ムルティストラーダ1200買取査定事例｜走行3万kmの2015年モデル

右記表下記表の一番上は、直近5年間の業者間オークションの取引額＝買取相場の推移です。
ムルティストラーダ1200は2022年に若干の上昇を記録しています。
これは特異な傾向です。中古バイク全体の相場はコロナ禍で新車供給が細った2020年春以降に大きく上昇し2021年間では対3年前比で約5割上昇する異常高騰を記録し、2022年秋以降は反落に転じていますが、その動きとは連動していません。
2023年現在では現行機 V4Sから数えて2世代前の機種ですが、型落ちに伴い相場が下落しやすいDUCATIの現行シリーズとしては堅調以上の動きを示しています。 新車価格比では決して高いリセールバリューとは言えませんが、相場推移の局面からは売り時と言えます。

2003年モデルで新設されたアドベンチャーシリーズ「ムルティストラーダ」においては3代目に位置する1200。
ラインナップ期間は2010～17年で、シリーズ最長のロングセラー機です。そのため買取相場はイヤーモデルで異なります。

【年式別】ムルティストラーダ1200/S の業者間取引額
	平均落札額	最高額	最低額	台数
2010年型	52万円 （50万円）	52万円 （63万円）	52万円 （40万円）	1台 （11台）
2011年型	58万円 （56万円）	58万円 （63万円）	58万円 （50万円）	1台 （3台）
2012年型	（65万円）	（73万円）	（49万円）	（5台）
2013年型	（60万円）	（79万円）	（55万円）	（7台）
2014年型	（47万円）	（60万円）	（35万円）	（1台）
2015年型	66万円 （68万円）	67万円 （71万円）	65万円 （65万円）	2台 （2台）
2016年型	92万円 （68万円）	110万円 （100万円）	76万円 （49万円）	9台 （11台）

上記表は業者間市場で取引があった年式別の落札額を比較した表です。
上段は無印「1200」の数字ですが、台数が少ないため補強材料として上位グレード「S」を下段の（）内に併記しています。
尚、「S」グレードはスーパーバイクシリーズなどにも設定されているDUCATIに共通した上位グレードでサスペンションが豪華仕様となっており無印ベースグレードよりも各イヤーで30～40万円ほど高いメーカー希望小売価格が設定されていました。
「S」の取引台数が圧倒的に多いのは、本機に限らないDUCATIの特徴ですが、新車時の価格差を考えると「S」は割安で「無印」のリセールバリューが高いことが分かります。

平均落札額に着目すると、総じて高年式になるほど高くなっています。これは期間中のアップデートが大きく影響しています。2011年と2013年でマイナーチェンジが入りましたが、25万円の値上げを伴う最大のアップデートが入った2015年モデルを境に特に買取相場が変化しています。
※尚2016年モデルの無印「ムルティストラーダ1200」の相場が突出して高い理由は、（※業者間オークションの仕分けの都合上）上位バリエーションの「エンデューロ」や「パイクスピーク」が含まれていることが大きく影響しています。そのため 上位バリエーションを除いた純「無印」の取引は79万円の1台のみとなっています。

年式とグレード＆バリエーションによって買取相場が異なるムルティストラーダ1200。
続いては、買取致しました「無印」2015年モデルを掘り下げてみましょう。

2015年型 ムルティストラーダ1200の業者間取引額
落札額	評価点	走行距離	カスタム/補足
67万円	5点	0.6万km	オプション少
65万円	5点	0.6万km	ノーマル

上記は直近1年間の業者間オークションで取引された2台の2015年型 ムルティストラーダ1200を落札額順に並べた表です。横項目の評価点・走行距離・カスタムは、同一年式の買取において査定額に占める比重が大きい要素となります。
評価点について補足すると、「6点」は一見すると新車に近い極上車、「5点」は新車と比べると若干の使用感が見られる良好車、「4点」は使用感が認められる他、再販に当たって何らかの補修や特別な整備が必要となる状態です。

取引台数が2台と少なく傾向としては脆弱ですが、走行は0.6万キロと浅く・通常整備で再販に回せる良好判定車が65～67万円で落札されています。
距離がさらに浅く極上に近い個体であればより高い落札額が見込める反面、走行距離が多かったり使用感が強かったりする個体の落札額は下方に振れると見て良いでしょう。
以上の買取相場を踏まえて、以下に買取させて頂いた2015年モデル・ムルティストラーダ1200の査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 （尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額＝販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は93％相当となります）

2015年モデルでフルモデルチェンジを果たしたムルティストラーダ1200。
外装ではシートカウル・アンダーガード・シュラウド・タンクカバー・シート・ヘッドライト・テールランプ・タンデムバー等の形状が変更されていて、アグレッシブ感が増したシルエットとなっています。

オーナー様の愛車は発売から8年が経過している車両としては、レッドの外装の色艶は比較的綺麗な状態を保持しています。
残念であったのは右側タンクシュラウドの外装に、デカールを剥がした際に付いたと傷や、日焼け差の痕が認められる点。 新車と比べると輝きや色艶が若干後退していることもあって極上の6点判定には届きません。若干4点寄りではありますが、それでも良好の5点判定をお付けすることが出来ました。
使用感がやや強めの4点判定と、新車に近い輝きを保持している6点判定では車両の印象が大きく異なり伴って買取価値が変化してきますが、5点判定は8年前の年式ながら大切にケアされるオーナー様が多い高額リッタークラスの外車としては平均的な査定評価と言えます。

搭載しているテスタストレッタDVTエンジンのアップデートによって国内仕様も最大150馬力仕様となった2015年モデル。中味だけでなくクランクケースの形状も変化しています。
先ずは目に見える範囲から査定していきます。15年モデルからジェネレーターカバーのDUCATIロゴがシルバーになっていますが、オイルクーラーホースやエキパイ取付口周辺などの腰下、周辺パーツのラジエーターなどに色艶の退色や軽めの錆びが散見されます。
特にアンダーガードが欠品していることもあってエキパイ中間部のサビが非常に目立ちます。 またエンジンヘッドからオイル滲みが確認できます。微量であり経過観察で済むレベルであり、エンジンの部位としては手の入りやすい箇所とあって減点は軽めですが、症状が進めば要修理となることから軽めの使用感と共に若干買取価値を落としていました。

続いてスイッチハウジングのセルを押下してエンジンを始動させます。
始動は一発。独特のサウンドを響かせて回転するドゥカティLツインのアイドリングは安定し白煙吹きや異音といった不調を示す兆候はありません。 走行モードやDTCといった電子機能もスイッチギアの操作とモニター表示で正常に機能していることが確認できます。吹け上りやシフトチェンジにも違和感はなく機能的には減点対象はありません。
軽めの使用感やオイル漏れが減点対象となり、やや4点寄りではありますがエンジンの査定評価も5点をお付けすることが出来ました。

鋼管トレリスフレームは赤の塗装が施されていますが、これは2015年モデルの目立つ変更点であり同時にフレーム形状が変更されています。また足回りでは同年モデルでホイールのキャスト形状が変更され、コーナリングABSの電子機能が採用されています。

フレーム回りの査定では、ネック周りの塗装剥げや皺・ハンドルストッパーの状態・前後輪のライン・ハンドルの左右切れ角差など買取価値に重大な影響を及ぼす衝撃痕や修正痕の有無を見ていきます。
オーナー様のムルティストラーダ1200には剛性を損なうような瑕疵や修正痕は確認できませんでした。メインフレームは比較的綺麗でしたが小傷や軽い塗装剥げなどが見れれ他、 スイングアームの変色や、ステップやスタンドなど接合周辺部にサビが浮いており細かい減点が入りました。

足回りの査定は、基幹部品であるサスペンションがから見ていきます。48mm径の倒立フォークはオイル漏れこそないもののオイルシールが劣化してひび割れており再販を考えると要交換判定に。細かい傷も散見され買取価値を下げる結果に。
ホイール回りは手の入りにくい細かいパーツが多く、飛び石などを受けやすい箇所とあって使用感が出やすい箇所ですが、チェーン＆スプロケ・ホイール・brembo製キャリパーは比較的綺麗です。

カスタム内容で確実なプラス査定となったのは、マフラーとトップボックスです。
エキゾーストは「スポーツパッケージ」や上位バリエーション「パイクスピーク」に採用されたTermignoni カーボンファイバー スリップを装着で買取価値の向上に寄与しています。
またトップケースはオプション品でありコチラも純プラス査定に。 その他、純正と異なるパーツとして、オプションのホイールリムテープ・社外のナックルガードが入っていますが、ライト付きのガードが若干のプラス査定に。 またアドベンチャー機の特徴を構成するアンダーガードが欠品となっておりエキパイのサビが悪目立ちしていることもあってコチラはマイナス査定になりました。

査定させて頂いた2015年モデル・ムルティストラーダ1200の総合評価は4.8点で、走行2.9万キロです。
上段で触れた業者間オークションに出品した場合、想定される落札額は50万円台後半です。
2015年モデルでは総合評価5点の0.6万キロの落札額が65～67万円の落札額ですから、走行距離が3万キロ近く評価点も劣ると、カスタム内容を織り込んでも56～58万円程度が強気予想です。
上記金額は買取業者にとっては転売額（販売業者にとっては仕入れ額）に相当しますので、出品手数料や運送費などの経費を差し引くと54万円が損益分岐点の買取額となります。

弊社が提示いたしました査定額は60万円。
相場的には赤字確定となる金額を提示できた理由は下記2点です。
・市価よりも安価に極上に近い状態に仕上げられる自社工場の強み
・単店舗ベースでは日本一バイクを売っている弊社直営販売店の存在
「すごく丁寧だったし精一杯の金額であることは伝わりました」とのオーナー様のお言葉を受けて買取のご成約となりました。 今回はムルティストラーダ1200のご売却を誠にありがとうございました。
近々買い替え予定のHAYABUSAを見にご来店して下さるとのことご来店をお待ち申し上げております。ご成約の際には今回の買取を下取り扱いとして車両価格をサービスさせて頂きます。