フロントフォークが捩れトップブリッジから離脱しているため前輪が機能せず、1人では押しても動かせなかったGSF750。
ダウンチューブの下に急ごしらえの台車を敷いて、何とか押し引きが出来る状態にして回収いたしました。
車体圧縮されているためテールが上方に跳ね上がり、エンジンには穴が開いている他、車両の至る所に割れ欠けや破損があります。
主要なパーツに再利用できる価値を見いだせなかったため部品取りとしての価値もなく、処分費用を頂戴しての回収となりました。
以下、今回拝見させていただいたスズキ・GSF750の車両詳細となります。
足回り
最初に目に付いたのは、フロントフォークの曲がり。
ラジエーター上部のあたりからフレーム側へと「く」の字に変形し、事故のショックでブレーキパッドが噛んでタイヤすら動かせない有様でした。
トップブリッジのアッパークランプもボルト折れによって外れており、右側フォークは外側へ宙ぶらりん。
査定のために車両を引き起こしたのはいいものの、風が吹く度にグラグラと車両が倒れそうになるほどバランス状態は悪く、足回りに関しては正直に申し上げて絶望的だと言えます。
かろうじて無事だと思われるのはリアホイールくらいでしたが、経年による細かいキズなどが多く、商業的な価値は殆どありません。
外装
転倒した車体左側側面をはじめダメージは甚大。
ガソリンタンクの塗装割れ及びへこみキズも目立ちましたが、タンク固定部にも何らかのダメージを受けたものと見られ、タンクとフレームの変形によってタンク前方がフレームから浮き上がってしまっておりました。
特に後部テールカウルの割れ・欠け・キズ・破損は広範囲に及び、こちらも修復は絶望的。
シートも圧縮された車体によって接合部が外れ離脱したものを運搬で落ちないようにダクトテープっで仮留めしています。
外装に関しては欠品の他・各所に割れや掛けがあり残念ながらこの時点で買取不可という判定に。外装に関しては処分品扱いとなりました。
エンジン周り
事故によって左側下部のクランクケースには路面との接触を示すキズが走り、凸部先端はガリガリと削れ、路面接触の衝撃で穴まで開いてしまっております。
そこからエンジンオイルがダダ漏れしていたそうで、査定時点ではオイルは残っていませんでした。
エンジンヘッドといった各部からのオイル漏れも発生しています。実働車でも10万円強で取引されている車種という事もあり、修復コストを考えると再商品化は不可能な状態。
これではパーツとしてのお値段をつけることが難しく、純正マフラー装着車よりも大きく買取価格を下げる要素となってしまいました。
エンジン全体に及んだダメージの大きさを考えた結果、こちらもパーツ価値は無く処分対象と言わざるを得ません。
フレーム回り
純正ステムが曲がっていたことから、フレームへの深刻なダメージを確信していたものの、やはりフレームも大きなダメージを受けておりました。
直接の接触ではないものの、事故による衝撃で一部ボルト折れが発生していること、ヘルメットホルダーが押し込まれるように歪んでいることから、判定はフレーム全体にダメージありの全損車両である評価に。
外装のチェック時に認められた、全部が浮き上がっているタンク、ボルトから外れて浮き上がったシート、テールに向かって跳ねあがっている車体。そこから導き出される答えも車体の圧縮でありフレームの変形です。
実働車でも業者間市場で10万円強で取引されているGSF750、この状態ではフレームにお値段をつけさせて頂くことはできずこちらも処分対象品の評価に。
電装/保安部品
せめてここだけでも…と、祈るような思いでイグニッションをONにしてみたところ、ランプ類も残念ながら全不灯。
事故時の衝撃でバッテリーも破損してしまったらしく、バッテリーをチェックしてみるとバッテリー液が全て流れ尽くしてしまっていました。
ライトステーがひん曲がってレンズが割れたヘッドライト、割れているめたーカップ、ウィンカーステー折れ、エキパイの変形、サイレンサーの傷凹み、配線の断線と、各所に事故による爪痕があります。
こちらも買取となるパーツはなく、総じて処分対象としての評価に。
蛇足ですが、
実は、業者間市場で3年前に落札歴のある車両(フレーム番号一致)です。当時は4実働車として11万円で落札されていますが、走行距離は3万7千キロでの記録が残っています。査定時点でのメーター表示は4千キロ。
中古車として現オーナー様のお手元に渡るまでの間にメーターの改ざんがあったようです。
その他
ここまでの凄惨な姿になってしまったバイクの場合、買取車両としてお値段をつけさせていただくことは厳しく、マフラー以外ノーマルという状態ながら有償での処分引き取りの形となってしまいました。
再利用できるパーツがあるとしても状態の良くない二束三文の消耗品で価値としては計上できない単位でした。、廃車処分と引取り回収費用を埋めて買い取りするには至らず、残念な査定結果となって今しました。<
有償での処分回収となったGSF750全損事故車の総合評価
以上が今回のスズキ・GSF750の査定チェックポイントですが、
▼高額な処分回収費用が必要となった理由を上げさせて頂くと
- タンクが浮き、シートが外れるほど圧縮された車体/フレームの歪み
- 穴が開いているエンジン
- くの字に曲りトップブリッジやステムから離脱しているフロントフォーク
- タンクやカウル・メーターなど割れや欠け・変形が多数みられる
どれも修理コスト20万円~の甚大なダメージです。
車体は圧縮されているうえ、エンジンに穴は開いて、外装は割れ欠けでモロボロ
ここまでのダメージとなってしまうと話は別で、結果的には「買取不可能」という判定となってしまいました。
経年による車体の劣化はもとより、事故によるフロント周りの大破及び外装全体へのダメージは甚大であり、自社工場での再生コストの試算からも買い取りは難しく、 オーナー様には不本意ながら「残念ですが、処分費用を頂いて回収せざるを得ません」と、お断りを入れざるをえませんでした。
仮にGSF750の実働車が実働車で100万円で取引されている車種であれば、エンジンにしても修復コストがパーツ価値以内に収まる可能性はあります。
しかし残念ながらGSF750は実働車でも平均で10万円強で取引されている車種です。1万2千円の処分コストが高いように感じられるかもしれませんが、 完全に価値を喪失したスクラップ車両であり、押しても動かない車体に台車を噛まして引取りさせて頂くコストとしては非常に競争力のある処分費用だと自負しております。
お客様のご感想と、台車を噛ましての引取り処分 後記
「ぎりぎり保管料が発生しないタイミングで回収してくれて助かりました...マンションの駐輪場に運ばれても困るし、やはり一旦は修理工場に預けるしかなくて。」と仰るオーナー様。
保険会社のロードサービスで運ばれたのが車の修理工場でしたが、そこでは『修理不能』の判定。
48時間経過以降はバイク保管料が発生するとのこと。1週間も保管していたらあっという間にそれだけで1万円近く飛んでしまいます。
当社にご連絡頂いたのは保管期限当日のお昼過ぎ、夕刻には修理工場から引取り回収させて頂きました。もちろん廃車手続きは業務の一環で無償対応させて頂きます。
事故した際に、故障した際に必須であり非常に重宝するロードサービス。無償で引き上げて指定の場所まで運んでくれますが、保険会社指定の受け入れ先の工場や修理業者には保管期限があります。
指定工場から更に1回だけお客様の指定する修理工場へ搬送してくれます。GSF750のお客様も写真をメール添付で送ったり電話で状態を説明したりして修理工場を探したそうですが、 どこのバイク店も『修理不可能か、最新型の新車を買った方が安い』との回答。
そこからはいかに安く処分できるかに切り替えてバイク乗りの仲間から当社をご紹介いただいたそうです。
査定結果は有償での処分回収で残念な内容でしたが、GSF750の押し引き出来ない全損事故車の回収費用としては、保管先の修理工場のオーナー様も驚かれていた格安価格であることを付け加えさせて頂きます。
GSF750 査定相場
90年代末期にスズキスポーツネイキッドモデルのバンディットシリーズが生産終了を迎え、その後継モデルとしてデビューしたGSFシリーズでしたが、 その後わずか3年で復活を果たしたことにより、1999年で生産が打ち切られてしまいました。
中古バイク市場でもその悲哀が感じられ、年々相場価格は低下を続けております。
今回ご紹介したGSF750は全損事故車という事で有償での処分回収となりましたが、実働車はもちろん!多少の事故不動車でも価格こそ低調なものの査定価格が付く車種となっています。
中古バイクを業者間で取引する業者間オークション市場での取引データを基に、GSF750状態別の買取相場をご案内差し上げます。
- ▼状態を表す評価点の目安|GSF750
- 評価点4 比較的状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み または若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
GSF750|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
15~19万円 |
3台 |
0台 |
0台 |
10~14万円 |
8台 |
2台 |
1台 |
5~9万円 |
2台 |
4台 |
2台 |
~4万円 |
0台 |
0台 |
7台 |
総落札台数 |
13台 |
6台 |
7台 |
(2017年12月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
全19台というある程度のサンプル数ながら、最高価格は評価点4の18.6万円、最低価格は評価点3の5.2万円。
最大幅が13.4万円しかないという見方もできますが、取引価格分布を見ると全体的にかなり安く、平均よりは良い状態とされる評価点4の中心価格帯が10~14万円、評価点3は5~9万円という点は、買取査定時の大きな目安だと言えます。
続けて、不動車・事故車を意味する「評価点1」の車両の取引データも見て参りましょう。
こちらは直近12ヶ月で全7台と寂しい結果となっており、最高値をつけたフルカスタム状態の不動車で12.2万円、走行距離わずか4,410kmの低走行車が最低価格の3.5万円となっていることからも、スズキ・GSF750の相場価格の下落状態を伺い知ることができます。
これは決してこの1年間だけのものではなく、急落ではなくても毎年ゆるやかに相場価格が低下し、傷みがひどくならないうちに売却するのが得策だと言えます。
GSF750 豆知識
80年代から続くスズキのスポーツ志向ネイキッドとして発売されたバンディットシリーズの後継モデルとして誕生し、1995年にリリースされたスズキ・GSF750。
低回転域の太いトルクと扱いやすいパワーをウリとし、スタンダードな作りの大排気量車として造られたものの、セールス状況は芳しくなく、短命に終わってしまいました。
1998年にバンディットシリーズが復活を遂げた後、翌1999年に販売終了がアナウンスされ、上位グレードであるGSF1200に後を託す形で生産打ち切りを迎えました。
GSF750(フレーム型式MC40)
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 19台
- 平均価格: 114,947円
- 最高価格: 186,000円
- 最低価格: 52,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 7台
- 平均価格: 60,286円
- 最高価格: 122,000円
- 最低価格: 35,000円
相場情報:2017年12月1日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。