先ずは、CVOリミテッドFLHTKSEのリセールバリュー
(再販価値)をツーリングファミリー CVO機の括りで比較したいと思います。
比較対象に挙げたいのは、
2018年当時のハーレー最大排気量であったMilwaukee-Eight117
(1923cc)エンジンを一早く与えられた ストリートグライド 、ロードグライドのCVO機です。
本機を含めたM8 117搭載CVOの3機種は、M8 121
(1977cc)への昇格やカタログ落ちによって、21~22年モデルを最後にモデルライフを終えていることから比較対象としての条件が揃っています。
尚、下記表で使用している落札額や台数は業者間オークションの数字となります。
業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場
【M8 117搭載CVO機】の参考買取率比較 |
|
参考買取率 |
平均落札額 |
取引台数 |
新車価格 |
FLHTKSE 117 |
52% |
252万円 |
8台 |
487万円 |
FLTRXSE 117 |
71% |
302万円 |
17台 |
423万円 |
FLHXSE 117 |
52% |
216万円 |
21台 |
413万円 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
価格はすべて税抜
新車価格は、各機種で登場イヤーモデルのベースカラーを千円単位で四捨五入。
上記は、M8 117搭載CVO機の参考買取率(リセールバリュー)を比較した表です。
参考買取率とは『業者間での平均取引額÷当時の新車価格』で算出した数字で、100%であれば当時と同じ値段で、50%であれば当時の半値で業者間にて取引されていることを示します。
※尚、業者間の取引額は、買取業者にとっては転売額(販売業者にとっては仕入れ額)に相当しますので、査定現場での買取額で換算すると3~5%ほど率は下がります。
1つの指標として、現行モデル最新年式の参考買取率は66%平均と言われています。
カタログ落ちから2~3年が経過している事も影響して、本機FLHTKSE 117とFLHXSE 117のそれは52%となっています。
対してFLTRXSE 117は71%と高い買取率を維持しており、同じM8 117搭載のCVO機でもリセールバリューでは明暗を分ける結果に。
ツーリングファミリーの再販価値の傾向
シリーズとしての傾向を俯瞰すると
・シャークノーズフェアリングをアイコンに2005年から展開された【ロードグライド】はスペシャルやリミテッドにSTなど多様なバリエーション機も含めて総じて高い再販価値を保持しています。
対して、
・ツーリングファミリーの最高峰機として2014年に展開された【ウルトラリミテッド】は、バリエーション機も含めシリーズを通じてリセールバリューが冴えないのは高額なメーカー希望小売価格も影響しているかもしれません。
・ツーリングファミリーの軽量マシンでカスタムベースとしても人気の【ロードキング】は1994年から展開されていますが、バリエーション機も含めシリーズを通じてリセールバリューはハーレーの平均的なラインとなっています。
そして
・トップケースを外しローダウン化したウルトラのシャープスタイル・カスタム機【ストリートグライド】は2006年から展開されていますが、バリエーション機も含めシリーズの再販価値はまずまず好調です。
近代ツーリーングファミリーのメインストリームとなっていた4シリーズの買取率を比較俯瞰すると【ロードグライド】の水準が突出して高く、次いで【ロードグライド】そして【ロードキング】と本機が 続き【ウルトラリミテッド】の水準は安いと言わざるを得ません。
その理由としては、買い手を選ぶ「置き場所と乗り手を選ぶ大きさと重さ」が最右翼に挙げられます。そして群を抜いて高いメーカー希望小売価格、更に若者を中心にウルトラリミテッドのカスタム機ともいえるストリートグライドに人気が移行している点も無視できません。
誠に残念ながら、業界ではTKことウルトラリミテッドは新車価格比ではリセールバリューが奮わない機種として有名なのでございます。
因みにM8 117搭載機で最も業者間での平均落札額が高いのはCVOトライグライドウルトラFLHTCUTGSEで(20-22年モデルで参考買取率は76%)
最も参考買取率が高いのはFLTRXST ロードグライドST で81%(22~現行24年モデル)となっています。
生産終了後に相場は下落基調
2024年現在では52%の参考買取率となっている本機CVO リミテッドですが、現行モデルであった2021年までの相場はどうだったのでしょうか?
右欄下段一番上のグラフがその答えになります。
本機の初取引が業者間市場で記録されたのは2018年のことで初値は309万円でした。 2020年には平均落札額が330万円と大きく上昇しますが、この時期はコロナ禍での新車不足に伴い中古バイク全体の相場が上昇したコロナバブルの影響が大きいと言えます
(因みに2020年時点のの参考買取率は68%と現行最新モデルの平均値を若干上回っていました)。2021~22年にかけては292-310万円平均とコロナバブルの終焉に伴い下げますが。2023年は261万円平均まで大きく下げてしまいます。
2021年モデルを以ってカタログ落ちしたことに加えて、2023年モデルではM8 121エンジン搭載したCVO機がリリースされたことで存在感が希薄化したことも影響していると思われます。
直近で大きく相場が動いていることを鑑みて、以下では直近2年間の取引履歴に絞って、CVOリミテッドFLHTKSE 117の買取相場について掘り下げていきましょう。
右欄下段一番下の表は直近2年間で取引された実働車13台の取引額一覧です。
最高額は333万円、最低額は189万円、273万円が平均落札額
(買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額)となっています。
同一排気量の同一機種ながら上から下まで落札額に150万円近い開きがあります。
その理由を査定額に占める影響が大きい「年式」「評価点=状態」「走行距離」「カラーリング」「カスタム」を切り口に見て参りましょう。
査定額に最も影響を与えるのは走行距離
(1)年式
2018~21年の4年間ラインナップされていた本機FLHTKSE 117。期中のアップデートを振り返ると
・2019年モデルでは新形状ホイールの大径化に薄型タイヤの採用、そしてパーツディティールのデザイン変更を伴うアップデートを実施し10万円強の値上がり。
・2020年モデルではRDRS
(電子制御機構パッケージ)が採用されブラックアウト感を強め約11万円の値上がり。 ・2021年モデルでは価格据え置きで細部の変更を実施。
19年モデルと20年モデルで大掛かりなアップデートを受けていますが、イヤーモデルによって買取相場は異なるのでしょうか?
右欄下段上から3番目のグラフがその答えですが、直近2年間の取引履歴では2018年モデルが最も高く、必ずしも高年式=高額買取の図式とはなっていません。
(2)評価点
右欄下段上から4番目のグラフは、評価点別の平均落札額を示しています。
直近2年間で取引された13台のうち11台が評価点「5」を付けており、比較対象となる点数が少ないことから明確な傾向は認められません。
しかし車両コンディション
(評価点)が高い個体が高額査定に繋がるのは中古バイク全体の共通するセオリーであることは押さえておきたいポイントです。
(3)走行距離
FLHTKSE 117【走行距離別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
~0.5万km |
299万円 |
333万円 |
251万円 |
5台 |
0.5~1万km |
290万円 |
304万円 |
270万円 |
3台 |
1万km台 |
259万円 |
270万円 |
247万円 |
2台 |
2万km超 |
222万円 |
251万円 |
189万円 |
3台 |
業者間オークションの取引履歴を2024年3月時点で12ヵ月間遡った数字
ツアラーとして乗りこなされている多走行車と、扱いきれず殆ど距離が伸びていない低走行車に2分されるのはツーリングファミリートップエンドモデルならではですが、 低走行=高額査定の傾向が鮮明に表れています。
(4)カラーリング
各イヤーモデルを合計すると10以上のカラーリングが設定された本機。
本機のカラーリングで有名なのは2018年モデルで設定された115 th Anniversary限定カラー「オデッセイブルー」です。 タンクバッジにEagle LOGOを採用しシリアルナンバー付き約18万円高く売り出されましたが、業者間では類似の評価点と走行距離で取引された個体よりも落札額が高く、相場が一段高い可能性がございます。
ハーレーの多くの機種において最も相場が高いベースグレードカラーである「ビビッドブラック」が本機には設定されていませんが、 タイプとしてはエンジンやエキゾーストはクローム仕様の「バーガンディーチェリーサングロフェード」とブラックアウトされた「ブラックアースフェード」の2タイプが展開されました。
この2タイプでは相場に有意な差は認められません。
2019年モデル「マグネティックグレーフェード(メタリックグレー)」をブラックアウトしたライトカスタム車
(走行1.4万km/5点評価)が248万円で落札されていることから 玄人向けのフル装備本格ツアラーである本機に関しては、ブラックアウトカスタムで相場が高くなる傾向は薄いと思われます。
取引台数が多いのは19年モデル「オーバーンサングロ&ブラックホールとリッチバーボン
(茶/黒ツートーン)」と 19年モデル「バーガンディーチェリーサングロフェード
(ワイン単色)」ですが、相場が高いのは「バーガンディーチェリーサングロフェード」となっていますが、 傾向としては弱く参考程度です。
5)カスタム
本機のカスタムでプラス査定に最も繋がりやすいのがバックギア。事実、上位で落札されている個体には軒並みバックギアが装着されています。
428kgの車両の取り回しではバックギアが重宝されることもあって、売値では15万円ほど変わってくるのがFLHTKSE 117。業者間の落札額でも相場が高くなっております。
オークションという取引の性格上、競りが過熱すれば相場以上の値段に跳ねるケースがあり
(逆も然り)、年間の取引数が10台に満たない機種の相場を読み難いものにしていますが、 業者間での落札額傾向を纏めると下記のようになります。
- ▼業者間での落札額傾向|FLHTKSE 117
- 280万円以上の5台
相場が跳ねたケースを含め走行距離 86km~数千kmの個体が中心でバックギアが装着されている
- 240~270万円台の4台
走行数千キロのバックギア無しと、走行1~2万km台のバックギア付き車
- 230万円台以下の2台
走行距離4万km超
以上の買取相場を踏まえて、2020年モデル「ミッドナイトブルー/ディープシーブルー」フルノーマル構成の査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 (尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は96~98%掛け相当となります)