レーサーレプリカの特徴である両サイドのセンターカウルが無くメーターが欠落していて一見して事故車と分かるCBR400RR
「実は2回派手な転倒事故を起こしていまして」と転倒歴をお話ししてくれたオーナー様。
5年前の転倒事故によってセンターカウルとアンダーカウルが大破したため、ノンカウルキット装着でネイキッド化して乗り続けられてきたそうですが、 昨年暮れの事故によってフロント周りに大きなダメージを受け、修理するかどうか迷っているうちに2年の月日が経過してしまったそうです。
放置している間にバッテリー上がりとガソリン腐りでエンジンは不動状態となり、錆びや腐食の劣化も目立ち、事故の損傷と放置による劣化によって買取価値が損われていました。
以下、今回査定させていただいたホンダ・CBR400RRのNC29型 事故車 の車両詳細となります。
足回り
トップブリッジ中央のトリム部から始まり、フロントフォーク全体にサビ・腐食が発生。
二度目の事故はフロントから電柱に激突して、フロントフォークは捩れて本来のコシの強さはすっかり失われておりました。
事故時の衝撃でフロントのブレーキキャリパーが外れ落ち、オイルホースでだらりとぶら下がった状態に。
ディスクも全体的なサビと歪みが確認され、かなり年季の入った傷み具合となっております。
右側グリップ・スロットルも故障を直そうと分解したまま放置するうちになくなってしまったそうです。
その他フロントフェンダーの破損欠品と前後タイヤの山のなさといったマイナス要素も大きく、総合的にかなり低めの買取価値となってしまいました。
外装
最初の事故後にカウリングを大破させ、「新品カウルがあまりにも高いのででやむを得ずネイキッド化した」というオーナー様のCBR400RR NC29型。
レーサーレプリカの印象を決定づけるセンターカウルとアンダーカウルの欠品は大きく買取価値を損なっています。
またタンクやテールカウルの外装は艶消しブラックに再塗装されていますが、素人仕事で塗りムラや塗装ハゲが目立ち、この点もパーツの査定価値を大きく損なっています。 シートカウル・テールカウルやシートそのものの傷み具合も酷く、タンクには広範囲のサビが発生。
フロントフェンダーの欠損等を含めた結果、外観の買取価値も低評価に留まってしまいました。
エンジン周り
電装系の切断や損傷によって電源は点かずエンジンはかからず機能的な評価はできませんでしたが、ガソリンの腐り具合から仮に電源が点いたとしてもエンジンは始動しなかったと思われます。
最初の事故時は右側、二度目の事故時は左側へと転倒してしまったそうで、エンジンは左右共に削れている傷が多数。
クランクケース部外周には細長いクラックまで走っており、CBR400RRの中古エンジンとして評価するには少々厳しいと言わざるを得ませんでした。
車体を左右に揺すってみたところ、エンジンオイルが漏れ出したようには思いませんでしたが、エンジン強度に大きな影響を及ぼすクラックの存在は無視し難く、「再販化困難」という形でエンジン自体の査定価値も低評価に。
フレーム回り
フレームは左右共に細かいキズと打痕が多数発生し、フレームのネック部分にシワが寄っており、事故や転倒の衝撃を吸収した痕跡が刻まれていました。
四半世紀近くも前のモデルであるだけに、フレーム表面の腐食・やれが非常に目立ち、致命的な曲がり等はなくとも再販化には少々難ありだと言えます。
その他リアカウルを他車からの流用で装着し、自家加工で本来とは異なる位置に穴が開けられていた点もフレーム剛性に影響を与えるとためマイナスに影響します。
念のために腹下のエンジンマウント部を見てみたところ、こちらもボルトの腐食がかなりきつく劣化が目立ちました。シートレールも後ろから見ると右上がりに曲がっているkとが確認できます。
シワ寄り、穴あけ加工、多数の傷や打痕などの影響でフレームについても買取価値は低く低評価に終わってしまいました。
電装/保安部品
配線の切断や損傷によって電源は点かず電装系の動作は確認できませんでした。
左右両方ともにポキリと折れたウインカー、車体各部から覗く配線内部の露出状態など、そこかしこに劣化・損傷・断線が見受けられ、特にメーター関連の配線類の傷みは酷く、 一部は焦げ付きのようなビニール溶解まであり、電装類もほぼ全交換が必要という判定となりました。
保安パーツを固定しているライトステーやメーターステー等も事故時の衝撃で大きく歪曲しています。
電装・保安部品に関しましては買取価値が無く査定の評価が点かない状態となりました。
その他
右側後方へと大きく伸びたサイレンサーは社外メーカー製でしたが、メーカー不明のものを自家加工で取り付けたものであった上、ロゴ等が存在しなかったためノーブランド扱いに。
加えて排気孔から内側へかけてのサビによる傷みもひどく、中古パーツとして評価するには値しませんでした。
軽く外側から叩いてみた結果、どうやら消音材抜きの改造がされているらしく、車検にはほぼ通りそうにない状態。
劣化や傷が目立つ廉価な社外品である時点で価値はかなり低くなるのですが、尚且つ車検にも通りそうにない状態だと欠品扱いにするしか選択肢がなく、総合的な査定評価をさらに下げてしまう形に。
事故車としての総合評価と買取価格
以上が今回のホンダ・CBR400RR NC29型 事故車の査定チェックポイントですが、二度の事故による車体各部の傷みは激しく、 このままでは車検を通すことができないほど多くのパーツが欠損・欠品状態であるため、非常に厳しい査定評価となってしまいました。
- ▼事故車としても査定価格が伸び悩んだ理由
- 派手な転倒傷が多い上にクラックが入っているエンジン
- センターカウル・アンダーカウル・Fフェンダーの欠品
- 素人仕事で雑に塗装されている再塗装でパーツの価値を下げている
- 走行自体は可能だがパーツ価値を下げたフレームの皺寄り、フォークやシートレールの捩れ
- 改造されて欠品扱いのマフラー
熟練の査定スタッフでも見極めが難しい箇所(フレームの一部へドリルで開けられた穴など)があったため、オーナー様にお断りを入れた上で弊社整備工場のメカニックに動画で状態をチェックしてもらうことに。
その結果「ケアする箇所は多いけど、なんとかなりそう」という回答が得られたため、本部に連絡した上で再利用可能なフレーム・スイングアーム・前後ホイールを中心にパーツ単位で評価。
フレームが再利用できそうなので本来であればレストアベース車に持っていきたいところですが、エンジンやタンク、マフラー、電装系等主要な基幹部品に商業的な再生価値(再生コストが販売価値を上回る)がないため、 フレームなどのパーツ価値の積み上げで査定価格を算出させて頂きました。
その上で50,000円の買取金額オーナー様へご提示させて頂くこととなりました。
お客様のご感想と買取後記
「なんだかんだで20年近く乗ってきましたしね。これだけ値段が付くなら文句無しです」というご同意を頂け、即決にてご成約となったCBR400RR NC29型。
すでに廃車手続きが済んでいたこともあり、査定当日のみでお取引は完結致しました。(廃車手続きがお済でないお客様には、買取業務の一環として無料で廃車手続きを代行いたしております)
「動かせないのでバイク屋に頼んで運んでもらうのが億劫で。もし高額な修理見積もりが出てきても、運んでもらった手前断りにくそうでね。」とはオーナー様談。
迷っているうちに時間の経過とともに劣化して車両価値が低くなるケースを非常に多くお見受けしています。
車両価値の定価だけでなく時間の経過とともに修理コストが高くなることも考えられますので、故障車や事故車はなるべく早く見積もりを取るに限ります。
仮に驚くほど高額な修理見積もりが出た場合は、弊社にご連絡頂ければお預けしているバイク店をはじめどこにでも無料で出張査定にお伺いさせて頂きます。
19987年に登場した初代CBR400RRからわずか3年でバトンを託されたCBR400RR NC29型。
兄貴分である「ファイヤーブレード」のスタイリングを継承した意欲作ながら、すでにレーサーレプリカブームは終焉を迎えており、完成度の高さの割には不遇を囲った車種だと言えます。
それでもその完成度の高さは紛れもない「本物」であり、今日現在でも第一線で戦える一級品のスペックの持ち主。
中古バイク市場でもまだまだ評価は高く、出品されれば必ずそれなりの価格がつく車種として広く認知されております。
以下、業者間取引(オークション)におけるホンダ・CBR400RRの取引データです。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|CBR400RR
- 評価点4 年式並み・やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み未満で難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
NC29型|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
40万円台 |
1台 |
0台 |
0台 |
30万円台 |
8台 |
1台 |
0台 |
20万円台 |
15台 |
0台 |
0台 |
10万円台 |
5台 |
10台 |
5台 |
9万円以下 |
0台 |
0台 |
4台 |
総落札台数 |
29台 |
11台 |
9台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
実働車は直近12カ月間で40台の後期NC29型のCBR400RRが取引されていて、最高値はフルノーマルで全40台中最も総合得点の高かった総合評価は4+の車両の40万円。最安値は全ての項目が3点だった最低評価の車両で12万円。
全体を見ても評価点と取引価格が比例している傾向が強い相場となっています。評価点3の車両は10万円台に集中し、評価点4の車両は20~30万円台の取引が中心となっています。
このことから査定現場での買取価格は、(上記の取引価格から『出品手数料や運送費の経費』と『業者の儲け』を差引いた額となりますので)評価点4の車両で10万円台後半~20万円台半ばが中心となり、評価点3の車両は10万円前後が起点 となることが相場データから読み取れます。
続いて、事故車や不動車を表す評価点1の車両の取引データを見ていくと、4.5万円~16.2万円のやや狭いレンジで9台が取引されています。
10万円以上で取引されている車両は単純な不動車や、一部パーツが欠損している不動車が中心で、比較的安価な工数で実働化できる車両となっています。
10万円未満で取引されている車両は外装の損傷や傷みが目立ち、レストアベースとなるかパーツ取りとなるか微妙な状態の車両となっています。
上記の相場からも、手前味噌で恐縮ですが今回のパーツ取りとなる事故車の買取価格が非常に競争力のあることはご理解して頂けると存じます。
年式モデル別の買取相場
- ▼▼年式モデル変遷|CBR400RR
- 1998年 NC23
- 1990年 NC29-100~
- 1992年 NC29-105~
- 1993年 NC29-110~
NC23とNC29の実働車|年式モデル別の査定相場比較 |
年式/ 落札価格帯 |
NC23 1998年 |
NC29 1990年 |
NC29 1992年 |
NC29 1993年 |
40万円台 |
0台 |
1台 |
0台 |
0台 |
30万円台 |
1台 |
3台 |
2台 |
4台 |
20万円台 |
2台 |
6台 |
4台 |
5台 |
10万円台 |
5台 |
4台 |
5台 |
6台 |
9万円以下 |
1台 |
0台 |
0台 |
0台 |
平均落札額 |
18.1万円 |
26.5円 |
21.6円 |
23.8円 |
総落札台数 |
9台 |
14台 |
11台 |
15台 |
(2018年1月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
前期のNC23型よりも後期のNC29型の相場が高いことが分かります。
NC29型についてはサンプル数が少ないもののパワーダウンした1993年モデルも相場差は殆どなく年式モデルよりも車両の状態による評価が査定価格に及ぼす影響が大きいことが分かります。
CBR400RRのご売却や査定のご相談はお気軽に当社までお申し付けくださいませ。
CBR400RR【NC29型|1990~94年式】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 40台
- 平均価格: 241,600円
- 最高価格: 400,000円
- 最低価格: 112,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 9台
- 平均価格: 101,000円
- 最高価格: 162,000円
- 最低価格: 45,000円
相場情報:2017年12月11日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。