東野様のお住まいは、和歌山市の中でも大阪湾を望む漁師町にありました。
南海電鉄の和歌山市駅から加太線へ乗り換えて向かう加太です。
夏は過ぎ去り秋が深まりつつある10月の海と緑が山吹色に色づく中、ドライブ気分で向かわせて頂きました。
この加太地区は、ツーリストトロフィーの名を冠するGB400TTを走らせるには非常に良い風景の街と言えます。
到着時刻は15時前で、漁業関係のお仕事をされているという東野様に到着のご連絡を入れさせて頂くことに。
あいにく出先で予想よりも長引いてしまっているとの事で、先に奥様と会って実車査定を始めて欲しいとの事。
ご指示に従い、呼び鈴を鳴らして奥様にご挨拶と東野様からのご指示を申し上げ、GB400TTの査定を始めさせて頂くことになりました。
買取したGB400TT買取査定のポイントや詳細
約30年前の車両としては、外装状態まずまずといった状態のGB400TTです。
メッキパーツを多くあしらったGB400TTは、これだけ販売開始から年数が経過していると錆による劣化が多くなりがちです。
フロント周りは若干錆が浮き劣化ありの状態ですが、錆による穴あき等はなくまずまずのコンディション。
一見2気筒エンジンか?と思わせるエキパイの作りはGB400TTならではの特徴のひとつです。
フォークブーツから覗くフロントフォークは、若干のオイル漏れあり。
小さな錆がポツポツと浮いており、要メンテナンスの判定です。
エンジンヘッドを始め、エンジン周りは劣化が進んでいます。
擦り傷も数箇所あり、それなりに走りこまれていたことが見て取れます。
シングルスポーツとしてはセル・キック併用という上位モデル仕様のGB400TT。
セル始動の前に、エンジンの状態を確認するためにキックでの始動を試みます。
GB400TTはオートデコンプ採用のため、キックはSRと比べると拍子抜けするほどあっさり踏み込めるのが特徴です。
エンジンは一応始動できる状態でしたが、どうやらカムに異常があるようで乾いた異音がしました。
判定では2に近い3といった評価に。
リアブレーキ周りもご覧の通り程度差のある錆が発生。
ブレーキシューも磨耗しているようで、チェックではリアブレーキの効きがやや甘い状態となっておりました。
反対側のスプロケット部分です。こちらは派手に錆が発生しており、随所に劣化が確認できます。
リアサスは思ったほど目立つ錆がないのが救いですが、判定は少々厳しいものになってしまいました。
チェーンもそろそろ耐久値があやしい状態で、要交換判定とさせて頂くことに。
Rフェンダー・タンデムグリップ等も軽い錆が浮いておりますが、シートは破れもなくまずまずの状態に。
確認のために腰を下ろしてみると、87年で生産を終えたGB400TTとしてはまだ柔らかさを残していました。
一度シート交換をしたようです。
査定終了直前、軽トラックを運転しながらオーナーの東野様がご帰宅。
そのまま倉庫兼用の大きめなガレージに乗り入れてきましたので、遅ればせながらご挨拶をさせて頂きます。
ほぼノーマルのGB400TTでしたが、経年による劣化具合や消耗品の交換が必要な点、エンジンの異音についてのマイナス分により、120,000円で買取させて頂くことに。
エンジンの異音がなければもう少し上の金額をご提示させて頂けたのが残念でした。
「いいバイクだったよ、ありがとう。」 二つ返事で売買契約成立に。
ちょうど査定価格が出せる寸前であったため、間を置かず東野様に査定価格をご提示させて頂けました。
「あぁ、その値段ならいいよ。 すごくいいバイクだった、ありがとう。」
東野様のこの一言で即決売買契約となりました。
奥様が入れてくださったお茶を頂きながらの書類手続き中、東野様とお話していたところ、先週バイク回収業者に一度見てもらったとか。
その際には実動ではあるものの、エンジンの異音で無料引き取りが限界と言われ、お断りしたとの事でした。
ヤマハ SRと比べると、短命で不人気に終わったGB400TTですが、デザインのよさ・性能面では負けておらず良いマシンです。
東野様も「ツーリストトロフィー」の名に惹かれ、89年に新古車として購入。
漁のオフシーズンにちょこちょこと遠乗りを楽しんでおられたそうで、27年の所有歴に幕を下ろすのが名残惜しそうでした。
弊社メカニックによる整備をしっかり行い、次のオーナー様へ楽しんで頂けるよう再生することをお話し、最後は握手でお別れとなりました。
早すぎた「本物」の悲劇 ホンダ GB400TT
ホンダが1883年に発売を開始したGB250クラブマンを始めとするGBシリーズは、国内モデルでは非常に洗練されたデザインの本格的クラシックモデルです。
CB250RSの後継モデルとして設計された生い立ちを持ち、紛れもなくCBファミリーの流れを汲むバイクでしたが、上層部の「時代を逆行した感じがする」という一言でCBの名が与えられませんでした。
GBという名称は「グレートブリテン」という意味で名付けられたというのが定説ですが、他にも様々な意味が込められていたとか。
今となっては不明ですが、非常に高い完成度を持ちながらも涙を飲んだ悲哀のシリーズです。
1983年のGB250クラブマンに遅れること2年後、1985年にGB400TT&GB500TTが誕生しました。
NC20E型エンジンをベースに、空冷4ストロークOHC4バルブエンジンを搭載し、最高出力34psをマーク。
シングル&ネオクラシックと言えばヤマハ SRシリーズが有名ですが、GB400TTはそれよりも7ps以上出力面で優れています。
TTという名称は「ツーリストトロフィー」という意味で名付けられました。
高出力・高回転型のエンジンはSRよりも伸びやかな加速力を発揮し、ツーリストトロフィーの由来が分かります。
GB400TTの乾燥重量はわずか150kgと軽量で、1980年代に販売されたオンロードモデルの中では抜きん出た軽さとなっています。
SRが低速時のトルクを活かした走りを楽しむシングルならば、このGB400TTは軽量と高回転型のエンジンを活かした「攻める走り」を楽しむキャラ性と言えるでしょう。
GB400TT
85~87年まで、わずか3年のみで生産終了を迎えたGB400TT。
レーサーレプリカブームに生まれたことによる悲劇の不人気モデルでしたが、その美しいデザインは本物です。
世が世なら、一世を風靡していてもおかしくない完成度の高さだっただけに残念です。
GB400TTは最初期モデルから30年以上の歳月が経ちましたが、マニアには堪らない一台となっております。
中古車市場ではあまり高価なモデルではなく、むしろネオクラシック入門用車両として手頃な価格で入手可能と言えます。
総生産台数が1万台強と生産台数自体が少なかったこと、長年の歳月による玉数の減少でかなり扱いが減ってきました。
今回の東野様のケースのように、あまり人気が出なかったモデルだから無料引き取り…;というバイク回収業者もいますが、まずは弊社までお気軽にご相談ください。
この悲運のモデル・GB400TTを愛するファンは根強いものがあり、多くの方が程度を問わず探しています。
店頭販売を手がけ、整備力に自信のある弊社ならではの再生で、新しいオーナー様へGB400TTを引き継ぐ手助けをさせて頂いております。
タダ同然の引き取りではなく、しっかりとあなたのGB400TTを査定させて頂き、納得のいく価格をご提示させて頂きます!
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 20台
- 平均価格: 92,200円
- 最高価格: 150,000円
- 最低価格: 46,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 11台
- 平均価格: 65,000円
- 最高価格: 143,000円
- 最低価格: 43,000円
相場情報:2016年11月時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。