買取させていただきましたのは2006年式のキャブレターモデルのXT250X。
実は海水に水没した不動車です。
「砂浜を走行中に海に注いでいる川に嵌って抜け出せなくなった」そうです。早速査定内容をご紹介させていただきます。
足回り
セローと同じエンジンとフレームに前後17インチロードタイヤを装着したモタード仕様のXT250X。
まずは、オフ車としては足付きの良いセロー250(2005年モデル)よりもさらに2cm低いシート高79cmのシートの跨って前後サスペンションの機能を査定していきます。
錆錆のハンドルに荷重して抜重してフロントサスペンションの沈み込みと戻り具合を見ますが、質感が落ちているようです。
リアサスペンションについてもクッション性が欠けているようで前後ともにヘタリが感じられます。
前後のホイールやスポークには錆びや傷が目立ち、チェーンやスプロケにも錆が目立ちます。
足回りは総じて劣化が進行していて、商業的なパーツ価値は殆ど計上できず買取価値としては非常に低い評価に留まりました。

外装
右サイドのセンターカウルに添付されているデカール(ステッカー)が剥がれ落ちているほか、外装全体に日焼けや色褪せが目立ちます。
往年の艶や輝きは失せたカウル、大きく割れている左センターカウルとフロントフェンダー、大きく避けているシートカバー、傷だらけのアッパーカウルやシートカウルなど。
外装についても商業的なパーツ価値は殆ど計上できず、厳しい査定内容となりました。

エンジン/電装系
セローと同じくクラッチミーティングの領域がワイドで、ビギナーでも扱いやすいアクセルワークが特徴のG340E型のエンジンですが始動しません。 そもそも電源が付きません。ブースターを繋いでみますが無反応。
おそらく海水で電装系若しくはハーネスが傷んだ可能性が疑われます。
エンジンについては、確認の仕様がありませんが、
「途中でエンジンは止まったけれど、当初はエンジンが始動したまま横倒しで波に揉まれていた」とのオーナー様のお言葉から推測すると
エアクリーナーから海水を吸い込んだ可能性が濃厚です。
そうなるとレストア自体は可能ですが、商業的には修理コスト倒れの可能性が高く電装系/エンジンともに買取価値は付けられません。

フレーム回り
ウィンカー折れやカウル割れの他に、各所に悪路などで擦ったり転倒したと思われる擦り傷や割れが散見できます。
車体に歪みや大きな衝撃を吸収した痕跡はないか見ていきます。
ハンドルは目視で分かるほど歪んでいます。ハンドルストッパーには曲がりがあり大きな衝撃を吸収したことを物語っています。
続いてフレームの接合部を確認していきますがこちらには目立つ皺寄りなどは確認できません。フレーム自体は錆が目立つものの再利用可能な状態にあり ここまでで一番買取価値の高いパーツとなりました。

総合評価と買取価格
下段の相場情報で詳しくご案内していますが、キャブレターモデル(2006~2007年)のXT250Xの買取相場は、実働車でも平均額が11万円程度。
エンジン焼き付きの不動車となると1万円程度の相場となっています。
今回査定させていただきましたXT250Xは海水水没者車両として駆動系に価値は計上できない他、劣化や損傷によって主要パーツのほとんどで商業的な価値を殆ど見いだせない状態となっていました。
唯一まとまった価値を査定できたのはメインフレーム。そのほかは劣化や損傷に海水水没で二束三文のパーツの集合体といえます。
相場的にはコストを考えると査定金額をお付けするのが難しい状態でしたが、弊社販売店でパーツ価値を最大限に評価させていただいて5,000円で買取させていただきました。
お客様のご感想と買取後記
「砂浜が湿っていて、サーファーもいなくてガラガラだっかたら波打ち際で、押し寄せる波と戯れるように海外線を時速30~40kmくらいで走ってたんだけど」と水没の理由を教えてくれたオーナー様。
「幅5メートルくらいの小川が海に注いでいて、浅く見えたんで突っ切ろうとしたら嵌って抜け出せなくなって水没。」
「波も寄せて引いて、底の砂は凄く柔らかくて、車体を立て直すことさえできず、保険屋のロードサービス呼びました。」
「水が乾けば動くくらいに思っていたんだけど、海水はダメみたいね。」
「保管先のバイク屋さんでも、修理は出来るけど新車を買ったほうが早い。引き取りも買取もできない。と言われて」
「明日から保管料が発生するので、それまでに引き取ってもらえるところを探していたら友達がパッションさんを教えてくれたので。」
「まさか今日の今日で引き取ってくれるとは思いませんでした。廃車手続きまでしてくれて助かります」と当社を読んでいただいた経緯まで教えてくださったオーナー様。
以上査定内容のご紹介となります。
以下からは、相場情報について詳しくご案内させていただきます。
XT250Xはいくらで売れるのか?適正相場
2006年にメーカー希望小売価格48.3万円で売り出されたXT250X。排ガス規制への対応の影響で、2017年モデルをもって生産終了となりました。
2018年現在、中古車の販売価格は29万円程度が平均となっていますXT250X。売却の際はいくらで売れるのでしょうか?
買取業者の査定価格の指標であり、販売業者の仕入れ値であり、つまり日本の中古バイクの相場を決定している業者間オークション市場の取引データを使用して、XT250Xの適切な買取相場をご案内差し上げます。
型式別の買取相場
セローのモタード版であるXT250Xですが、FI化を伴う仕様変更でセローの型式がDG11JからDG17Jに変わった2008年。共通フレームのXT250Xも同様に型式がDG11JからDG17Jに変更されています。
まずは前期型DG11Jと後期型DG17JでXT250Xの買取相場に差はあるのかを見ていきましょう。
XT250X実働車|型式別の取引相場 |
状態/ 落札価格帯 |
前期DG11J |
後期DG17J |
平均取引額 |
14.1万円 |
20.4万円 |
最高取引額 |
24.2万円 |
33.2万円 |
総取引台数 |
54台 |
24台 |
30~34万円 |
0台 |
4台 |
25~29万円 |
0台 |
1台 |
20~24万円 |
2台 |
6台 |
15~19万円 |
18台 |
8台 |
10~14万円 |
28台 |
4台 |
5~9万円 |
6台 |
1台 |
(2018年5月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
後期DG17J型の方が約10万円高く売れる
販売期間が4倍ほど長いDG17J型XT250Xに比べて、販売期間が僅か2年の前期DG11J型XT250Xの方が倍以上多く取引されている点がまず驚きですが、
このあたりもセローの再生産が確実視されている一方で、XT250Xが再生産されないことが確実視されている理由にもなっているのかなどと余談はさておいて、
平均取引額が前期型と後期額で10万円も異なる点は見逃せません。
上記は、買取業者が買取したオートバイを売却する市場での取引額です。市場の取引額は業者が査定額を判断する前提指標ですから、査定現場での買取額も後期型の方が平均すると10万円高いと言えます。
250ccクラスの場合、査定現場での買取額は、業者間市場の想定取引額から3万円程度を差し引いた額がが適正といえます。
3万円の内訳は、業者の経費(出品手数料や運送費)と儲けです。内訳を見れば3万円が競争力のある金額だとご納得していただけるかと存じます。
3万円を差し引いた型式別の平均買取相場は下記のようになります。
- ▼型式別の平均買取相場|XT250X
- 2007年モデル以前のDG11Jは11万円程度
- 2008年モデル以降のDG17Jは21万円程度
状態別の買取相場|前期DG11J
続いて、今回買取させていただきましたXT250Xの型式と同じDG11Jについてより詳しく、状態別の買取相場を見てみましょう。
- ▼状態を表す評価点の目安|前期DG11JのXT250X
- 評価点5 状態が良く綺麗
- 評価点4 年式並み・やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み未満で難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
前期型DG11JのXT250X|評価点別の取引相場 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
20~24万円 |
1台 |
1台 |
0台 |
0台 |
15~19万円 |
2台 |
15台 |
1台 |
0台 |
10~14万円 |
0台 |
27台 |
1台 |
2台 |
5~9万円 |
0台 |
4台 |
2台 |
2台 |
0~4万円 |
0台 |
0台 |
0台 |
1台 |
(2018年5月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)

実働車の買取ボリュームゾーンは7~17万円
直近1年間では、XT250X(前期型DG11J)の実働車は51台取引されました。
状態を示す評価点に着目すると、全51台のうち9割強に相当する47台が評価点4の車両です。
また取引金額に着目すると、全51台のうち9割弱に相当する46台が10万円台で取引されています。
このことは、仮にお客様のXT250Xが業者に買取された場合、その車両が業者間市場で取引される金額が10万円台である可能性が9割弱であることを示しています。
業者間市場で10万円台で取引が想定されるXT250Xの買取額は、(上段で申し上げました市場取引額マイナス3万円=250ccの適切な買取相場)7~17万円となります。
上段で申し上げた11万円が平均買取相場となっていますので、11万円を基準に状態によって4~5万円程度上下する買取相場となっています。
状態の良い評価点5の個体は3台ありますが、18.8万円、19.8万円、23.6万円で取引されていますので、評価点で5点が付くXT250Xの買取額は概ね16~20万円台といえるでしょう。
状態別の買取相場を整理すると下記のようになります。
- ▼状態別の買取相場|(前期型DG11J)XT250X
- 評価点5の良好車~極上車は16~20万円台
- 評価点4の年式並~良好車は7~17万円
- 評価点3の難あり車は4~12万円
不動車の買取相場は修理コストに応じて数万円~10万円
事故車や不動車を示す評価点1のXT250X(前期型DG11J)は直近1年間に5台が取引されています。
タフなマシン設計であるオフ車ベースであるXT250Xは故障したり不動化する割合が低く、オンロードでかっ飛ばす利用性向も少ないことが影響して事故車や不動車の割合が少ないとです。
オンロードで高速を志向するマシンほど事故車の割合が高く、旧型のマシンほど不動車の割合が増える傾向があります。
さて取引された5台のXT250Xを見ていくと、最低額の4.2万円で取引された個体は目立た外傷はなくやや劣化の強い不動車です。取引金額から重度のエンジン故障を抱えていると思われます。
ブービーの8.8万円で取引された個体は足回りの錆びと外装の日焼けが目立ちますが再開の個体よりは見た感じは商業的にも再生できそうな雰囲気が写真から感じられます。
9.5万円で取引された車両はエンジン始動と記載されているので事故車と推測できますが、写真からは損傷個所が分かりません、微妙にフロントフォークが歪んでいる可能性が高そうです。
10万円台で取引された個体は実働車に準じる取引額となっていますので、キャブ/タンク洗浄やプラグ交換によって実働化した後の価値を織り込んで取引されているようです。
以上の取引データを踏まえると、エンジン焼き付きなど重度な故障があると1万円程度から、逆にキャブ洗浄やプラグ交換などで実働化する場合は実働化の価値に応じて10万円台の査定額もあります。
踏まえて不動車の買取相場は修理コストに応じて数万円~10万円といえるでしょう。
走行距離別の買取相場|前期DG11J
続いて、走行距離別の買取相場を見てみましょう。こちらも前期DG11J型のデータです。
前期型DG11JのXT250X|走行距離別の取引相場 |
状態/ 落札価格帯 |
~1万km |
~3万km |
~5万km |
5万超 |
20~24万円 |
2台 |
0台 |
0台 |
0台 |
15~19万円 |
8台 |
9台 |
1台 |
0台 |
10~14万円 |
1台 |
10台 |
10台 |
7台 |
5~9万円 |
0台 |
1台 |
1台 |
3台 |
(2018年5月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
走行距離3万キロが買取相場の分岐点
例外も見受けられますが、傾向としてはXT250Xは低走行=高額取引といえます。
走行距離が1万キロ未満の低走行車は15万円以上の取引が集中しているのに対して、走行距離5万km超の多走行車は14万円未満で取引されています。
また走行距離が3万キロを超えてくると15万円以上で取引される可能性は極端に低くなることも見て取れます。
以上、『型式』、『状態』、『走行距離』べつにXT250Xの相場をご案内してまいりました。
まずは『型式』による平均買取相場を抑える。
その次に『状態』と『走行距離』別の相場を加味することで、お客様が保有されているXT250Xの買取相場はより絞られた適正金額となるでしょう。
売却の際のご参考にしていただけましたら幸いです。
セロー vs XT250X 相場比較 |キャブモデル(DG11J)
エンジンもフレームの型式も同じセロー250とXT250X。
2005年に発売されたセロー250の翌2016年に発売されたXT250Xですが、メーカー希望小売価格は同一の46.2万円。
2008年に時を同じくFI化された型式変更からもわかるように共通仕様車です。
最も大きな違いはグラフィック/カラーリングの他に、オンロードタイヤを履いたモタード仕様か、オフロードタイヤを履いたオフロード仕様かという点。
メーター類をはじめほとんどの部品が共通化されていた両社のキャブモデル(DG11J)に買取相場に差はあるのでしょうか?検証してみましょう。
セロー vs XT250X 相場比較 |キャブモデル(DG11J) |
車種/ 落札価格帯 |
XT250X DG11J |
セロー250 DG11J |
XT250X DG17J |
セロー250 DG17J |
平均取引額 |
14.1万円 |
16.6万円 |
20.4万円 |
30.2万円 |
最高取引額 |
24.2万円 |
30.0万円 |
33.2万円 |
47.2万円 |
総取引台数 |
54台 |
101台 |
24台 |
319台 |
(2018年5月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
DG17J型Fiモデルはセローに大差をつけられたXT250Xですが、
キャブモデル(DG11J)については、相場が落ちにくいオフロード車の中でも、底堅い車種の代表格であるセローと近似した相場であるXT250X。
今後も堅調な相場を維持していくと思われますが、2019年モデルのセロー250の復活などもあり、今後は上昇に転じることは予想しずらく緩やかにですが下降していくことが予想されます。
売却をお考えのオーナー様にとっては売り時といえるでしょう
XT250X【2006年式DG11J型+2008年式DG17G】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 78台
- 平均価格: 160,603円
- 最高価格: 332,000円
- 最低価格: 72,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 5台
- 平均価格: 96,600円
- 最高価格: 142,000円
- 最低価格: 42,000円
相場情報:2018年5月20日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。