1980年前半、250ccクラスのスポーツバイクが注目されていく中でホンダが展開したのが「VT250」シリーズである。空冷4サイクルV型2気筒エンジンを搭載するシリーズとして、いくつかの派生車種もラインアップされた。そのひとつが1987年4月に発売された「VTZ250」である。「VT250」シリーズでは2代目モデルの派生車種で、型式はMC15型となる。
外観デザインは、シリーズの初代モデルとなる「VT250F」のビキニカウルを外し、角型ヘッドライトを丸形にしたネイキッド仕様のMC08型「VT250Z」を踏襲している。ネーミングが非常に似通っていることからもわかるように「VTZ250」は、「VT250Z」の後継モデルになる。メカニカルな部分はモデルチェンジと同時に大きくアップデートされており、最高出力は従来モデルの40馬力から43馬力にパワーアップ、トルクに関しても11,000回転で2.3kg-mであったところが10,500回転で2.5kg-mへと向上した。
フレームもダブルクレードルタイプから軽量高剛性のダイヤモンド型ツインチューブを採用。大幅な軽量化にも成功しており乾燥重量は「VT250Z」の152kgから144kgになっていた。フロントホイールは16インチから17インチ化され、ブレーキはインボードディスクタイプであったところをディスク露出タイプのブレーキに変更された。
デビュー翌年の1998年には、カウルレスで丸形ヘッドライトを装着したMC20型「VT250スパーダ」が登場するも、「VTZ250」はエンジン特性の変更などマイナーチェンジを行いながら1989年まで製造された。

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解説記事更新日：2021年08月08日

1987年に前モデル【VT250Z】からのフルモデルチェンジで登場したVTZ250。
VT250Zからの変更点は、
・152kg→144kgの軽量化
・フロントホイールを16インチから17インチへ変更
・フレーム、タンク、フェンダーを一新
・エンジンにアンダーガード装着
・フロントディスクブレーキをインボードからアウター（通常の）タイプへ
・ホイールをブーメランタイプから3本スポークキャストへ
・最大出力発生回転数を12,500から12,000回転に変更、中低速トルクをアップ
スタイリングはネイキッド路線継続です。
「VT」の車名で分かるように水冷V型4スト2気筒エンジンから、最大出力は12,000回転で40馬力を発生しました。これは同じ87年式VT250Fの43馬力・12,500回転より低いですが、中低速トルクが厚くなっています。
82年に登場したVTシリーズの始祖【VT250F】は、徐々にハーフカウル、アンダーカウルを装着してツアラーに変身。84年にはカウルレスでインボードディスクの【VT250Z】が登場、VT250Fと並行販売されています。VTZ250はZの後継機種です。
一時期は数々の販売台数新記録を樹立するほど爆発的に売れたVT250Fが路線変更した理由は、相次いで登場したスズキ【RG250Γ】、ヤマハ【TZR250】など2スト勢の台頭です。そこでホンダは86年に2ストV型の【NSR250R】を販売して巻き返しを図ったのでした。
つまりVTZ250は、V型エンジンを使ったネイキッド路線を歩むこととなります。軽さと17インチ化による落ち着いたハンドリングで、中型初心者や女性ライダーにとって非常に魅力的な1台です。
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解説記事更新日：2022年02月06日

1988年のVTZ250はマイナーチェンジを受けています。
変更点は、
・吸排気のポート形状やバルブ開閉タイミングなどを変更、中低速域トルクを向上
・1～6速の変速比をワイドレシオ化し、最終減速比を変更
・カラーリングを変更、《パールクリスタルホワイト》、《キャンディ・ウェーブブル》
をラインナップ
・カウル一体式だったウインカーを別体式に変更
・リアシート部の左右サイドグリップを後方に延長
水冷V型2気筒エンジンには変更ありません。最大出力40馬力/12,000回転に変更はありませんが、トルクがアップしています。87年式が2.5kgf・10,500回転だったのに対して88年式では2.6kgf・9,000回転です。トルクが増えると同時にその回転数が低くなったということは、中低速トルクが増えたことを数値で示していると言えます。またギアレシオ変更がそれを支えています。
88年当時販売されていたホンダオンロード250ccは他に、2ストV型【NSR250R】、4ストDOHC4気筒【CBR250R】、4ストVツイン【VT250スパーダ】、4スト単気筒【GB250クラブマン】など、非常に充実しています。世はレプリカブームでバイクブームの嵐が吹き荒れていた真っ最中でもあり、毎月のようにニューモデルが発売されていました。
250ccクラスで王者に輝いたVT250Fの登場から6年、目まぐるしく移り変わるバイクブームの中で、先鋭的路線ではなく、より穏やかに乗りやすく進化したのが88年型のVTZ250です。
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解説記事更新日：2022年02月06日

1989年のVTZ250はカラーリングが変更され、《パールクリスタルホワイト・グラニットブルーメタリック》のツートーンとなりました。価格も1万円下げられています。
水冷V型2気筒エンジンは前年モデルと同様で、最大出力40馬力/12,000回転も継続です。
VTZ250の原点は、82年にスーパースポーツ路線で登場した【VT250F】です。水冷式V型エンジンやインボードディスクなどによって人気を集めましたが、2スト勢のライバルが次々と出現したことで路線変更、速さは2ストの【NSR250R】に譲りました。そしてカウルレス、フロント17インチホイール等でネイキッド路線に振られたのがVTZです。
1989年と言えば、83年あたりから始まったレプリカブームも陰りを見せ始めた頃で、同時に、次に到来するネイキッドブームの牽引車（カワサキ【ゼファー】）が発売された年でもあります。オンロードバイクが、《カリカリに尖ったレプリカ路線》と《気負わず乗れるネイキッド》の二極化し始めた時だと言ってもいいでしょう。
そんな時代において、VTZ250は中型初心者や女性ライダー層の支持を集めていました。そして、エンジンの高耐久性やV型のスリムさによってバイク便ライダーからも支持されました。
VTZ250は、88年発売の【VT250スパーダ】と共にVTの車名を引き継いでいきますが、このエンジンを搭載して「VT」と名前のつく車種は、89年式のVTZ250が最終となりました。高回転までストレスなく伸びるV型エンジンは熟成の域に達しており、このバイク最大の魅力とも言えるのです。
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解説記事更新日：2022年02月06日