買取させて頂きました車両は、ツインカム88エンジンを搭載したフューエルインジェクション仕様のストリートボブ。通称FXDBi。
早速、バッテリー上りだった車両の査定内容をご紹介させて頂きます
外装
「2年程動かしていない」とはオーナー様のお言葉。
屋外でバイクカバーをかけて保管されていたそうですが、バイクカバーは生地が薄くなって日焼け止め効果は殆ど無くなりつつあったのでは?と思われる状態。
オーナー様がカバーを外して目にいたしましたストリートボブ・インジェクションは、ツヤケシクロのカラーリング。
光沢を抑えたマットブラックですが、若干曇りというか本来の色彩から気持色落ちしている印象を受けました。
全体的に薄ら付着している埃は直ぐとれますが、タンクやカバー・フェンダーと言ったマットブラック外装の全体的な軽い色褪せは、リカバーが難しく買取価値を下げています。
外装には目立った傷はなかっただけに残念です。
バッテリー上がりで当初は始動しなかったエンジン
オーナー様からお電話でお聞きしていた通り、バッテリー上りでセルを回しても無反応。エンジンは始動しません。
持参しています、ブースターを繋いで試みたところ、初爆の気配あり。こういう時はインジェクションが有利、タンク内にもガソリンが残っており、強い腐臭はありません。
2~3分ほど試すと始動。久しぶりに火の入ったエンジンは直ぐにエンスト。アイドリングを安定させるのに時間を要しましたが実働車であることを確認。
今回のストリートボブ・インジェクションは、クランクケースカバーに大きめの削れ傷、エンジンヘッドの目立つ腐食、空冷フィンの錆び、腰上のオイル滲みがあり、 エンジンの見た目からエンジン機能にも使用感があるのではと推定される状態でした。
もしエンジンがかからなければ、エンジン状態の評価はやや辛めの査定となっていたでしょう。
使用感が感じられる車両は、査定現場でエンジンがかかるか掛からないかで買取価格が異なってきますので、掛かったことに一安心。
オーナー様に許可を頂いて実走行でテスト。
シフトアップして回転を上げていきます。シフトチェンジの際にギアの引っ掛かりとクラッチ付近からの軽い異音が気になりますが、白煙吹きや目立つモタツキ等もなく年式並みの状態と言えます。
足回りはやや劣化が
前後の足回りは全体的にやや使用感が目立ちます。
腐食や錆びが特に目立ったのは、スポーク・スプロケ・チェーンケース。その他アウターチューブ・レバー類・ディスクローター・フルードタンク・ハンドル周辺も劣化が目立ちます。
錆びや腐食は研磨によって落とす事ができるのですが上記を真剣に落とそうとすると一日がかりの研磨作業となるでしょう。
グリップなどのラバー類やスイッチなどのプラスチック類にも使用感が目立ちますが、こちらはリカバーの難しい素材なので、場合によっては交換の可能性もあります。
フロントサスペンションはアウターチューブから軽いオイル漏れがあったのが残念ですが、対して社外品のリアサスペンションは交換してから殆ど走行していないということで非常に綺麗、他のパーツと劣化状況に差が見えます。
全体的には劣化が目立ち、年式並み未満の非査定評価点に甘んじました。
フレーム回り
目立った外傷は、クランクケースカバーの削れ傷のみで転倒による傷ではありません。レバー類やバーエンド・ハンドルストッパー等にも曲りや傷はなく転倒等を示す傷は確認できませんでした。
当然メインフレームにも損傷や衝撃を吸収した痕跡は認められず高い剛性を保持しています。
ただし、ダウンチューブの塗装ハゲや錆び、スイングアームの塗装ハゲ、接合されているステップやペダル・スタンドの錆びなどが目立ち、再販に向けては錆び落としや研磨クリーニングが必要となります。
電装系と保安部品
充電が出来るか不明なバッテリーは要交換判定で、交換費用だけ査定価格が減額されていますが、販売店に多数あるバッテリーを使用できますので減額幅は小さいです。
保安部品の動作はエンジンに引き続いてブースターで行います。メータ読みの走行距離は12,082km。期限が切れている車検証に記載されている過去距離とも整合性が取れています。 ウィンカー・前後ライト・ホーンと動作自体に問題はありません。 ただし、錆び錆びのウィンカーステーをはじめ、メーターパネルの曇り、腐食が進行したミラー、錆び錆びのミラースタンドと劣化は目立ち、ボルトやステー類は要交換、要念入りな研磨が必要なため買取価値を下げています。 とはいってもここまで見てきた中で、最も廉価なパーツ群ですので減額幅も小さいです。
金額的に保安部品の4番バッターであるマフラーは、錆びや色褪せが目立ち、銀色に輝いて見た目の印象を高めるマフラーの価値を取り戻すべくコチラも要研磨とメンテナンス。
電装保安部品の査定評価点は年式並み未満となりました。
カスタムなど
社外品はエアクリーナーカバー・マフラー・リアショック。リアショックとエアクリカバーは純正品の保管が合った為査定価格アップとなりました。
総合評価と買取価格
下段でストリートボブの相場を詳しくご紹介していますが、実働車の平均的な取引相場は50万円弱。 実は、この数字は2年前の20%ダウン。3年前の30%ダウン。ハレー全体で言えることですが、中でもストリートボブ・インジェクションの下落は顕著と言えるでしょう。
FXDBi|中古相場の推移 |
相場/ モデル |
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
2015年 |
66.7万円 |
78.4万円 |
14台 |
2016年 |
58.2万円 |
70.6万円 |
14台 |
2017年 |
57.2万円 |
96.8万円 |
17台 |
2018年 |
49.1万円 |
69.8万円 |
15台 |
(各年度のとある月を起点に、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
下段の表にある通り、 年式並みの状態を示す評価点4のFXDBiの取引は40万円台に集中しています。そこから儲けと経費(出品料や運送料など)を差引く必要がある買取業者の査定額は、40万円台前半が適正価格となります。
査定いたしましたFXDBiは評価点4点弱で、業者間市場での売却値が40万円台前半~中盤が予想される状態です。
買取業者としては、40万円での買取額で利益が何とか確保できそうなラインになります。
現状のまま出品すれば40万円台前半の車両ですが、しっかりとメンテナンスをして外観と機能の向上を図れば50万円弱までの売却値は見込めます。
弊社整備工房で安価にできるメンテナンス力を発揮して、メンテナンス後の価値を見込んだ45万円の査定価格を提示させて頂き買取させて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
「ブースターを持って来てくれて助かったよ。最近はハーレーの中古車が安くなったぁ~という実感があるので。見せてくれた相場データからも頑張ってくれた金額。それで頼むわ!」とはオーナー様のお返事。
下げ止まりを見せないハーレーの中古相場。下げ過ぎているので上がるかもしれないという期待はありますが、5年以上続いている下落を考えると、オールドハーレー以外は今が売り時なだと思われます。
状態の良いハーレーにつきましては状態を維持しながら、相場の回復を待つという選択肢も充分にありだとは思いますが。ハーレーオーナー様には悩ましいところです。
パッションでは、過去相場も含めた相場傾向もご案内できますので、お気軽にお問合せくださいませ。誠実にご対応させて頂きます。
データから読む買取相場
ハーレーでは珍しく、2006年モデルのみの単年発売となったFXDBi
単年発売にもかかわらず、中古市場でも少なくない台数が取引されています。
単年モデルであることから、車両の状態が買取価格に直結する車種と言えます。
先ずは、『状態別の相場』と『走行距離別の相場』をご紹介いたします。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|FXDBi
- 評価点5 状態が良く綺麗
- 評価点4 年式並み・やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み未満で難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
FXDBi|評価点別の相場 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 1 |
60万円台 |
2台 |
0台 |
0台 |
50万円台 |
2台 |
2台 |
0台 |
40万円台 |
0台 |
9台 |
0台 |
10万円台 |
0台 |
0台 |
1台 |
(2018年2月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
年式並みの実働車は40万円台前半の買取相場
日本の中古バイクの相場を決定している業者間オークション市場において、過去1年間で15台のストリートボブ インジェクションが上記の価格帯で取引されています。
傾向として、評価点の高い車両ほど高額で取引されていることが認められます。
評価点5のFXDBiは50~60万円台、評価点4のFXDBiは40万円台に取引が集中しています。
因みに最高額の69.8万円で落札された車両は走行距離1,761kmの極上車。
最低額の40.2万円で落札された車両は、走行8千キロと浅いのですが腰下からのオイル漏れが嫌気されて低調な額となっています。
上記の取引データから、買取業者の買取相場を計算するのは簡単です。業者の儲けと経費(出品手数料や運送費など)を差引けば計算できます。
額で言えば、リッターバイクの場合は、3~4万円を差引くのが競争力のある適正価格といえます。
したがいまして、FXDBiの買取相場は、年式並みの車両は40万円台前半、状態の良い車両は50万円台、極上車で60万円台であることが読み取れます。
評価点1の実働状態にない車両は、過去1年間に18.6万円で落札された1台の取引となっています。
炎上車でシート~パニやケースが黒焦げになって、タンクやサイドカバー・リアフェンダーにも焦げ跡が付いていますが、エンジンは始動します。
外装の損傷が低調な取引額の原因と思われます。FXDBi 不動車の取引額は、エンジン実働化コストを差引かれた金額で概ね取引されますが、ハーレーの場合は実働状態に修復してから出品されるケースが多く、 不動車として取引されている車両は、劣化が激しく車両価値の低い車体や、焼き付きなど修復コストの高い車両が中心となっています。その為、取引額としては20万円台が多くなっています。
劣化の激しい不動車となると買取相場は10万円台半ばとなりますが、バッテリー上りの不動車であれば実働車の買取相場からバッテリー交換費用を差引いた額での買取となります。
走行距離別の買取相場
FXDBi実働車|走行距離別の相場 |
状態/ 落札価格帯 |
~1万km |
~3万km |
3万km~ 1 |
60万円台 |
1台 |
1台 |
0台 |
50万円台 |
0台 |
3台 |
1台 |
40万円台 |
3台 |
0台 |
6台 |
(2018年2月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
上記表からは、走行1~3万キロの車両が50万円台に、走行3万キロ超の車両が40万円台に集中していて、走行距離と取引額にある程度の関連性は見えます。
対して、1万キロ未満の車両の3台が40万円台で取引されていているのは、走行が浅くても状態に難があると取引額が伸びない結果であることを示唆しています。
低走行であるのは有利な材料ですが、状態の一要素と考えると腑に落ちると思います。
逆に多走行であると不利で、ストリートボブ インジェクションは、走行距離が5万キロを超えてくると50万円台での取引は難しく買取相場は40万円前半で状態に応じて上下する余地がありそうです。
ストリートボブの変遷と年式モデル |
年式 |
車種 |
エンジン |
1992年 |
FXDB1340 |
エボエンジン |
2006年 |
FXDBI |
ツインカム88 |
2007~16年 |
FXDB1580 |
ツインカム96 |
2015年 |
FXDBB リミテッド |
ツインカム96 |
2016年 |
FXDBC スペシャル |
ツインカム96 |
2017年 |
FXDB1690 |
ツインカム103 |
2016年~ |
ソフテイル FXBB1750 |
ツインカム107 |
単年モデルの発売が多く、ハーレーのエンジンの排気量アップによって多数の年式と排気量モデルが存在するのは人気車のスタンダードですが、 ストレートボブのユニークな点は、ストリートボブ・スペシャル(FXDBC)、ストリートボブ・リミテッド(FXDBB)といった派生モデルが存在する事。 そして何よりユニークなのが、ファミリーの移籍。ダイナファミリーであったストリートボブが、ツインカム107エンジンを搭載したフルモデルチェンジによってFXBBとなりソフテイルファミリーの一員となっています。
下落を続ける中古相場(買取相場)とは反して、値上がりが続く新車価格ですが、ストリートボブの購入しやすい価格は健在です!
そんなストレートボブの相場を比較したのが下記表です。
ストリートボブ|モデル別の買取相場 |
相場/ モデル |
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
FXDB1340 |
71.2万円 |
71.2万円 |
1台 |
FXDBi |
49.1万円 |
69.8万円 |
15台 |
FXDB1580 |
69万円 |
119.2万円 |
82台 |
FXDBB |
93.7万円 |
108.4万円 |
8台 |
FXDBC |
120.4万円 |
125.8万円 |
2台 |
FXDB1690 |
128.5万円 |
134.8万円 |
8台 |
FXBB1750 |
129.9万円 |
136.4万円 |
6台 |
2015年以降の高年式モデルが平均で100万円以上の相場を形成していますが、2010年以前のモデルはFXDB1580を含めても60万円台以下の相場となっています。
FXDBi【2006年モデル】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 15台
- 平均価格: 491,200円
- 最高価格: 698,000円
- 最低価格: 402,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 1台
- 平均価格: 186,000円
- 最高価格: 186,000円
- 最低価格: 186,000円
相場情報:2018年2月2日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。