ハーレーのレーシングブランド Screamin Eagleのステージキットがエンジンに組み込まれたCVOシリーズで唯一、全排気量
(1801cc ⇒ 1868cc ⇒ 1923cc ⇒ 1977cc)でのラインナップを果たしているFLHXSEストリートグライドCVO。
M8 117
(Milwaukee-Eightの1923ccエンジン)搭載機はCVOシリーズとしては3代目に位置します。
先ずは、M8 搭載のCVOストリートグライドと、そのベース機であるFLHXSストリートグライドスペシャル全排気量のリセールバリューを比較することで、 3代目 FLHXSEの再販価値を浮き彫りにしたいと思います。
尚、下記表で使用している落札額や台数は業者間オークションの数字となります。
業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場
M8搭載【FLHXS/FLHXSE】の参考買取率比較 |
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参考買取率 |
平均落札額 |
取引台数 |
新車価格 |
(FLHXSE 110) 2010-16年 |
38% |
131万円 |
29台 |
343万円 |
FLHXSE 114 2017年 |
46% |
189万円 |
7台 |
413万円 |
FLHXSE 117 2018-22年 |
59% |
245万円 |
21台 |
413万円 |
FLHXSE 121 2023~ |
94% |
469万円 |
1台 |
500万円 |
FLHXS 107 2017-18年 |
52% |
149万円 |
12台 |
288万円 |
FLHXS 114 2019~ |
75% |
229万円 |
52台 |
304万円 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
価格はすべて税抜
新車価格は、各機種で登場イヤーモデルのベースカラーを千円単位で四捨五入。
上記は、M8 搭載のCVOストリートグライド
(FLHXSE)と、 そのベース機であるストリートグライドスペシャル
(FLHXS)の参考買取率(リセールバリュー)を比較した表です。
参考買取率とは『業者間での平均取引額÷当時の新車価格』で算出した数字で、100%であれば当時と同じ値段で、50%であれば当時の半値で業者間にて取引されていることを示します。
※尚、業者間の取引額は、買取業者にとっては転売額(販売業者にとっては仕入れ額)に相当しますので、査定現場での買取額で換算すると3~5%ほど率は下がります。
型落ちで相場が下落するCVOストリートグライド
上記の比較表から取り上げたいトピックは2つございます。
(1)CVOストリートグライドは型落ちで相場が下がる。
FLHXSEはCVO機で最多となる4つの排気量がリリースされていますが、高年式の排気量モデルほど買取率が高いごく順当な結果となっています。
特に2023年モデルでハーレー史上最大となる121ci
(1977cc)エンジンを搭載したFLHXSE 121
(PX6型)の参考買取率はは94%と高く100%に迫る水準となっています。
現行最新モデルにおいて参考買取率の平均値は66%と言われていますので、94%というのは平均を凌駕する水準です。
1世代前のFLHXSE 117
(2018-22年 PXL型)は59%、2世代前のFLHXSE 114
(2017年 PXF型)は46%と型落ちに伴ってリセールバリューも希薄化していますが、1~2世代前の機種としては 平均的な水準です。
(2)CVOよりベースモデルの買取率が高い?
本機のご購入に際してCVOにするか・レギュラーモデルFLHX/Sにするか?比較検討したオーナー様もおられるのではないでしょうか?
同排気量を搭載したベース機FLHXS 114
(2019~24年現行 KRP型)と、CVOのFLHXSE 114の買取率を比較すると、 ベース機が現行モデルのアドバンテージを発揮して29ポイントも高い結果となっています。
1世代前という括りで比較すると、FLHXS 107
(2017-18年 KRC型)の52%に対して、FLHXSE 117は59%と、より高年式のCVOが7ポイント高い結果に。
意匠が施されたメ―カーカスタム機のCVOですが、販売台数とリセールバリューではベース機に及ばない機種も多いのも実情です。
例えばリアの迫力を引き出すカスタムが人気のブレイクアウト、チョロやチカーノといった定番カスタムが存在するFLHXロードキングやソフテイルデラックスなどが顕著な例ですが、カスタム比率が高い機種でベースグレードの買取率が高い傾向がございます。
ストリートグライドに関しては、バガースタイルカスタムが特徴的な機種ですが、M8 エンジン搭載位以降の中古車においてはカスタム比率が低いことからCVOとベース機でのリセールバリューに大きな乖離は認められません。
査定額に影響する順番は「評価点」「距離「カラー」
話題が少し逸れてしまいましたが、本題であるFLHXSE 117の買取相場に話を戻します。
直近1年間の参考買取率が59%である本機ですが、今後はどう推移していくのでしょうか?
発売からの相場変動を踏まえて予測してみましょう。
右欄下段上から2番目のグラフは、2017年からの相場
(業者間での取引額)推移を示したグラフです。
平均取引額のピークは2018年の330万円で、新車供給が細ったコロナ禍の2020年に次点の329万円を記録しますが、その後は漸減基調で2023年には250万円割れに。 2024年に入り若干盛り返していますが、現行モデルFLHXSE 121の取引が活発になるに従い型落ちとなった本機の相場が下落していくことは想像に難くなく、ご売却をお考えであれば早めの売却が高額査定に繋がりやすいと読めます。
2024年に入り相場を盛り返しているFLHXSE 117。相場動向を色濃く反映するために直近1年間に焦点を当て、査定額に与える影響が大きい5要素「年式」「評価点」「走行距離」「カスタム」「カラー」を切り口に掘り下げてまいります。
1)年式
右欄下段上から3番目のグラフは、年式別の業者間での平均取引額です。
2018~20年モデルが236~249万円平均となっているのに対し、2021年モデルは291万円と突出して高いのですが。2021年モデルの取引台数は1台と少ないことから「高年式=高額査定」の図式が成り立つかと言えば傾向としては薄弱です。
しかしながら、
最高峰ファミリーに位置づけられるCVO機はベース機とは一線を画したアップデートが入るのが通例で、本機FLHXSE 117も例外ではなくラインナップ期中を通じて毎年アップデートを受けています。
特に19年・20年・21年と多様なアップデートが入り、登場18年モデルで413万円であった小売価格は最終22年モデルで459万円まで上がっています。
業者間の取引履歴からはイヤーモデルによる有意な相場差は認められませんが、弊社バイクパッションでは期中のアップデートも鑑みて高年式モデルに対してプラス査定を行っております。
2)FLHXSE 117【評価点別】業者間での落札額 |
|
平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
6点以上 |
277万円 |
291万円 |
260万円 |
3台 |
5点 |
245万円 |
285万円 |
181万円 |
16台 |
4点 |
201万円 |
224万円 |
179万円 |
2台 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
8点以上:未使用車や新車同等の状態
7点:プロが見て判別可能な減点がある超極上車
6点:新車比で軽微な使用感がある極上車
5点:ルーティンの整備で再販に回せる良好車
4点:軽い追加補修や整備が必要となる劣化または軽い難がある
3点:追加整備が必要な難がある車両
1点:事故車又は不動車
平均落札額に着目すると「高評価点=高額落札」の傾向が鮮明です。
極上を意味する【6点評価】以上を付けた個体は3台と少ないものの、260~291万円と比較的コンパクトなレンジで落札額の上位を固めています。
若干の使用感又は軽い難がある【4点評価】の個体は2台落札されていますが、179~224万円のレンジで落札額の下位を占めています。
中間となるのが、圧倒的に取引台数が多い【5点評価】の個体。16台が181~285万円とワイドなレンジで取引されています。 評価点【4点】と【6点以上】は業者間での落札額傾向がある程度読めます。しかし本機で平均的な評価となる5点判定の個体について落札額が幅広く読み難いものにしています。その理由としては主に以下が挙げられます。
・オークションという取引の性格上、入札(競り)が過熱すれば相場以上の価格に跳ねることがある(逆も然り)。
・4.5~5.4点までの評価点が四捨五入で一律 5点に組み込まれている点。
・同じ5点評価でも「重整備の可能性を孕む警告灯の点灯やオイル漏れ」が減点対象となったのか、「ケアに手間がかかるタンク内の錆び」もしくは「磨きで回復が見込めるアクセスの良い箇所の錆び」が対象となったのかで回復に掛かるコストが大きく変わってくるため。
3)FLHXSE 117【走行距離別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
~1万km未満 |
259万円 |
291万円 |
202万円 |
10台 |
1万km台 |
254万円 |
285万円 |
224万円 |
6台 |
2万km台 |
214万円 |
249万円 |
179万円 |
3台 |
3万km超 |
193万円 |
205万円 |
181万円 |
2台 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
評価点に続いて、「低走行=高額落札」とセオリー通りの結果が出ています。
傾向としては、走行距離が2万キロを超えると落札額が下落し、3万キロ超でその傾向が顕著になっていることが読み取れます。
4)カスタム
業者間で直近1年間に取引された21台のFLHXSE 117。そのうち、何らかの社外品を纏っていたのは約半数の10台で11台がフルノーマル仕様です。
社外品を装着していた10台についても、装着点数は1~4点に留まるライトカスタム車で占められており、査定額に大勢を与える様なフルカスタム車は見当たりません。
最も値の張る社外品はバックギア(工賃込みで30万円~)、次いでフルエキとなっていましたが、面白いのはフル装備ウルトラと比べると軽量で且つ足付きの良い本機CVOではリバースギアの装着率が低い点。
ウルトラではバックギアが付いていることで落札額が伸びる傾向がありますが、本機では装着率も低いこともあってその傾向は明確ではありませんでした。
またライトカスタムによって査定額が伸びる傾向も確認できていません。というのも落札額の上位はフルノーマル構成で占められていたためです。
査定額の伸びるカスタムについては下段で詳細致しますが、特にオプションのバックギアやマフラーは車検対応の純正品付きでプラスに作用いたしますが、純正品なしのライトカスタムはプラスになりにくい取引傾向となっています。
5)カラー
ラインナップ期中に延べ15カラーが展開された本機。
23年モデル以降のM8 121エンジンを搭載したCVO機からは小売価格が大幅に高い上位カラーが設定されましたが、M8 117のCVO機までは上位カラーが設定されておらず本機も各イヤーで設定されたカラーリングは同一価格となっていました。
延べ15カラーに対して、直近1年間の取引台数が21台ですから、カラー別の相場に言及するには至りませんが。
本機にはカラーリングに応じて、マフラーやエンジンとフォークにハンドルの仕上げが「クローム仕様」と「ブラック仕様」の2種類が存在します。その相場を比較したのが下記表です。
FLHXSE 117【仕上げカラー別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
クローム仕様 |
234万円 |
291万円 |
181万円 |
11台 |
ブラックアウト |
257万円 |
280万円 |
179万円 |
10台 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
取引台数は10台と11台で拮抗しており人気は2分しているようです。
平均取引額で比較するとブラックアウト仕様が23万円高い結果となっておりますが、取引額の上位2台はクローム仕様でもあり、傾向は明確とは言えません。 しかしながら、ブラックアウト感がより強い19年の「ブラックフォレスト」の落札額が
(走行距離や評価点以上に)跳ねている点や、 ベース機のストリートグライドではベースカラーのビビッドブラックが1番人気で相場も高いことから、弊社バイクパッションではブラックアウト仕上げに若干のプラス査定を致しております。
以上「年式」「評価点」「走行距離」「カスタム」「カラー」を切り口に直近1年間のFLHXSE 117の取引動向も見て参りましたが、業者間での落札額傾向を纏めると下記のようになります。
- ▼FLHXSE 117 業者間での落札額傾向
- 250~290万円台の11台
走行距離1万キロ未満で状態が良くフルノーマルの個体が体中心
- 230~240万円台の4台
走行距離1万キロ台で状態の良い個体が中心
- 170~220万円台の6台
走行距離2万キロ超の個体、または嫌気される配線加工が施されている個体
以上の買取相場を踏まえて、走行5万キロ超の2019年モデルCVOストリートグライドの査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 (尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は96~98%相当となります)