King Of Harleyの称号を受け継いできたツーリングファミリーのウルトラ シリーズをトライク化したことで、ハーレー史上 最重量かつCVOを除くと最も高額な市販機としてリリースされたFLHTCUTG トライグライドウルトラ。
本機がラインナップに加わったのは本国USでは2009年モデル、日本向けには2014年モデルのこと。
古くは1931年に誕生した運搬用途のサービカーがハーレー3輪バイクのルーツとなりますが、荷台を牽引しない現代のトライクファミリーの始祖となったのは本機です。
登場当初はTwinCam103エンジン(1689cc)を搭載していましたが、現行2023年モデルではMilwaukee-eight114エンジン(1868cc)へアップグレードを果たしています。
CVOの117エンジン(1923cc)を含めると既に4つの排気量が展開されるシリーズ機となっていますが、はたして排気量によって買取率は異なるのでしょうか?
業者間オークション(年間に約20万台のバイクが取引される業者間市場)の取引データを使用して、国内向けにリリースされたトライクファミリーの3機種についても合わせて比較してみましょう。
ハーレー 【トライク】シリーズの参考買取率比較 |
|
参考買取率 |
平均落札額 |
取引台数 |
新車価格 |
トライグライド 103 |
64% |
249万円 |
11台 |
388万円 |
107 |
81% |
332万円 |
6台 |
406万円 |
114 |
69% |
302万円 |
6台 |
434万円 |
CVO 117 |
- |
- |
0台 |
580万円 |
フリーウィーラー 107 |
66% |
220万円 |
5台 |
331万円 |
114 |
79% |
279万円 |
1台 |
349万円 |
ロードグライド3 |
- |
- |
0台 |
415万円 |
業者間オークションの取引履歴を2023年9月時点で★12ヵ月間遡った数字
業者間オークションとは、販売業者の最大の仕入れ先であり買取業者の最大の転売先として年間に約20万台のバイクが取引される市場です
新車価格は、各排気量における日本市場登場イヤーモデルのベースカラーで千円単位は四捨五入
価格はすべて税抜き表示
上記は、縦軸では国内向けにリリースされたトライクシリーズを排気量で区分し、横軸で業者間での取引額と台数そしてメーカー希望小売価格を比較した表です。
参考買取率とは「業者間オークションでの平均落札額÷新車価格」で計算した数字で、数字が大きいほどリセールバリューが高く、例えば105%は、新車価格よりも5%高い値段で中古車が(業者間で)取引されていることを意味します。
業者間の取引額で比較すれば新車価格が高い機種が有利となりますが、買取率で比較すれば新車価格の差に捕らわれず中古の人気に即した純粋なリセールバリューが浮き彫りになります。
参考買取率を比較する前に、トライクファミリーの各機種のキャラクターと排気量についてザっと補足いたしますと、
・King of Harleyことウルトラがベースのトライグライド ウルトラ。
・ツーリングファミリーの尖ったミドルグレード機ロードグライド ベースのロードグライド3。
・扱いやすさとカスタム感を強調したソフテイルファミリー ルックスのフリーウィーラー 。
(本国USではストリートグライドのトライク機としてFLHXXXも2010~11年に展開されていました)
の3機種で上からグレード(販売価格)が高い順となっています。
排気量は、2016年以前のTwinCam103(1689cc)、そして2017年以降のMilwaukee-Eightでは107(1745cc)、114(1868cc)、117(1923cc)が展開されています。
CVOを含めるとトライグライドが唯一 全排気量でリリースされていますが、後発のフリーウィーラーは107 ciと114 ci、最後発のロードグライド3は114 ciのみの展開となっています。
さて、上記表の参考買取率を比較すると、最も高いのはセオリーを覆してトライグライド107(2017~18年モデル)です。
予想では、より高年式の高排気量モデルである現行の114 ci(2019年~現行)の買取率が高いと踏んでいたのですが、業者間の平均落札額で比較しても前型式のトライグライド107が高いのは驚きです。
しかし、フリーウィーラーでは、107 ci(2017~18年)より現行114 ciの方が買取率の高い順当な結果となっています。
グレードは違うものの、トライグライドとフリーウィーラーでリセールバリューに大きな差が出ていないことも分かります。
2023年に展開されたばかりのロードグライド3(114 ci)、そしてハーレー史上最高額の市販機としてリリースされたCVOトライグライドは未だ業者間オークションで取引が記録されていませんが、 近年のインフレによるメーカー希望小売価格の急激な値上がりに対して、買取率(日本の中古相場)が連動していくのか買取業者は注視しています。
非常に残念ながら、今回買取致しましたFLHTCUTG 114はハーレートライクシリーズの中で突出した買取率を露呈するには至りませんでした。
1つ前の型式(排気量)であるFLHTCUTG 107に買取率で後塵を拝する結果となったのは上述の通りですが、その理由として以下3点が挙げられます。
・走行距離の多い個体比率が高かった
・カスタムによって取引額が伸びた個体が無かった
・人気カラーであるブラックの個体率が低かった
同一車種において業者間の取引額を決定づけるのは、「年式・型式」と「状態」が基本的な2大要素ですが、取引台数が少ないだけに上記の要因が積み重なって捻じれ現象が発生したと見ることが出来ます。
本題であるFLHTCUTG 114の相場に焦点を当ててみましょう。
右欄下段一番下の表をご覧ください。
直近2年間に業者間で取引された11台のトライグライドウルトラ114について落札額の高い順に並べたものです。
横軸では、査定額に影響する、評価点・走行距離・カラーなどを比較しています。
取引の最高額は361万円、最低額は206万円と大きな差があり、相場を読み難いものにしています。
しかし評価点・走行距離・カラーに着目すると以下の傾向が見えてきます。
トライグライド114【カラー別】業者間での落札額 |
|
平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
ブラック |
324万円 |
361万円 |
281万円 |
5台 |
レッド |
298万円 |
335万円 |
258万円 |
3台 |
オレンジ |
258万円 |
310万円 |
206万円 |
2台 |
グリーン |
314万円 |
314万円 |
314万円 |
1台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年9月時点で★24ヵ月間遡った数字
カラーリングのオレンジ:スコーチドオレンジ/ブラックデニム。グリーン:キネティックグリーン。レッド:トゥイステッドチェリー
カラーリングではベースカラー(最安値)となるビビッドブラックですが、人気は多くのハーレーの機種と同様にナンバー1です。 伴って相場も最も高くなっています。
右欄下段一番下の表、で7番目の落札額として記録されているオレンジの個体は、距離も非常に浅く評価も最高得点を記録していながら、落札額が低いのは カラーリングの影響が大きいと見られます。よって同一の評価点と走行距離であれば、人気カラーであるブラックの相場が高いと見て取れます。
トライグライド114【評価点別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
6点以上 極上車 |
325万円 |
335万円 |
310万円 |
4台 |
5点 良好車 |
316万円 |
361万円 |
281万円 |
5台 |
4点 難や使用感有 |
232万円 |
258万円 |
206万円 |
2台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年9月時点で★24ヵ月間遡った数字
評価点を切り口にして平均落札額に着目すると、コンディションが良い車両ほど高額取引に繋がっている傾向が鮮明に出ています。
トライグライド114【走行距離別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
0.2万km未満 |
326万円 |
361万円 |
301万円 |
5台 |
0.2~1万km |
294万円 |
331万円 |
258万円 |
2台 |
1万km超 |
281万円 |
314万円 |
206万円 |
4台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年9月時点で★24ヵ月間遡った数字
走行距離を切り口にして平均落札額に着目すると、低走行の個体ほど高額落札に繋がる傾向が明らかになります。
トライグライド114【イヤーモデル別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
2019年型 |
281万円 |
331万円 |
206万円 |
5台 |
2020年型 |
313万円 |
335万円 |
281万円 |
4台 |
2021年型 |
342万円 |
361万円 |
323万円 |
2台 |
2022年~ |
- |
- |
- |
0台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年9月時点で★24ヵ月間遡った数字
2019年モデルで114キュービックインチ(1868cc)に排気量がアップグレードされたFLHTCUTG トライグライドウルトラ。 2023年現行モデルまで同一排気量でイヤーモデルを更新していますが、メーカー希望小売価格は毎年上り続け5年間で見ると税抜50万円超の値上がりしています。
基本的にはカラーチェンジで毎年のアップデートを重ねてきた本機ですが、最大の変更点は2020年モデルで新たな電子制御機構としてRDRSが採用された点です。
イヤーモデルを切り口にして平均落札額に着目すると、新車の値上がりに準じて業者間の平均取引額も高いことが如実に表れています。
オークションの性質上、需給によって値段が跳ねることも跳ねないこともあり、機械で計ったように正確な仕分けは出来ませんが、上記の傾向を纏めると下記のようになります。
- ▼業者間での取引額傾向
- 320万円以上の5台
走行距離が数千キロ未満と浅く、評価が極上以上で、ブラック、そして20年モデル以降の個体が中心
- 300~310万円台の3台
上記に準じるコンディションでブラック以外の個体が中心
- 200~290万円台の3台
走行距離2万キロを超える個体、若しくは車体に難がある、19年モデルの個体
- ★(買取業者のリスク回避思考で見ると、オークション需給による値段の跳ねを排除すると、相場上限は330万円)
上記の傾向に加筆させて頂きたい点としてカスタムがございます。
と申しますのも、高価な社外品を装着していても、オークションでの評価は純正パーツの欠品として減点が入るため、評価点と落札額が数字だけでは読み取れないケースがあるからです。
例えば落札額4位の個体は走行距離も多く、評価点も低いながら324万円の落札額を付けているのは、カスタム内容が評価された結果です。 査定額が伸びやすいカスタム内容については下段で詳述いたしますが、カスタムも取引額に影響を与える要素として留意しておく必要があります。
もう1点、加筆させて頂きたいのは、業者間で落札された車両の最終的な販売額について。
例えば、330万円で落札し(販売業者が仕入れ)たハーレーの最終的な車両販売価格は、+落札手数料+陸送費+消費税+整備前点検+在庫コスト+販売店の儲けが載り、400~500万円となります。
価格幅が大きいのは店舗によって儲けの上乗せ幅が匙加減で異なるからです。在庫期間も商談時間も非常に長くアフターフォローも必要となる高額ハーレーは、旧車と並んで仕入れ値と販売価格が大きく開く代表ジャンルです。
しかしながら仕入れ相場は、上述の通りある程度定まっています。市価よりも大幅に高い中古ハーレーには販売店のブランドまたは技術力、もしくは大きな儲けが載っているためで買取相場とは別の設定となっています。
僭越ながら弊社横浜店は日本で一番バイクを売っている店舗ですが、お客様からのバックオーダーを受けている稀少車両を除いては、相場以上の値段で仕入れることはございません。
販売価格には大きな開きが存在しますが、どの販売店も事情が無い限り仕入れ相場を無視した高額な価格では買取しないと言う事です。
最後にFLHTCUTG 114 トライグライドウルトラの相場変動について触れさせてください。
右欄下段一番上のグラフは、直近6年間の業者間での取引額推移を示しています。
2018年当初325万円平均であった取引額は、2021年まで新車供給が細り中古バイク相場が上がったコロナバブルの影響もあって横ばいで推移していました。しかしながらコロナバブルが弾けた2022年以降は緩やかな下落基調となっています。
今後はミルウォーキーエイト117エンジンを搭載した新型のリリースが予想されます。また今後も相場が挙げに転じる材料が見当たらないことから売却をご検討であれば、早めの売却が吉となりそうです。
以上の買取相場を踏まえて、今回買取致しました2020年モデル FLHTCUTG 114 トライグライドウルトラの査定内容ついてご紹介させて頂きます。 (尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は96~98%相当となります)