「中古でご購入したジャンク車を20年放っておいたら鉄屑のような状態になっていた」と仰るオーナー様。
拝見した実車の第一印象は、写真では伝わらないほど廃れており、まさにスクラップであったBenly C92。
固着によって車両の押し引きはままならず、エンジンの圧縮も無いことから「2万円くらいで処分してほしんだが」とのオーナー様のご要望を受けての査定でしたが、結果として買取対象となった事例です。
査定内容のご紹介に先立って、まずは買取相場からご案内いたします。
Benly C92の買取相場
1953年に誕生したホンダ小排気量車シリーズの元祖とも言うべきベンリィシリーズは
1959年に浅間高原で開催された第2回全日本モータサイクル・クラブマンレースでは、北野元選手が駆るベンリィC90をベースとした車両がチャンピオンに。
50年代当時ではスーパーバイクとしての高い基本性能を持ったマシンであり、今日ではヴィンテージバイクとしてコレクターに愛されています。
販売台数もそれなりの数値を記録したこともあり、今日現在でも好事家達の間ではコレクターアイテムとして認知されており、レストアされた車両が絶版車ミーティングで話題に上るケースも。
構造的にはシンプルなため、手間隙を惜しまなければ実動化までこぎつけることは可能なため、レストアコストが採算に合えば不動車でも充分な査定額で買取できる相場となっています。
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データを見ると。
直近1年間で26台の取引があったBenly C92。
26台の内訳は、7台の実働車と、19台の非実働車(事故不動車)で構成されており、年式柄不動状態の車両の比率が高くなっています。
Benly C92の取引を掘り下げると、実働車の7台のは10.2~21.5万円(平均15.2万円)のレンジで取引されています。
対して不動車・事故車の19台は6.4~31.1万円(平均11.7万円)のレンジで取引されています。
最上位の31.1万円で取引された不動車は、125ccエンジンに載せ替えスクランブラー風にカスタムされていることから、 純粋な(ノーマルに近い)Benly C92としては、実働車の取引は10万円台がボリュームゾーンで、上限は60年以上前の車両としては極上車といえる個体の21.2万円となっています。
対して不動車・事故車は実働化コスト(商品化にかかる修理費用)に応じて、6~9万円台と、10万円台前半が2つのボリュームゾーンが形成されています。
余談ながら、同じく1959年に発売されたCB92はCBシリーズの源流としてプレミアム化しており最終の小売値で300万円を超える値段が付くこともありますが、 残念ながらBenly C92はプレミアム化には至っておらず、カスタムによる伸びしろを除くと上値は20万円台前半で推移しています。
実働車と不動車で取引額が大きく乖離しない点に言及すると、
現代のオートバイと比べ、構造的にはシンプルで手も入り易く修理がし易い点が影響しています。それだけに修理でFIXできるレストアベースの個体は査定額が付きやすい反面、 レストアでは採算乗らないパーツ取りの個体は査定額が伸び悩む傾向があります。
以上の買取相場を踏まえて、ボロボロの鉄屑と見紛う状態であったベンリィC92の査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 (※上記の取引額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、買取相場は9掛け相当となります)
【C92 実働車】相場の推移
【事故車 不動車】業者間の取引価格帯
【C92 実働車】相場の推移
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データ

距離浅の純正メーターは好材料
今回、買取での対応の決め手となった走行距離。
あくまでもメーター読みながら、8836kmという走行距離は非常に浅い部類。
これならば修理コストと相殺してなんとか利益が出せるという判断となった最大の好材料に。

完全にコシがなくなっているものの過去のノウハウで再生見込みが立ったフロント足回り
沈み込みもなく完全にコシがなくなっていたフロント周り。
しかしその他箇所と比べるとサビはそこまで重症ではなく、過去に取り扱ったCB92などでの再生技術を持つ弊社メカニックにも打診したところ、「ギリギリ何とかできるレベルだと思う」という回答が。走行距離の少なさと合わせ、かろうじて弊社メカニックによる修理を経ての再販売化見込みが立ったことが買取での対応の決め手に。

経年による傷みが外観に留まっていた純正マフラーとリアショック
絶版車全般に言えることですが、純正パーツの有無と状態が大きく明暗を分ける車両価値。
現車は全体的に傷みが目立つ状態でしたが、リアショックとマフラーは見た目こそボロボロではあったものの、間近で見るとサビ等は意外に表層止まりのレベル。
荷重してみるとリアサスはぎこちなくも動きがあり、マフラーも穴あき・詰まりはなし。
これならばエンジンや足回りの再生見込みがなくなったとしても、レストア用パーツとして最低限の評価は可能という判定に。

錆びで覆われたエンジン圧縮なしの不動車ながら買取に
屋内保管とは言え約20年もの長期放置によるサビと腐食がひどく、土間からの湿気によって駆動系もサビなどによってミッションとチェーンが凝固してしまった状態。
押し引きチェックすらも困難であったため、倉橋様にお断りを入れさせて頂いた上で台車を使用し、屋外に運び出した上で査定をさせて頂きました。
外観上のサビ類はかなり重度のもので、リアフェンダーの一部にはもう少しで裏側にまで貫通してしまうような箇所もちらほら。
エンジンチェックを試みるも、踏み込もうにもキックペダルが1cmそこそこしか降りず、クランク室かシリンダーになんらかのトラブルを抱えているものと推測できる状態でした。
エンジン外部もかなりサビや腐食が目立ち、再生するにはかなり丁寧なバフがけを要するレベル。決して不可能というレベルではありませんが、現状ではいささか再生見込みは厳しいものでした。
当然のことながら、長期放置により保安部品の動作もできなかったため、電装系は評価対象外としたまま足回りチェックに。フロントは荷重しても全くコシがなく、 かなり手間隙をかける必要があることに疑いようがない状態。
次いでリアサスに荷重してみたところ、ぎこちないながらもそれなりに動き、 穴あきなどが多い純正マフラーもサビはそこまでのレベルではなく、 転倒・事故に起因するような深刻なダメージを受けていないメインフレームなど。完全なスクラップ状態ではないことが発見できました。
再度倉橋様にお断りをさせて頂いた上で各部の写真を撮影し、弊社修理工場のメカニックに相談してみたところ、 「現車を見てみないと何とも言えないけど、画像と感触を聞く限りだと何とかできるかも」という回答が。 この回答により、トータル的に考えると決して高い確率とは言えないものの、弊社メカニックの手を経ての店舗販売できる可能性が出てきたことにより、 買取査定価格3.5万円というお値段をご提示させて頂くこととなりました。
倉橋様も「なんとか2万円くらいまでで処分してくれたら助かる」と仰っていただけに、弊社の査定額に「買ってくれるってことがあるのかね!」と二つ返事でご快諾頂けました。

ベンリィC92
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 7台
- 平均価格: 151,625円
- 最高価格: 215,000円
- 最低価格: 102,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 19台
- 平均価格: 117,474円
- 最高価格: 311,000円
- 最低価格: 64,000円
相場情報:2021年12月25日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。