GT380の買取相場について先ず触れておきたいのが、2021年2月に718万円の値を付けて業者間オークションで取引された事例です。
2021年の前半は、コロナ禍で新車供給が細ったことを受けて中古バイク全体の相場が高騰したコロナバブルの絶頂期でしたが、その2021年間を通じても
・1位 NR750の1019万円
・2位 スーパーレッジェーラV4の962万円
・3位 Z2の816万円
に次いで4番目に高い落札額を記録しました。(
2021年の高額取引ベスト5)
718万円の値が付いたサンパチは、1973年モデル(B2型)で走行2kmのほぼ未使用車。
落札したのは海外の貿易業者で、最終の顧客はアラブの王族関係者です。
SUZUKI 2スト・トリプルは国内はもとより海外でも人気が高くプレミアムが付いている機種です。
というもの、日本より海外でセールス的に成功した1968年のT500が前身となっていることに加えて、元祖GTであるGT750のレース仕様車TR750が1973年シーズンのデイトナ200を制するなど欧米のレースシーンを彩った事で、海外でより強い印象を形成していたからです。
かといって、全てのGTトリプルが高額で取引されるわけではなく、未使用に近い状態であったことがコレクターの関心を焚きつけて超の付く高額取引に繋がったと言えます。
類似するケースでは
・529万円で落札された、走行距離0kmの1996年型NSR250R SE(2022年10月)
・183万円で落札された、走行距離0kmの1999年型NSR50(2021年3月)
などが挙げられます。
いずれも未使用という稀少性が平均取引額の5倍以上となる破格の取引に繋がっています。
海外でもプレミアム化している機種において、未使用の個体をお持ちのオーナー様がおれらましたら、想像を超えた値段で売れる可能性がございます。その際は海外の貿易業者に通じている弊社パッションにお声がけください。
718万円で落札された個体は例外として、国内でも確かなプレミアムが付いているGS380。
1970年代のSUZUKI車として最もプレミアムが付いているのがGTシリーズです。
高額取引されるGT750/550/380のアイコンに挙げられるのが2スト・トリプルですが、ライバル機であるKawasakiの2スト・トリプルと比べると、どちらが高く売れるのでしょうか?
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データを使用して比較してみましょう。
【2スト・トリプル】最も買取率が高いのは? |
|
参考買取率 |
平均落札額 |
取引台数 |
新車価格 |
500SS |
372% |
111万円 |
11台 |
29.8万円 |
750SS |
458% |
167万円 |
11台 |
36.5万円 |
400SS |
350% |
105万円 |
9台 |
30万円 |
350SS |
469% |
107万円 |
4台 |
22.8万円 |
250SS |
330% |
72万円 |
5台 |
21.8万円 |
KH500 |
- |
- |
0台 |
39.5万円 |
KH400 |
377% |
113万円 |
8台 |
30万円 |
KH250 |
389% |
105万円 |
10台 |
27万円 |
GT750 |
255% |
98万円 |
7台 |
38.5万円 |
GT380 |
433% |
106万円 |
27台 |
24.5万円 |
GT550 |
269% |
90万円 |
5台 |
33.5万円 |
業者間オークションの取引履歴を2023年10月時点で12ヵ月間遡った数字
業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場
新車価格は、登場イヤーモデル
上記は2スト・トリプル機種の参考買取率を比較した表です。
参考買取率とは『業者間での平均取引額÷当時の新車価格』で算出した数字で、100%であれば当時と同じ値段で、200%であれば当時の2倍の値段で業者間にて取引されていることを示します。
※尚、業者間の取引額は、買取業者にとっては転売額(販売業者にとっては仕入れ額)に相当しますので、査定現場での買取額で換算すると3~6%ほど率が下がります。
最も参考買取率が高いのは、350SSの469%、次いで750SSの458%、そしてGT380の433%が3位となっています。
最も低いGT750でも255%と2スト・トリプルのプレミアム価値を見せつけています。
余談ながら、2スト・トリプルの先駆となったのは1969年の500SS(H1)60馬力。1969年は量産市販車初の4気筒CB750FOUR(67馬力)が登場した年でもあり、Triumph初の3気筒 トライデントT150(BSAのロケット3)58馬力と、 3つ巴で最高時速200kmを誇る機種がリリースされ、日本メーカーにとっては、はじめて世界最速機を誕生させたエポックメイキングな年でした。
1972年には、DOHC4気筒のZ1(82馬力)が市販バイク世界最速を更新する時速210kmを叩き出し、世間のニーズは4気筒機への系統を強めていくのですが。
そんな時代において、Kawasakiマッハーシリーズは多様な排気量を展開し、後継機KHの最終型となる1980年まで2スト・トリプルを生産。
SUZUKIは、1971年に国産で初めて水冷の2stを搭載した3気筒GT750を、72年にはラムエアシステムを搭載した空冷2スト3気筒のGT380とGT550を発売。後継となるGSシリーズに移行していく1978年まで生産していました。
トライアンフは2023年現在も当時の名を冠したトライデントやロケット3をはじめストリートトリプルなど多様な3気筒機をラインナップさせています。またCB750FOURやZ1もメーカーの象徴となり遺伝子を受け継ぐ機種が途切れることなくリリーされています。
しかしKawasakiもSuzukiも当時のトリプルをオマージュする機種を輩出していません。
Z1やCBルーツの超プレミアム機と比べると、プレミアム度では若干色褪せるものの。リッター換算で当時最高馬力を誇った「じゃじゃ馬」ことマッハ、 重厚なルックスとトルクフルな仕様が際立つ「グランツーリズモ」のGT、70年代を彩った2スト・トリプルの存在感はその高い買取率が証明していると言えるでしょう。
相場は右肩上がり
続いて、本稿本題であるGT30に焦点を当てていきましょう。
右欄下段一番上のグラフは、2016年~23年現在まで業者間の取引額がどう推移してきたかを示しています。
2016年時点では60万円平均で取引されていたGT380ですが、ジワジワと値を上げ2019年には70万円平均に。そしてコロナバブルが始まった2020年には100万円、バブル最盛期の2021年には700万円超を付けた未使用車の取引も手伝って170万円平均に。
そしてバブルの崩壊が始まった2022年には130万円、2023年には105万円強へと反落しています。
しかしながら、過去8年間の水準で見ると未だ高値圏内であることから、売り時であることは間違いがありません。
バブル期に異常高騰したZ系やCB系の多くのプレミアム機は、2023年現在では2019年以前の水準にまで揺り戻していることからも、GT380は売り時であることが指摘できます。
直近数年で大きく相場が動いているGT380。現在の相場動向を反映するために直近1年の取引に絞って掘り下げてみましょう。
登場72年型から最終の78年のB7まで途切れることなくラインナップされたため7つのイヤーモデルが存在するGT380。 イヤーモデルによって買取相場は異なるのでしょうか?
GT380【年式別】業者間での落札額 |
|
平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
72年型 |
119万円 |
145万円 |
75万円 |
4台 |
73年型 |
96万円 |
115万円 |
76万円 |
5台 |
74年型 |
110万円 |
110万円 |
110万円 |
1台 |
75年型 |
100万円 |
131万円 |
70万円 |
2台 |
76年型 |
- |
- |
- |
0台 |
77年型 |
105万円 |
135万円 |
90万円 |
4台 |
78年型 |
107万円 |
162万円 |
89万円 |
6台 |
イタリア向け 41馬力 |
102万円 |
125万円 |
81万円 |
4台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年10月時点で12ヵ月間遡った数字
上記は、直近1年間に業者間で取引されたGT380の実働車27台について、イヤーモデル別に取引額を比較した表です。
イヤーモデルに分類すると各年度の取引台数が少ないため傾向としては弱いのですが。登場72型が若干高い他は、際立った傾向は認められません。 尚、72年型には生産台数が少ないドラムブレーキ採用の最初期型(GT380-10番台)が存在します。最初期型の取引履歴は確認できませんが、その稀少性から落差額が大きく跳ねる可能性がありそうです。
サンパチは大掛かりなマイナーチェンジが入った74年モデル以降を後期型として区分されることもありますが、前期・後期で分けても有意な相場差は見られません。
変わり種では、イタリア向け41馬力仕様(75~78年型)が存在しますが、こちらも特に相場が高い傾向は認められません。
因みにイタリア向け41馬力仕様のフレーム型式はNGT380-、国内向け38馬力仕様はGT380B-(最初期型はGT380-10番台)、海外向け38馬力仕様はGT380-となっておりフレーム番号前半部分から仕向け地の識別が可能なのですが。取引された27台のうち国内仕様は1台だけで26台は海外からの逆輸入車です。
イヤーモデルの比較では際立った傾向が見られなかったサンパチ。続いては評価点別の比較を見ていきましょう。
GT380【評価点別】業者間での落札額 |
|
平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
4点 |
118万円 |
160万円 |
81万円 |
14台 |
3点 |
94万円 |
131万円 |
70万円 |
2台 |
1点 |
63万円 |
144万円 |
30万円 |
12台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年10月時点で12ヵ月間遡った数字
5点:ルーティンの整備で再販に回せる良好車
4点:軽い追加補修や整備が必要となる劣化または軽い難がある
3点:追加整備が必要な難がある車両
1点:事故車又は不動車
上記は、直近1年間に業者間で取引されたGT380 の実働車27台(+12台の事故 不動車)について、評価点別に落札額を比較した表です。
平均落札額に着目すると、評価点が高い(コンディションの良い)ほど落札額が高い順当な結果となっています。
しかしながら、同じ評価点でも最高額と最低額には大きな開きがあります。
なぜでしょうか?
その理由の1つに、総合評価点の仕組みが挙げられます。
総合評価点は、エンジン・フレーム・外装・前足・後足・電装と保安部品の6項目を評価した総合評価となります。
そのため整数では3.5~4.4までが4点評価となる事。そして重整備が必要となるエンジンの3点評価と、軽整備で賄える保安部品の3点評価では、再販に向けて必要となる工賃が大きく異なる点が影響しています。
特に嫌気される不具合には、要修理判定となるような腰下からのオイル漏れやエンジンからの異音が挙げられます。また要オーバーホール判定となるサスペンションのオイル漏れや、キャブレターからのガソリン漏れ、動作しないメーター、 タンク内の酷い錆、エンジンフィンの削れなども嫌気されます。
もう1つの理由に、カスタムが挙げられます。
例えば、個性的なオールペンや塗り斑のある自家塗装などは評価を下げる一方で、価値のある社外品を装着しているカスタムは評価が高まる事がございます。
取引額が伸びるカスタムであっても、評価点上は純正品の欠品扱いで減点対象となることから、評価点だけでは見えてこない部分に当たります。
定番のカスタムには、集合管やチャンバー・キャストホイール・アップハンドル・段付きシート・サイドカバーの社外化が挙げられます。特に価値が上がり易いのは、 当時物のBEET製・セブンスター・メルバのキャストホイール、FIGAROLIチャンバー・スガヤ3本チャンバー・城北ムラカミ集合管・BEETチャンバー等で、純正品付きで確実なプラス査定が見込めます。
右欄下段一番上の表は、直近1年間に取引された27台のGT380実働車について、取引額の高い順に上位20台の状態を記しています。
傾向としては、やはり評価点が高い個体の落札額が高くなっております。しかし、評価点だけでは説明が付かないケースも散見されますので、特定の不具合やカスタム内容も加味すると以下の様な傾向が見えてきます。
- ▼GT380 業者間の取引額傾向
- 162万円の最高落札額
純正度が高く外装が非常に綺麗で目立った不具合なし
- 130~140万円台の4台
目立った不具合が無く使用感が少な目のノーマル車や、使用感ありつつ価値ある社外品で纏めたカスタム車
- 110~120万円台の8台
使用感は少な目ながら加修が必要な不具合がある個体
- 90~100万円台の8台
使用感が出ており加修が必要な不具合があるノーマルまたはカスタム車
- 70~80万円台の6台
使用感が出ており要重整備の不具合があるノーマルまたはカスタム車
以上の買取相場を踏まえて、ライトカスタムが施された1978年モデルGT380の査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 (尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は94~97%相当となります)