「ガタの来ている旧車を売りたい」というご依頼を頂戴して、査定させて頂いたのは北米モデルのZ550FX。
全体的にくたびれ感が色濃く出ており、かろうじてエンジンの始動は確認できるものの直ぐにエンストを繰り返し実働状態にはない不動車でした。
以下、今回拝見させていただいたカワサキ・Z550FXの車両詳細となります。
足回り
まずはZ550FXのフロントの状態確認から、とハンドルに加重してみたところ、返ってきた弾性はかなり弱く、フォークオイルの交換を含め要オーバーホール判定。
フォーク全体にサビ・キズ・やれが目立ち、一部の塗装剥離と銀シール固着も。
リアサスも広範囲のサビでかなりの傷み具合で、こちらも判定は要オーバーホール。
欠品となっているバーエンド、チェーンケース
曲がっているハンドル、引き摺っていて動かすと鳴くブレーキの消耗、ディスクローターのサビ・磨耗を始め、ひび割れを起こしているタイヤなど買取査定評価は少々辛めの結果に。

外装
オールペンを施していますが、塗りムラが多く仕上がりが良くないうえに塗装ハゲも目立ち下地の劣化がむき出しになっている箇所が多数あります。
(旧車の買取で有利なのは、状態の良いオリジナル塗装が何と言っても1番。次に下地も良く綺麗なオールペン。そして状態の良くないオールペンと続きます)
当時物のフェンダーやサイドカバー、ガソリンタンクなどオリジナルの原型を保った車両状態でしたが、くたびれ感は相当なもの。
サイドカバーの「Z550」エンブレムが両方とも欠品状態で、外装類は細かいキズと色褪せ・やれ多数。
特にガソリンタンクのカラーリング劣化はかなり進行しており、再販化にあたっては再塗装が必要でした。
フロントフェンダーも細かく深めキズが多数あるのに加え、塗装剥離箇所などを含め本格的なリペア作業を要する状態。
その他、アンコ抜き加工されたシートは、シート表皮こそ破れていないものの、全体的に使用感が強くこちらもやや辛めの評価となりました。

エンジン周り
バッテリーはかなり衰弱しきっていましたが、ブースターを繋いでエンジンはセルにて始動確認OK。ただし2発目と3発目は始動なし
装着されているCRキャブのセッティング不良、保管状況の悪さからアイドリングは安定しておらず、プラグカブリも起こして直ぐにエンストを繰り返す状態。5分ほど粘りましたが状態は改善せず不動判定。
旧車にはよくあることです。エンジンがかからないこと自体は大きなマイナス査定となりません。
エンジン外観も外装同様にかなりの経年劣化を起こしており、所々に曇り・サビ多数。
社外品のKERKER製マフラー装着でしたが、エキパイ接合部からは排気漏れを起こしており、再販化にあたってはガスケット交換などをはじめ、大掛かりなメンテナンスが必要に。

フレーム回り
一部の塗装剥離やサビ・腐食ある他、大きく減点となったのは、ダウンチューブの大きな凹みと割れ穴、シートレールの曲り。大きめの衝撃を物語るフレームの凹みや曲りは大きな減点対象となります
事故歴等は不明ながらエンジン右下のジェネレーターカバーにクラックが走っていることも考慮すると、軽いスリップ転倒程度はありと判断して良いでしょう。
損傷があるとはいえ走行に影響を及ぼすようなダメージではなく価値は低くなるもののレストアベース車両のフレームとして使用できる状態でした。

電装/保安部品
メーターは国内仕様のkm表示に交換されています。実走行距離は不明ですが、車検証に記載されている走行距離は43,100km(4年前時点)であり、走行は4.5万km前後の模様。
また、事故ではないと思われましたが、ヘッドライトに歪みによる隙間が生じており、場合によってはこちらも要交換といったところでしょうか。
その他、ブレーキランプカバーも割れが多く要交換判定。
光量的にも玉切れ寸前といった感じで、こちらも大掛かりな交換作業を要する状態。
ホーンが接触不良なのか作動せず、全体的に難あり。

その他
タンク内の錆びが目立ち、エンジンを実働させても直ぐにキャブ詰まりを誘発させそうな状態。タンク内部の念入りな錆び取りと防腐加工は必須
社外品はCRキャブ&パワーフィルター・KERKERメガホンマフラー・ミラー・メーター・ヘッドライト・ハンドル・レバー・グりップ・リアサスペンション
欠品パーツはエンブレム・チェーンケース・バーエンド
欠品については純粋にマイナス査定に。
高価なマフラーやキャブは、純製品が欠品していてもプラスマイナス0の評価。ヘッドライト・ハンドル・レバー・グりップなど消耗品の社外品は純正品がないことで若干おマイナス査定に

不動車としての総合評価と買取価格
以上が今回のカワサキ・Z550FXの査定チェックポイントですが、車両状態は決して良いものではありませんでした。
▼難点は非常に多いのですがその中でも、大きなマイナ査定となったのは以下の点です。
- 大きな転倒歴の疑い。大きめの衝撃を物語るダウンチューブの大きな凹みと割れ穴、シートレールの曲り
- 車両全体に発生した無数のサビ・キズ・色褪せ・やれ
- 多く塗りムラや剥離の多いオールペン(下地は錆び劣化多い)
- 大掛かりなメンテナンスが必要なエンジン
- 前後サスの減衰圧の低下によるへたり具合
- エンブレム・チェーンケース・バーエンドの欠品
- 廉価な社外品で純正品が欠品しているミラー・メーター・ヘッドライト・ハンドル・レバー・グりップ・リアサスペンション
- 前後タイヤの消耗をはじめとする要交換判定部品の多さ
- キャブ詰まりを誘発させる程のタンク内部の錆び
フレームに損傷があり、実働状態でなく、外装の状態が悪く、欠品や要交換部品も多く、状態としては平均を大きく下回る不動車でしたが、 部品取り用途ではなくレストアできる素材として35万円の査定価格で買取させて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
査定にお伺いする道中、未舗装の林道への誘導路が沢山あり、ダートバイクで進入したい誘惑を抑えるのに苦労した査定員。
「僕も今はオフロード中心です。ここに来たときは6台くらい旧車があったけど、自然の厳しさでどんどん劣化していってしまって。年に1台くらいの割合で旧車は売却してオフ車を買っています」
と仰るZ550FXのオーナー様。実は何度も買取と販売てお世話になっているリピーターのお客様。
「雪や凍結だとどうしようもないけど、それ以外は毎日林道を走っても飽きないね」というオーナー様からお奨めの林道を教えて頂きました。
次の休日にはそこに向かうこと必定の査定員でした。
今回もZ550FXのご売却を誠にありがとうございました。精一杯の査定価格でお応えさせて頂きました。
Z550FXの買取相場の比較
1980年代、「ホンダ・ドリームCB400Four」以来絶えていた400cc4スト4気筒エンジンを復活させ、優れた性能と角Zシリーズならではの男らしい硬派なスタイリングで「覇王」とまで呼ばれたカワサキ・Z400FX。
本機はその海外向けモデルとして、550ccエンジンを搭載した輸出仕様車ですが、わずかながら国内仕様車も販売されておりました。
Z400FXと同一の車体であるため、レストアベース車両に選ばれることも珍しくなく、オリジナルのZ400FXほどではないにせよ、中古バイク市場でも高額で取引されております。
そのような背景を持つZ550FXは車両の状態によってどれくらい査定金額が異なるのか?
買取業者の値付けの前提データとなっている業者間市場での取引価格を基に、状態別の買取相場をご案内差し上げます。
- ▼Z550FX評価点の目安
- 評価点5 極上車
- 評価点4 年式より状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並みまたは若干の難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
評価点別のZ550FXの買取相場の比較 |
評価点/ 落札価格帯 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
60万円台 |
1台 |
0台 |
0台 |
50万円台 |
0台 |
1台 |
0台 |
40万円台 |
1台 |
2台 |
0台 |
30万円台 |
0台 |
1台 |
1台 |
20万円台 |
0台 |
0台 |
1台 |
総落札台数 |
2台 |
4台 |
2台 |
(2017年12月時点で、業者間市場の落札データを過去12か月間間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)

元々の生産台数の少なさと車両価値の高さにより、全6台とデータとしては少ないのですが、最高取引価格60.8万円・最低取引価格33.6万円と外観状態によって2倍近い差が発生しております。
これは車両のポテンシャルによる取引価格の違いです。
エンジンをはじめ、外装の状態などから整備や修復にかかる費用に、整備後に想定される状態と販売価格から取引値が異なります。
ほとんど大がかりな修理やメンテナンスを必要とせず、車両のポテンシャルが良く、オリジナル度が高い。先の2つが旧車で高価買取できる3大条件です。
3大条件に当てはまるほど買取価格が高くなり、業者間での取引価格も高くなり、店頭での販売価格も高くなります。
因みに旧車は、業者間市場での落札価格(販売店の仕入れ値)の約2倍が店頭販売価格となっています。2倍というのは現行車の20%増し程度と比べるとベラボウに高いように思われます。
その理由は、故障が前提であるゆえ保証付き販売に向けた整備にコストがかかる点、なかなか売れず在庫期間が長い点が大きな2つの理由となっています。
話が少しそれたので、Z550FXに戻って、
不動車・事故車を取り扱う「蚤の市(評価点1)」での出品は直近12ヶ月でわずか2台と少なく、基本的には実動に準じる状態まで整備を行うのがセオリーとなっており、再生コストによって買取価格が変動します。
実働車に向けたベース車とならない場合は、再利用可能部品での取引価格となり、買取価格も1段落ちることになります。
再生工場を有していない同業他社の場合、そのコストに尻込みして買取金額の面で冒険できないのが旧車における弱点だと言えますが、 自社整備工場を有し直営店舗での再販売まで行っている弊社パッションでは、今回のZ550FXのように扱いが難しいケースでも難なく対応可能です。
事実、今回のZ550FX不動車の買取も、業者間市場の相場に照らすと赤字になってもおかしくない金額で買取しています。
旧車の買取は事故車や不動車でもぜひ弊社パッションまでご相談をお寄せ頂ければ幸いです。
姉妹車Z FXシリーズの買取事例
Z550FX豆知識
1979年に400cc4スト4気筒エンジン搭載車として、当時の若者を中心に爆発的なセールスを記録したカワサキ・Z550FX。
この車体をベースに輸出使用車のZ500のエンジンをベースとしてボアアップされたものが搭載され、北米・欧州などを中心に販売されました。
日本では当時の免許制度の関係上、それほど多くの台数は販売されなかったものの、旧車ブームにより逆輸入車の形で日本へ再上陸しており、程度の良い車両は店頭販売価格で100万円以上の値付がされています。
Z550FX【1980~1981年モデル】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 6台
- 平均価格: 473,333円
- 最高価格: 608,000円
- 最低価格: 336,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 2台
- 平均価格: 274,500円
- 最高価格: 320,000円
- 最低価格: 229,000円
相場情報:2017年12月23日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。