典型的な和製アメリカンスタイルのXV750スペシャルに手が加えられ、ネイキッドスタイルでリリースされたXV750E。
一見するとエンジン不動・外装なし・電装全滅状態でスクラップ車両にしか見えず、とても値段は付きそうにない車両状態。
しかし細部をチェックすると入念なケアが施された箇所やカスタムパーツが評価対象となり査定金額を付けて買取できる要素も発見できました。
買取業者の値付けの指標となっている業者間市場では過去2年間で数台の取引しかなく、その取引価格は実働車で約10万円。
実働車でも10万円程度で取引されるXV750E。今回のように欠品多数の不動車はどのように評価されるのでしょうか?
以下、今回拝見させていただいたヤマハ・XV750Eの車両詳細となります。
足回り
レストア途中段階で放置されていたため、前後ホイール・ブレーキにはそれなりのサビ・腐食あり。
この前後スポークホイールはXV750Viragoシリーズのものを純正流用しており、本来のオリジナルではありませんでした。
現オーナー様の入手段階で既に欠品状態だったそうで、ノーマル状態がキャストホイールと異なっています。
カスタム途上で放置された混沌とした車両状態にあって、ホイールが姉妹モデルの流用であることは大勢の査定価格に影響を与えません。
Fフォークも減衰にヘタリが見られ、フォークオイル交換を含めた大規模なメンテナンスが必要ですが、丁寧なサビ落としで外観は割り合い綺麗な状態。
特筆事項として制動力の弱かったオリジナルのブレーキをブレンボ製キャリパーに変更している点はプラスの買取価値となりました。

外装
前後フェンダー・タンク・両サイドカバーなど外装類はほとんどなく、撮影画像の通り表皮の色艶が損なわた純正シートが存在するのみ。
外装パーツ一式の欠品は買取査定上の大きなマイナスポイントとなってしまいました。
「外装を探していたんだけどマイナー車すぎて中古パーツが見つけられなかった」とはオーナー様のお言葉。 車両自体の流通が極端に少ない車種ですので、「外装の調達見込みの低さもカスタム途上で放置したまま手放す大きな要因となった」と仰っていました。
それでも手をいれられる箇所からレストアをしていたようで、SR400用の社外ライト・ウインカーが仮装着されており、こちらは大きな額にはなりませんが中古パーツとしての価値が見いだせました。
評価的にはかなり厳しいものがありますが、この点に関してはオーナー様も重々ご承知の上でのご相談であったため、辛口評価にもご納得して頂けました。
外装でのトピックは外装一式欠品していることに尽きます。

エンジン周り
電装類がすべて取り外されていること、ガソリンタンク無しで燃料供給ができないため、エンジンは当然不動判定。
XV750の特徴であるVツイン型空冷エンジンの見た目は経年を感じさせるサビ・腐食も多く、綺麗ではありませんが酷い劣化でもなくエンジン外観に関しては年式相応と言えます。
それでも路面からの飛び石等によるダメージは少なく、電装系の回復に難儀しそうですが、エンジン回りの再生は十分見込めそうです。
ただし、エンジン左側にオイル漏れらしきにじみ跡が見られたため、エンジン状態を判断する上で割引材料に。
オーナー様のお話や関連部位の状態から判断して、買取価値としてはやや難のある状態、軽めのメンテナンスでの始動見込エンジンといった評価に。

フレーム回り
外装類が皆無の状況であったため、難なく細部に至るまで確認させて頂きました。
足回りと同様に経年によるサビ・腐食は多く、フレーム全体に広範囲の傷みが見られましたが、剛性を損なうほどではなくレストアベース車としてしっかりと利用できる状態です。
事故等による歪み・曲がりといったダメージ箇所もありませんでしたが、流通が少なく相場も低調な車種ということがあり、買取価値としては相場状況に連動して安価になってしまう点が残念です。
フレームが生きて、エンジンも再生見込みがあり、多少の価値がある社外品もあり、レストアベース車として査定金額を付ける可能性が浮上してきました。

電装/保安部品
バッテリー欠品・配線類すべて取り外し済みのため、電装及び保安部品のチェックはできませんでした。
各種ケーブル類をたどってみたところ、断線や損傷箇所は多数、ソケットの欠品などもあり、電装系の回復は難儀しそうな状態だと言えます。救いは剥き出しの状態の為ラインを辿りやすいことでしょうか。
エンジン実働化へ向けてエンジン機能の回復よりも電装系の回復の方が難易度は高そうです。
純正の保安部品はありませんが、ライト・ウインカーは十分パーツとして評価することができますが、高価な部品であるメーターの欠品は買取価値を損ねていました。
これらを総合的に判断した結果、損傷が多い電装系とメーターの欠品が大きなマイナスとなり、社外パーツが少しのプラスとなりました。

その他/カスタムなど
そこまで深刻なレベルではなかったものの、純正マフラーは全体的に凹みとキズが目立つ状態。
排気漏れの原因となるような穴空きこそなかったものの、評価的には可もなく不可もなくといったところです。
フロントブレーキのマスターシリンダーも他車流用で換装されており、ブレンボ製ブレーキを活かそうとした努力が見られ、オーナー様が苦心された様子が伺えました。
ただし、車種不明のものであることと、純正マスターシリンダーが存在しないため、若干マイナスとなってしまいました。

お客様のご感想と買取後記
以上が今回のヤマハ・XV750Eの査定チェックポイントです。以下に主なプラスとマイナスを列記いたしました。
- ▼主なプラス
- フレームに再生見込みエンジンがのったレストアベース車
- ブレンボなどの社外パーツ
- 不動車の相場が比較的高く買取平均で2万円程度
- ▼主なマイナス
- 相場が低く完品実働車でも査定価格は平均で5~6万円程度
- タンク・前後フェンダー・カウル・両サイドカバーなど外装一式欠品
- メーターなど保安部品欠品
- 断線や損傷多数の電装系
探せば車両価格10万円台からの中古車を購入することができるXV750シリーズ。
業者間での取引相場から導かれる平均買取価格は、完品の不動がは2~3万円。実働車であっても5~6万円が平均的な買取額となっています。
そのような相場環境にあって、外装一式とメーターが欠品していて電装系がグシャグシャの不動車。
実動状態に持って行くまでのハードルはまだまだ高く商業的にはコスト割れになるため、通常であれば1万円程度の費用を頂戴しての回収と判断されそうです。
しかし細かく査定していくと、再利用できそうなパーツもあり。特にブレンボ製ブレーキキャリパーはその最たる例で、各パーツの評価が積み重なって1万円の査定価格をお付けさせて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
「ヤフオクで外装一式が7万円というトンデモ価格で売られていてレストアを断念しました。探せば10万円台で買う事ができる車種で、この状態ですから。買取してもらえるとは思っていませんでした」とはオーナー様のお言葉。
なんでもオーナー様は、ちょっと変わったカスタム車両を作ってみたかったそうで、フレームとエンジンありで5,000円という安さからこのXV750Eを購入してレストアを始めたとのこと。
ただし、不人気車ゆえの悲しさで、社外タンク等が皆無であり、1年近くも手つかずのままだったそうです。
「次はもう少し他車流用が利くバイクをベースにしたいですね」と今後のご予定をお話し頂き、希少車の個人レストアの難しさをお教えくださりました。
XV750シリーズ 査定相場の比較
XV750Eの流通台数が非常に少ないこともあり、母数を増やして相場の傾向をより把握できるよう、XV750シリーズの相場を比較してみます。
- ▼XV750シリーズ
- XV750スペシャル 1981年~ フレ番5E5 アメリカン
- XV750E 1982年~ フレ番5K0 ヨーロピアン
- XV750ビラーゴ 1984年~ フレ番55R アメリカン
ビラーゴの通り名でヒットを飛ばしたXV400とXV250とは異なり、XV750ビラーゴはマイナーな存在であり前身モデルのXV750SpecialとXV750Eはさらにレアな存在で中古市場でも非常に流通の少ない車種です。
以下、買取業界の値付けの指標である、業者間市場での取引データを基に、XV750シリーズの買取相場をご案内差し上げます。
実働車|XV750シリーズの査定相場比較 |
車種/ 落札価格帯 |
XV750 Special |
XV750 E |
XV750 ビラーゴ |
平均落札額 |
8.1万円 |
10.2万円 |
7.6万円 |
最高落札額 |
10.4万円 |
10.2万円 |
13.4万円 |
取引台数 |
4台 |
1台 |
22台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去2年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
実働車の平均買取額は5~6万円
XV750ビラーゴの前身モデルである、XV750SpecialとXV750Eの取引数の少なさが際立っています。
2年間で数台の取引ですのでかなりのレア車であることが分かりますが、2年間で22台取引されているXV750ビラーゴの取引金額と近似していることから、レア車という事でのプレミアムは無いことが分かります。
XV750シリーズは、平均で8万円程度の金額で取引されています。
業者間市場で8万円平均で取引されているという事から、業者の買取金額を逆算すると5~6万円程度になります。その理由は、市場での売却想定額から運送費や出品手数料などの経費と業者の儲けを差引く必要があるためです。
最高額の13.4万円で取引(販売店に落札)された車両は1984年式としては極上と呼べる状態ですので、ノーマルに近いXV750シリーズの買取上限額は10万円台前半といえるでしょう。
ただし、フルカスタムとなると仕様によっては数十万円に跳ね上がることもあります。
事故車・不動車|XV750シリーズの査定相場比較 |
車種/ 落札価格帯 |
XV750 Special |
XV750 E |
XV750 ビラーゴ |
平均落札額 |
4.9万円 |
6.1万円 |
4.5万円 |
最高落札額 |
4.9万円 |
6.6万円 |
7.7万円 |
取引台数 |
1台 |
5台 |
13台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去2年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
事故車や不動車の平均査定額は2~3万円程度
実働車の相場と大きな差異がなく、平均での取引額は5万円弱となっています。
年季の字入った大型の車種に時々見られる傾向で、実働車も不動車も手を入れる工数に大差がないこと、そして取引されている金額が小さいために実働車と不動車での取引価格に大きな差異が発生しない事が理由です。
上記で過去2年間で取引された13台は全て不動車です。
完品でレストアベースとなる可能性が高いXV750シリーズの不動車は、お値段がついて買取対象となります。買取金額は実働化へ向けたコストと実働化後の価値によって数千円~数万円の相場となっています。
事故車についてはフレームに損傷がある場合はレストアのベース車とならないことからお値段は付かず無料での引き取りに。
再使用できるパーツが殆どない全損事故車の場合には費用を頂戴しての処分回収になると思われます。
完品の不動車であれば高額査定は望めないもののお値段が付くのがXV750シリーズの相場の特徴と言えます。
XV750E豆知識
1982年に登場し、XV750スペシャルに搭載されていた国産初の横置きVツインエンジンを採用して登場したXV750E。
この1980年代前半はのちに「HY戦争」と呼ばれた熾烈な販売競争が繰り広げられていたこともあり、CB750Fを意識したヨーロピアンスタイルのXV750Eが誕生したのはある意味「お約束」の流れでしたが、 ハイスペックブームの流れにはそぐわず、マイナーチェンジもないまま生産を終えてしまいました。
XV750E
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近24ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 1台
- 平均価格: 102,000円
- 最高価格: 102,000円
- 最低価格: 102,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 1台
- 平均価格: 49,000円
- 最高価格: 49,000円
- 最低価格: 49,000円
相場情報:2018年1月13日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。