カワサキの「Z-FX」シリーズと言えば、国内では「CBX400FⅡ」と「ヨンフォア」と並び最も高く売れる中型車「Z400FX」の存在感が突出していると言っても過言ではないだろう。1980年代初頭の大型クラスでは「Z750FX」もカワサキ国内向けモデルのフラッグシップモデルとして、その頭角を現していた。そんな「FX」シリーズの中間排気量モデルにあたるマシンが、本モデル「Z550FX」である。
まずは1980年から海外展開され、後に国内向けの1981年モデルも展開された。
ベースになっているのは、ヨーロッパ向けに開発された「Z500」である。「Z400FX」は、この「Z500」のエンジンを排気量ダウンして国内の免許制度に合わせたマシンで、本モデル「Z500FX」は、「Z500」のエンジンをボアアップしたマシン。つまり、「Z400FX」と「Z550FX」は、同じルーツを持ち車体の基本コンポーネントを共有する兄弟モデルという関係ということ。
車体は、鋼管ダブルクレードル型フレームにDOHC2バルブ空冷4ストローク直列4気筒エンジンを搭載。ボア・ストロークは、58.0mm×52.4mmのショートストロークエンジンで、最高出力は9,000回転54馬力というスペック。トランスミッションは6速リターン式となる。ちなみに海外仕様は9,000回転58馬力のハイパワー仕様だった。また、兄弟モデルとなるビキニカウルを装着する「GZz550」も海外では展開されており、こちらも同じエンジンを搭載しており58馬力というスペックだった。
ライバルモデルとしては、ホンダの「CBX550F/インテグラ」が比較対象になるだろう。206kgの車体に搭載するDOHC4バルブ空冷直列4気筒エンジンは、572ccで本モデルよりも僅かに大きく、最高出力は10,000回転60馬力というスペックだった。
「Z550FX」の足回りは、フロントにインナーチューブ36mm径のテレスコピックフォークに19インチキャストホイールと250mmのダブルディスクブレーキを組合せる。
このフロントブレーキは、仕向け地や年式によってシングルディスク仕様も存在するが、国内向けはダブルだった。
リアはスイングアームにツインショックを装備して18インチホイールとディスクブレーキという設計。こちらもデビューモデルの海外仕様Z550A型はドラム仕様だったが、後のZ550B型でディスク化されたという経緯がある。国内向けはZ550B2型が展開されたので、当初からディスク仕様。
400㏄と同じ車体に550㏄エンジンとフロントダブルディスクブレーキということで、ハイパワーでゆとりのある走りが特徴的だ。
デビュー以降の「Z550FX」は、海外仕様が1980年から83年まで展開されたが、国内向けは80年8月に発売された81年モデルのZ550B型から仕様変更を受けることなくデビューマシンが最終仕様となって生産終了に至った。
なお中古バイク市場では、国内モデルは特に台数が少なく「Z400FX」同様に高額で取引されている。

買替や売る際の買取査定は、Z550FXの中古価値に精通しているバイクパッションに！

解説記事更新日：2022年11月30日

Z550FXは1980年から輸出が開始され、日本国内仕様は1981年式に発売されました。
ベースとなったのは【Z500】で、79年には同じエンジンとボディを使ったベストセラー【Z400FX】も発売されています。つまり550は、同じコンポーネントを使った400とは兄弟車ということになります。リーディングアクスル方式フロントフォークなど同じボディですから、外観の違いはわずかで、サイドカバーとフロントブレーキぐらいのものです。550はダブルディスク、400はシングルディスクです。
国内仕様はZ550B2型となり、B型からリアがディスクとなっています（400もリアディスク）。
スタイリングは70年代のカワサキ製オンロードスポーツの流れをくむもので、直線基調のデザインは【Z750FX】ほどではありませんが男性的な印象を与えます。
エンジンは空冷4ストDOHC並列4気筒で、最大出力54馬力を9,000回転で発生します（海外仕様は58馬力/9,000回転）。
フロントホイールは19インチキャスト、ミッションは6速です。19インチゆえ現代のバイクと比べると「立ちが強い」＝直進性が強い傾向はありますが、操縦性は素直です。リーンウィズで走るのが適しており、2バルブエンジンの特性は穏やかです。車体は400と同じでエンジンパワーはあり、フロントブレーキはダブルディスクですから走りには余裕があります。
さて81年といえば、国内での大型二輪免許取得は超難関、それに合格したライダーがほぼ全員ナナハンに飛びつくのは自然な道理。という状況で、550や650などミドルクラスの売上は芳しくありませんでした。
それはライバルも同様で、81年を振り返るとホンダ【CBX550F/インテグラ】があるぐらいで、車種の選択肢も多くはありません。排気量は違いますがスズキ【GS650G】もあります。
各車の最大出力、最大トルク、車重などのスペックを比較すると、
Z550FX：54馬力/9,000回転、4.8kgf/7,500回転、210kg
CBX550F：60馬力/10,000回転、4.7kgf/8,000回転、206kg
GS650G：65馬力/9,500回転、5.3kgf/8,000回転
そうしたミドルクラス事情のためか、Z550FXは、Z550B型の1世代のみで国内向けは生産が終了しました。中古車市場価格は400とあまり変わりませんが、パワーには余裕があります。「人とはちょっと違うFX」を求めている方にはおすすめの1台です。
Z550FX国内仕様の査定やお乗り換えをお考えの方は、バイクの価値に精通しているパイクパッションへ！

解説記事更新日：2024年04月29日

Z550FXの海外仕様は、国内販売が開始される1年前、1980年に発売されました。ベースとなったのは【Z500】で、ボアを3mm拡大して553ccとしています。主な輸出先は米国と欧州です。
エンジンは空冷4ストDOHC並列4気筒で同じですが、次のようにスペックが違っています（※は国内仕様）。
・最大出力58馬力/9,000回転　※54馬力/9,000回転
・最大トルク48.1Nn/7,000回転　※47.0Nn /7,500回転　
・圧縮比9.5　※9.4
・（1980年のA型のみ）フロントブレーキがシングルディスク　※（国内仕様は全てB型のため）ダブルディスク
・（1980年のA型のみ）リアブレーキがドラム　※（国内仕様は全てB型のため）ディスク
同じボディの【Z400FX】は43馬力ですから、11馬力のアドバンテージは大きいです。カワサキには60年代から70年代にかけて「ザッパー」、「ナナハンキラー」と呼ばれたDOHC4気筒の名車【Z650】がありましたが、550もそれに劣らずハイレベルの走りをしたことが想像できます。
しかし、当時の二輪免許制度は極めて難しく、合格すれば誰もが、最大排気量のナナハンに飛びつきました。それゆえ500～650ccのミドルクラスは不人気でしたが、それとバイク本体の性能はまた別ものです。欧州で最も人気があるのがこのミドルクラスで、十分な低速トルク、回しても楽しめるパワー、ちょうどいい車体の大きさなど、バイクという乗り物として最も優れたバランスにあります。
81年にマイナーチェンジ、カラーリングとグラフィックが変更されています。83年にも同様のマイナーチェンジが行われました。
輸出仕様のため中古車台数は少ないですが、人と違うFXが欲しい方、あるいは大型免許を取った女性にもおすすめできるバイクです。
ライバルは、同じ輸出仕様のホンダ【CBX550F】、ヤマハ【XJ550SECA】があげられます。
スペックを比較すると、
Z550FX　最大出力58馬力/9,000回転　最大トルク48.1Nn/7,000回転、車重210kg
CBX550F　最大出力65馬力/10,000回転　最大トルク49Nn/7,000回転、車重204kg
XJ550SECA　最大出力50馬力/9,000回転　最大トルク41.9Nn/7,500回転、車重205kg
となり、ZはCBとXJの中間のスペックを示しています。
もっとも、バイクの魅力はスペック以外のスタイリングや操縦性にもあるので、どれを選ぶかは個人の好み次第です。
Z550FX海外仕様の査定やお乗り換えをお考えの方は、バイクの価値に精通しているパイクパッションへ！

解説記事更新日：2024年04月29日