今や貴重な2ストトリプル界の400ccフルカウルスポーツのNS400Rですが、ご相談頂いた車両は5年間の長期放置によってタンク内のガソリンが腐敗しキャブレター内で固着していたためエンジンが始動しない状態でした。
雨水によるチャンバーの内部侵食、自家塗装による塗り直しの他、錆や色褪せが目立つなど、厳しい条件でありながらも、弊社修理工場でのレストア後の価値を見積り40万円という高額買取にてご対応させて頂きました事例のご紹介です。
現オーナーである坂田様(仮名)が若かりし頃に購入し、時には峠へ時にはツーリングへと苦楽を共にしてきたホンダNS400R。
しかし維持の難しさや体力的な問題から年々乗る機会そのものが減ってしまい、気が付くと5年以上もの長期放置を経て不動状態に。直して乗るべきか個人売買で売るか悩みに悩んだ末、ご友人から弊社の出張買取査定のお話を聞いてお呼びいただく事になりました。事前相談では個人によるリペイント、ガソリン腐りとキャブ詰まりなどによる不動状態、無数のサビという車両状態についてご説明を頂いておりました。
査定内容に先立ってまずはNS400Rの買取相場からご紹介させて頂きます。
状態やカラーにカスタムで査定額が大きく変わるNS400R
1980年代に隆盛を極めたGP500の技術をフィードバックし、2ストロークV型3気筒エンジンという極めて稀な設計で市販車デビューを果たしたNS400R。
同じ2ストV3マシンであるヤマハ・RZV500が大型二輪免許所持者向けであったのに対し、本機は中型二輪免許でも乗ることが可能な400ccクラスであったこと、 1984年に登場した2ストV4エンジン搭載GPマシン・NSR500の活躍により、NSR250Rにバトンを託す形で現役降板となりましたが、近年の絶版車ブームを追い風に再評価されることに。
一時期は絶滅の危機に瀕していた補修用パーツもリプロ品が多数出回るようになり、NS400Rを専門とするプロショップの誕生で大きくその株を上げることとなりました。
ここ10年ほど中古相場が右肩上がりの2stレプリカですが、異常過熱しているNSR250Rの波とは一線を画しているものの2020年後半から相場が急上昇しているNS400R。
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データを見ると。
直近12ヶ月間でNS400Rの取引台数は全14台。そのうち実動車両は5台ですが、うち3台は100万円超えの大台となっており、最高取引価格は123万8000円とかなりの高額取引に。
100万円超えの車両はいずれもロスマンズカラーのノーマル車で、トリコロール(白/赤/青)カラーと比べ評価が高くなる傾向にあります。
その一方、トリコロールカラーは最高で79万8000円、最低で53万6000円となっており、車両状態が同程度であった場合10万円以上の価格差となることも珍しくありません。
直近12ヶ月内のデータでは、トリコロールカラーはいずれもかなり手の込んだカスタム車両でしたが、こうしたカスタム車両も内容が車両価格を大きく左右するため、 よほどNS400Rの関して造詣が深い業者でなければ的確な評価を下すことは難しいと言えます。
とは言え、フロントに備わったTRAC機構など、足回りの古さを気にする顧客層が一定以上いることもまた事実で、名の通ったショップによるカスタム車両であれば取引価格が大きくハネる可能性は十分あり。
流通する車両の状態次第というところはあるものの、当面は上昇傾向が続くものだと考えてよいでしょう。
直近12か月間で9台の取引があった事故車や不動車など実働状態にないNS400Rに焦点を合わせると、最高金額は72.5万円、最低は21.8万円で45.9万円が平均となっています。
30万円台以下で取引された個体は、実働化へ向けた整備がヘビー級であろうことが一見して分かるルックスをしており、40万円台以上で取引された個体は見た目の印象が良く「動くのでは?」と思わせる車両が中心となっています。
弊社バイクパッションは単店舗ベースで日本で一番中古バイクを売っている直営販売店を併設しております。 自社で買取して自社で販売できる買取直販体制によって、買取専門店の10%増しとなる販売仕入れ価格での買取も期待できます。
以上の買取相場を踏まえて劣化の激しいNS400R不動車の査定内容についてご紹介させて頂きます。(※上記の取引額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、買取相場は90~95%相当となります)
【NS400R】相場の推移
【実働車】業者間の取引価格帯
【事故・不動車】業者間の取引価格帯
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データ
放置による廃れ感や劣化が目についたNS400R
事前に数度のご相談を経てある程度車両の状態については聞き及んでおりましたが、1985年製だけにメーターレンズやシートなど、かなりの劣化が見られ傷んだ状態でした。
約5年という長期放置により、タンク内に残っていたガソリンはすっかり変色し異臭を放つ見事なガソリン腐り。
査定のために車両を移動させようとしたところ、右下エキパイからは水音と共にポタポタと水滴が落ち始め、チャンバー内部からサビによる侵食があることも判明。詳細チェックの前からかなり重度の難点を抱えていることが明らかなNS400Rでした。
そうした車両状態でありながら、相場以上の買取価格をご提示させて頂くことを可能としたのは以下のポイントです。
1)完全オリジナルのフロント周り
2)エンジンの再生見込みの高さを示す走行距離の浅さ
3)純正コムスターホイールがさらに評価を後押し
1)外観上の劣化あるも完全オリジナルのフロント周り
経年劣化でコシが弱まっていたものの、フルオリジナル状態で歪み等のないフロント周り。
ブレーキの引きずりやハンドルの切れ込み等もなく、80年代の2ストフルカウルとしては稀少な無事故車である可能性が高いことを示す好材料のひとつです。
本機は絶版車としての評価が進んだ現在でも、古い足回りを考慮しCBRやNSRの足回りを移植されることも多々あり、完全にオリジナルの状態はかなり貴重だと言えます。
80年代特有のアンチノーズダイブ機構であるTRACはかなり早期にキャンセルされていた模様で、見た目以上に悪くない状態だと判断させて頂くことに。
成約後、当社整備工場でチェックを行ったところ、TRACチャンバー部には袋ナットと固定カラーを使って上手く処理が施されており、プリロード調整用のカラーなども新品のものに換装された痕跡が。坂田様と以前のオーナー様による丁寧なメンテナンスが伺えたことが査定評価を高める一因となりました。
2)エンジンの再生見込みの高さを示す走行距離の浅さ
5年余りに及ぶ長期放置により、キックレバー凝固やバッテリー劣化、ガソリン腐りに係るキャブ詰まりなど、残念ながら査定現場でのエンジン始動性確認は行うことができませんでした。
しかし、メーター読みでの走行距離は1万3848kmと浅く、視認できる範囲でもヘッド割れやオイル漏れといったエンジン関連の致命的な不具合は見つからず、再生見込みは高いものという判定の根拠に。
査定最後に車検証を確認させて頂いたところ、前オーナー様の自筆によると思われる手書きのメンテナンスノートと現オーナーである坂田様(仮名)によるメモ類が一緒に保管されており、そちらも併せて拝見させて頂いた結果、見事に整備記録が一致。このことから、事故歴なしの2オーナー車両である可能性濃厚という強力な加点につながりました。
他社では見落とされがちな書類確認事項であっても、車両評価に関わるものであればしっかり参考にした上で評価するというのが弊社バイクパッションの強みだと言えます。
3)純正コムスターホイールがさらに評価を後押し
車両の再生見込みを図るのと同時に、今回評価を底上げする材料となったのが前後ホイール。
このNS400Rは純正でコムスターホイールを装着したモデルでしたが、絶版車として再評価が進むまではカスタム車両が多く、古さを感じさせる足回りを嫌ってCBRやNSRのフロントを移植されたケースがかなりありました。
それだけにオリジナルの前後コムスターホイールは希少価値があり、前述したフロントとセットで評価のポイントに。
タイヤ自体は経年劣化が見られるものの、ホイールの状態は決して悪いものではなく、ノーマルが好まれるNS400Rの車両評価をプラスする材料となりました。
総合評価と買取額
事前相談を受けていた不具合箇所に加え、出張査定時に判明したチャンバーのエキパイ内部腐食など、多くの難アリ箇所を確認するに至ったNS400R。
キックレバーすら踏み込めずエンジンの始動性確認すらも出来ない状態でしたが、弊社査定スタッフが着目したのはTRAC機構採用のフロント周りの状態でした。
GPマシンレプリカとして販売されたNS400Rは、1985年当時から過激な走りを好む層に支持されており、現存する車両もかなり傷んだ状態であるケースが珍しくありません。
カリッカリのフルチューン車両も多いのですが、その殆どはアンチノーズダイブ機構であるTRACの不自然な動きを嫌い、フロント周りをそっくりCBRやNSRのものにしてしまうことが大多数。
それだけに、押し引きに難がなくオリジナル状態の足回りを保っていたのは十分着目に値するポイント。
入念にチェックしてみたところ、若干の点サビはあったものの、オーバーホールすれば足周りは十分復活できるレベル。 しかも前後ホイールは純正のコムスターホイールを装着しており、ほぼ完全なフルノーマル車両でした。
タイヤは経年で空気漏れが生じるほど劣化していたため要交換判定でしたが、それを差し引いても十分な価値が見込めます。
こうした観点から、例えエンジン再生が出来ずに終わったとしても、パーツ単体レベルでお値段をつけさせて頂く目処が立つことに。
その上でオーナーである坂田様から書類を拝見させて頂いたところ、車検証と共に年季の入ったB6ノートが一冊出て参りました。
こちらも断りを入れた上で目を通させて頂きましたが、古いボールペンの字で日付と整備箇所が丁寧に記帳。
その記録を追ってみたところ、途中で「1989年11月 XXで購入 トシアキ」という一行に。
お申し込み頂いた坂田様の下のお名前と一致したので確認させて頂いたところ、89年から現在まで坂田様のお手元にあったことが分かり、同時に2オーナー車であることも判明いたしました。
来歴の怪しい車両が多い80年代レプリカですが、このように来歴のはっきりしたフルノーマル車というものは実に貴重であり、 5年前まで細かく記入された整備記録と現車状態を突き合わせて見た結果、「車両の再生見込みは十分にあるフルノーマル車」として査定評価させて頂く形に。
webより頂いていたご希望買取価格は25万円でしたが、各部の補修コスト等を考慮してもそれを十分上回るものであったため 、弊社修理部門の責任者にも確認した上でその差額を買取価格に上乗せした結果、40万円というお値段をご提示させて頂くに至りました。
事前のご相談よりも高額となったことで満足頂くことができ、即決でご成約に。そのまま現車を引き取らせて頂きました。
今回の現車は、弊社修理工場での修復を経て直営店舗での展示販売中に某ショップより相談を受け、ロスマンズカラーの外装に交換。
各部を再点検した上で引き渡す直前、コロナショックによる諸事情で取引断念することに。
その後はなかなか買い手がつかず、残念ながら業者間オークションの場に出品することとなってしまいましたが、 ロスマンズカラー外装への交換と再生したエンジン、フルノーマルの車両状態が高く評価され、100万円超えの取引価格にて落札されるに至りました。
補修に要したパーツ類、ロスマンズ外装への交換といったコスト的には大きな利益ではありませんでしたが、目の肥えた同業他社が注目する業者間オークションの場においても、 弊社修理部門による整備力の高さが評価され、高額入札へ至りました。
他社では見逃されがちなポイントや記録であっても、オーナー様のお人柄や車両状態を総合的に判断する弊社独自の買取査定による高額買取事例だと言えます。
NS400R
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 5台
- 平均価格: 959,200円
- 最高価格: 1,238,000円
- 最低価格: 536,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 9台
- 平均価格: 459,111円
- 最高価格: 725,000円
- 最低価格: 218,000円
相場情報:2021年10月1日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。