電装系もそっくりそのまま変更されておりました。
特に保安部品に関する配線類がそっくり欠品状態となっていたのは大きなマイナスで、ストックもなかったことから非常に残念な評価となってしまいました。
車検を通して公道走行できるCBR600RRの状態にするには電装系を刷新する必要があり、買取価値を大きく損ねています。
コックピット回りはマスキングが甘かったのか塗装の吹き付けこぼれが散見され、メーターパネル割れや塗装ハゲなどの使用感と合わせて見た目の印象は悪いです。
メーターによる走行距離は10,202kmと低走行の部類に入りますが、レースでの酷使状況などを考えると電装系への不安は拭えず、年式平均よりもかなり低めに。
その他/カスタムなど
社外カウルとマフラーにより、非常にレーシーな仕様となっていたCBR600RR PC40型でしたが、残念なことに純正パーツのストックは一切なし。
保安部品等を全て取り外すレース仕様車の場合は、公道を走れる状態に戻せるか否かが買取金額に直結する重要ポイントとなります。
今回のケースは誠に残念ですが、電装系も含めた全てのパーツが欠品扱いとなり、総合評価を大きく下げてしまうことに。
総合評価と買取価格
以上が今回のホンダ・CBR600RR 仕様車の査定チェックポイントですが、先日までレースに参戦していた実動車ながら、数々の難点が目立ちました。
- ▼2012年モデルのPC40型として査定価格が伸び悩んだ主な理由
- (純正カウル一式欠品)雑な塗装が施された社外カウルは傷や塗装剥離も目立つ
- 車検を通すためには電装系を調達して刷新する必要あり(レース仕様の電装系)
- ライト・ウィンカーなど保安部品一式欠品(車検を通すためには調達して組付けが必要)
- レース中の転倒によるフレームやエンジンの目立つ転倒傷
- レースで酷使された各パーツの消耗度や疲労感
が挙げられます。
車体各部に見られたキズも決して小さくはありませんが、純正パーツのことごとくが欠品状態であったのは残念で、総合評価と買取価値を大きく下げる結果となってしまいました。
車検を通すだけでも最低限タイヤやブレーキパッドの交換に電装系の工事に保安部品の調達と組付けが必要となります。
そこから、目立つ転倒傷のリカバーや、雑な塗装の外装カウルのリカバーなど再販に向けては修理メンテナンスの課題が山積しているCBR600RRのレース仕様車でした。
それでもエンジンが実動状態で実走可能な状態であることや、ホイール・マフラーといったカスタムパーツ類の価値を含めて評価させて頂いた結果、最終的な査定金額は400,000円とさせて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
「よそだと25万円でどうですか?と言われていたので、それだけ出してもらえれば助かります」とご快諾を頂け、買取金額400,000円にて即決成約となりました。
オーナー様はレース歴12年というベテランライダーの方。「もう40代半ばを超えて肉体的にしんどくなってきてねぇ。」とレース活動の一線から身を引く理由を教えてくださいました。 最初はNSR50Rからレースを初めて今回ご売却頂いたCBR600RRは6台目のレース車であること。レース中に転倒して大怪我をされたこと。興奮する瞬間など様々なレースに纏わるお話をお聞かせいただきました。
今後は原付2種のバイクで悠々とバイクを楽しんでいくそうで、今後のバイクライフが実り多きものであることを願いつつ、お売り頂いたCBR600RRを引き上げさせて頂きました。
ハイスペックで多くのライダーを魅了したCBR600RR PC40型も、2016年にレース仕様車を除いて日本での販売を終えてしまいました。
それから約2年の月日が流れましたが、今日現在でも中古市場での人気は高く、安定した台数が取引されております。
以下、業者間取引(オークション)におけるホンダ・CBR600RRの直近3ヶ月内の取引価格分布となります。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|PC40型CBR600RR
- 評価点7 超極上車
- 評価点6 極上車
- 評価点5 状態が良く綺麗
- 評価点4 若干の難有り
- 評価点3 難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 6以上 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 1 |
90万円台 |
3台 |
2台 |
1台 |
0台 |
80万円台 |
0台 |
9台 |
0台 |
0台 |
70万円台 |
0台 |
15台 |
4台 |
1台 |
60万円台 |
1台 |
17台 |
10台 |
1台 |
50万円台 |
0台 |
13台 |
19台 |
5台 |
40万円台 |
0台 |
7台 |
40台 |
5台 |
30万円台 |
0台 |
0台 |
10台 |
20台 |
30万未満 |
0台 |
0台 |
0台 |
12台 |
総落札台数 |
4台 |
73台 |
84台 |
44台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(CBR600RR ABS搭載モデルを含んだ数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
過去1年間でPC40型のCBR600RRはABS搭載モデルも合わせて実働車が151台取引されています。詳細を見ると、
最高値をつけたのは評価点7のフルノーマル車で、91.8万円とかなりの高値で取引に至りました。
その一方、今回買取りしたような純正パーツなしのレース仕様のカスタム車両はかなり厳しく、エンジン好調な評価点4の車両が35.0万円という低評価に。
こうしたスーパースポーツのレーサーレプリカ場合、フルノーマルに近ければ近いほど評価額が上がる傾向にあります。
評価点別に取引価格のボリュームゾーンを見てみると、評価点6以上の車両は90万円台。評価点5の車両は50~70万円台。評価点4の車両は40万円台に取引が集中していることが分かります。
上記から実際の買取価格を導くには、上記市場での取引価格から買取業者が支払う出品手数料に運送などの経費に買取業者の儲けを差引いた額となります。
つまり市場での想定売却価格から数万円を差引いた額が適正な実際の査定価格となります。
事故車や不動車を意味する評価点1の車両に目を向けると44台の取引があり30万円台に取引が集中しています。このことは事故車や不動車のCBR600RRでも修復可能なレストアベース車であれば20万円台後半以上の査定価格が付き、 修復コストが安ければ60万円程度まで査定価格が伸びしろがあります。逆に損壊の激しい事故車などパーツ取りになると10万円台の取引が中心となりそうです。
純正パーツの重要性については、完全フルノーマルのエンジン焼き付き車両が56.4万円をつけたのに対し、FI不良のフルカスタム車が26.8万円という低評価に留まり、CBR600RR PC40型の評価の難しさを語るバロメーターとなりました。
年式別の買取相場
- ▼フレーム番号と年式|PC40型CBR600RR
- PC40-10 2007年~
- PC40-11 2008年~
- PC40-12 2009年~
- PC40-13 2010年~
- PC40-14 2011年~
- PC40-15 2012年~
- PC40-16 2013年~(国内最終)
- JH2PC40 海外仕様(逆輸入車)
年式別のCBR600RR実働車の査定相場の比較 |
相場/ 年式モデル |
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
PC40-10 |
49.6万円 |
74.2万円 |
33台 |
PC40-11 |
58.8万円 |
90.2万円 |
24台 |
PC40-12 |
48.7万円 |
60.2万円 |
15台 |
PC40-13 |
53.1万円 |
85.8万円 |
11台 |
PC40-14 |
61.9万円 |
83.6万円 |
10台 |
PC40-15 |
58.2万円 |
70.4万円 |
8台 |
PC40-16 |
71.7万円 |
91.8万円 |
22台 |
JH2PC40 海外仕様 |
60.5万円 |
81.6万円 |
34台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
PC40-12(2009年~)-PC40-15(2012年~)にかけては取引数が少ないため傾向値が弱いのですが、2013年以降の国内最終型のPC40については1段高い取引相場を形成していることが読み取れます。
その他の年式に関しては、年式による相場差は少なく、車体の状態による査定価格の影響が強いといえるでしょう。
ABSありなしの買取相場の比較
- ▼ABS搭載モデルの発売時期とフレーム番号
- ABS搭載なし PC40-10~ 2007年~
- ABS搭載あり PC40-12~ 2009年~
年式別のCBR600RR実働車の査定相場の比較 |
|
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
ABSなし |
56.4万円 |
91.8万円 |
127台 |
ABSあり |
64.9万円 |
91.6万円 |
24台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
平均買取引額で10万円近い開きがありますが、ABS搭載モデルが後発であることと、取引されている個体の評価点が総じて良いことが多分に影響しているものと思われます。
その他の車種では総じてABS搭載モデルの相場が極端に高い事例が確認できないことから、CBR600RRについてもABS搭載モデルというだけで、非搭載モデルよりも取引額が高くなる可能性は薄いでしょう。
高く見積もったとしても買取価格で数万円上乗せされれば最大の評価と言えるでしょう。
以上PC40型のCBR600RRの買取相場を状態別・年式別・AVBSありなしで比較して見てまいりました。
年式に関しては最終型の相場が高く、状態は相場との連動性が極めて高いことが分かりました。
お客様のCBR600RRの売却の際の参考になれば幸いです。売却検討中の方はお気軽にご相談頂ければ幸いです。
CBR600RR/ABSモデル含む(PC40型)
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 151台
- 平均価格: 577,689円
- 最高価格: 918,000円
- 最低価格: 300,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 44台
- 平均価格: 372,447円
- 最高価格: 719,000円
- 最低価格: 198,000円
相場情報:2018年1月5日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。