990㏄の水冷Vツインを採用して2006年モデルから展開されていたKTMの「990 アドベンチャー」シリーズは、当初、無印グレードと上級タイプの「S」モデルという2グレードで展開されてきた。そして最初のマイナーチェンジを受ける2009年のタイミングでラインアップ構成も変更となり従来の「S」タイプに代わって新たな上位グレードが登場。それが本機、「990 アドベンチャー R」だった。

マシンの基本設計はベースモデルと共用しているもののいくつかの専用ディテールが採用されている。主な内容は以下の通り。

・115馬力エンジン
・ロングストロークサスペンション
・ABS非搭載

シャシーはクロモリ鋼管製のトレリスフレームとなる。そこに搭載するパワーユニットは、ボア・ストロークが101㎜×62.4㎜のショートストロークDOHC水冷75度V型2気筒エンジンとなる。フューエルインジェクション仕様の心臓部は、最高出力が8,750回転115馬力というスペック。最大トルクは6,750回転で100Nmを発生する。

足回りはオフロードパーツに定評のあるWP製の大径48mmフルアジャスタブル倒立フォークをフロントに装備して21インチのクロススポークホイールを履く。ブレーキは300mmのダブルディスクにブレンボ製2ピストンキャリパーを組み合わせる。リアはスイングアームにフロント同様フルアジャスタブルのWP製モノショックをセット。プリロードは格納式ノブで簡単に調整できる。ブレーキは240㎜ディスクとブレンボ2ピストンキャリパーという構造。サスペンションストロークは前後共に265㎜確保されているロング仕様。ちなみにベースモデルは210㎜となっていた。無印グレードで標準装備のABSに関しては、本機には装着されなかった。その分マシン重量は2kg軽くなり半乾燥状態で207kgとなっていた。足回りの仕様が異なることから、最低地上高も高く316㎜となっていて、シート高は915㎜もあるので足つきは良くない。オフロードを攻めるための本格的スパルタンなアドベンチャーマシンだ。

比較対象としては、格下排気量となるがトライアンフが2011年に発売した「タイガー 800XC」が候補に挙がるだろう。エンジンはトライアンフお得意の水冷DOHCトリプルで、排気量は800ccとなる。最高出力は9,300回転94馬力で、最大トルクが7,850回転79Nmというスペック。エンジン出力面では断然「990 アドベンチャーR」だが、「タイガー 800 XC」のシート高はロータイプであれば845㎜と低く、日常使いと未舗装路の走行などマルチに使いやすいということで幅広いライダーに扱いやすいモデルだろう。実用性度外視のオフロード走行に特化するなら「990 アドベンチャーR」 ということになる。

なお本機はデビュー以降、目立った仕様変更を受けることなく2012年に排気量アップした「1190 アドベンチャー」シリーズが登場するまで販売された。

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解説記事更新日：2025年01月29日

2009年のKTM「アドベンチャー」カテゴリには、これまでロングストロークサスペンションと専用カラーでオフロード色の強さをアピールしていた「990 アドベンチャー S」に代わって新たな上級グレードが登場。それが本機「990 アドベンチャー R」だった。
デビューモデルとなる2009年式は、以下のカラーリングと価格で販売された。

・「ブラック」　15,498USドル

無印グレードがオレンジとホワイトの2カラーバリエーションを用意していたのに対して、本機は「ブラック」の1カラーのみとなった。価格はベースグレードより100ドル高となっていた。
特徴的なディテールとしては、サスペンションストロークが従来比で55mmロングの265㎜を確保していることだ。最低地上高も300㎜以上あるので本格的な悪路走行といったオフロードで優れた走破性を発揮する。前後サスペンションはWP製のフルアジャスタブル仕様で路面追従性や剛性感に抜かりはないハイパフォーマンスマシンである。
エンジンはサイズこそシリーズ共通の999cc水冷Vツインユニットだが、最高出力は115馬力のハイパワー仕様。ちなみに従来の無印グレードは、本機が登場した2009年モデルでマイナーチェンジが行われ、それまでの98馬力から出力が向上していたが、それでも106馬力にとどまっていた。最大トルクに関しては、100Nmで両グレードとも変わらない。

足回り性能だけでなくエンジンスペックも豪華な新型の上級グレードが設定されたことで、さらなるファンの囲い込みが期待できるだろう。

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解説記事更新日：2025年01月29日

「アドベンチャー」カテゴリの新たなフラッグシップとして前年に登場した本機「990 アドベンチャー R」だが、デビュー2年目となる2010年式はキャリーオーバーでラインアップを継続。北米仕様のカラーリングと価格は以下の通り。

・継続「ブラック」　14,998USドル

カラーバリエーションは引き続きブラックの1タイプのみ。メインフレームのビビッドなオレンジがコントラストの効いたオフロード感を放っている。グラフィックデザインに関しても変更はなく前年通りだが、価格は500ドルの値下がりとなっていた。

パワーユニットはベースグレードより9馬力ハイパワー仕様の999㏄水冷75度V型2気筒ユニットを採用。最高出力は、8,750回転で115馬力を発生する。最大トルクは6,750回転100Nmというスペック。
ロングストロークサスペンションでシート高は915㎜と高いが、ポジション移動しやすいシート形状とコントローラブルなハンドルポジションなので、一旦、跨がってしまえば安定感のあるロングライドが可能だ。
316㎜のグランドクリアランスとブロックパターンタイヤで、未舗装路から悪路まであらゆる路面で優れた走破性を発揮するKTM流のフラッグシップアドベンチャーに仕上がっている。
スパルタンなマシン設計とはいえ、アナログ回転系とデジタルスピード系のコンビメーターや12V電源ソケット、ハザードスイッチを標準装備するなど機能面も抜かりはないのでメイン使いのマシンとしても十分活躍してくれるだろう。

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解説記事更新日：2025年01月29日

2011年のKTM「アドベンチャー」シリーズにはオフロード色が際立つ特別仕様車が設定された。専用のブルーに染められたボディに「DAKAR」のグラフィックが配された「990 アドベンチャー ダカール」。ベースになっているのは、115馬力エンジンを搭載する本機「990 アドベンチャー R」で、専用カラーのほか本国モデルではブロックタイヤD908RRが標準装備となっていた。
「ダカール」仕様が登場したことで2011年の「990 アドベンチャー」シリーズは、無印グレードと本機「R」タイプと合わせてトータル3モデルでラインアップ。
なお「R」モデルに目立ったアップデートポイントはなくキャリーオーバーで継続。以下のカラーリングと価格で販売された。

・継続「ブラック」　14,998USドル

ボディカラーやグラフィック、価格に関しても前年から変更はなかった。ちなみに「ダカール」モデルは15,499ドルで500ドルの価格差となっていた。

一目でKTMと判別できるオレンジでパウダーコートされたクロモリ鋼管製フレームに搭載するエンジンは、999ccのDOHC水冷Vツインユニットとなる。最高出力は8,750回転113.2馬力仕様で、最大トルクは6,750回転で100Nmを発生する。
サスペンショントラベルは前後265㎜を確保したWP製の高性能足回りが採用されている。
制動系統は安心のトリプルディスクにブレンボキャリパーという構造だが、ABSはベースグレードに採用されているのみで「R」タイプは非搭載。
この辺りはクローズドコースの本格的なオフロード走行を想定したマシンゆえのディテールといえる。その分、重量は2kgほど軽くなっていて207㎏だった。

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解説記事更新日：2025年01月29日

前年にスペシャルカラーの「ダカール」が設定されて3モデル構成へラインアップの充実化が進んだ「990 アドベンチャー」だが、2012年式は再びグレード編成が行われた。無印グレードが初のカラーチェンジを受けて前年の「ダカール」カラーを採用。エンジンも115馬力仕様が採用された。そして本機「R」タイプはデビュー時から変わらずのキャリーオーバーで、以下のボディカラーと価格で継続販売された。

・継続「ブラック」　14,999USドル

ボア・ストロークが101㎜×62.4㎜の水冷75度Vツインエンジンは、8,750回転で115馬力を発生する。最大トルクは6,750回転100Nmというスペックだった。ケーヒン製のインジェクションで燃料供給を行う心臓部は2009年のデビュー時から大きなアップデートは実施されていない。
足回りはフロントに48㎜の大径フルアジャスタブル倒立フォークを装備して、リアも同じくフルアジャスタブルのモノショックをスイングアームにセット。マシン左サイドから延びる調整ノブでプリロードを変更可能。隙間から僅かに見えるスプリングもKTMのイメージカラーであるオレンジ仕様で存在感を主張している。メーカーはオフロードパーツで実績のあるWP製が採用された。
スタイリング面では、当時のKTMで広く採用されていた縦型ヘッドライトレンズを採用しているが、「990 アドベンチャー R」は2灯式で実用性重視の設計だった。

なお2009年からシリーズの上級グレードとして展開されてきた本機だが、排気量アップした次世代モデル「1190 アドベンチャー」が2012年に登場したことで、「990 アドベンチャー R」は最終仕様となって、このタイミングで役目を終えるに至った。

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解説記事更新日：2025年01月29日