1986年にデビューし、類稀な運動性の高さで瞬く間に「ゼロハンスポーツ」というジャンルを開拓し、その盟主となったヤマハ・YSR50。しかし、ホンダ・NSR50登場後はスペック面で遅れをとる事が続き、その現状を打破すべく開発されたのが本機・TZM50R。
前後12インチというホイールサイズはYSRと同じではあるものの、TZR50RベースのエンジンをNSR50と同等サイズの専用設計フレームに搭載。剛性比ではYSR50のなんと150%という力の入れようで、φ30㎜正立フォーク&ビルシュタインタイプリアサスと当時最高水準の足回りを採用。加えてキャブレターの大径化、掃気ポート拡大にクラッチ強化など、心臓部の補強もかなりのもの。おまけに軽さを追求したアルミ製中空キャストホイールまで実装し、乾燥重量78kgという驚異の軽さまで実現。それだけの豪華仕様としながらも、新車販売価格は27万9000円と控え目で、1993年当時のゼロハンライダーたちを大いに喜ばせました。まさに最後発の利点を余すところなく活かし、総合力ではNSR50を凌ぐほどの実力を見せつけましたが、大容量ラジエター装着ながら冷却系に不安があり、オーバーヒートしやすいといった弱点も。面白いのはレプリカモデルでありながら、キックだけではなくセルスターターも実装していた点で、ビギナー泣かせのポイントであったケッチン対策まで施し初心者への間口を広げたところ。標準での加速力もTZR50R以上のものでしたが、YECからリリースされた各種レース用パーツも豊富に展開され、12インチゼロハンスポーツカテゴリを大いに盛り上げてくれました。1994年には、前年にWGP-2クラスを制した原田TZ250Mのカラーリングを再現した「テルコールカラー」を限定1,500台で販売(4KJ2)。NSR50と同様、1999年に製造を終えるまでの間、ミニバイクレース界のエースとして支持されました。
現在の中古バイク市場においては、かなり乗り込まれた車両が大半ながらも、平均取引価格帯は20万円前後と高水準。2020年度はコロナ禍における中古バイク全体の需要が高まった背景もあり、車両価値を大きく上昇させたモデルのひとつです。それだけに実動車であれば10万円以上の買取価格も珍しくなく、コンディション次第では30万円台も十分視野に入るでしょう。
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解説記事更新日：2022年03月27日

1994年にヤマハから新登場したTZM50R。
TZR50Rの派生系として登場し、エンジンには水冷2ストローク単気筒を採用、最高出力はTZR50Rと同じく7.2PS/10,000rpmを発揮、フレームにはエンジンを剛性メンバーとして組み込んだダイヤモンド型を設定。足廻りでは前後油圧式ディスクブレーキに加えてリアブレーキにはブレンボ製のマスターシリンダーを採用。TZRタイプの中空3本スポークキャストホイールは前後12インチで、フロントにはテレスコピックフォーク、リアサスにはビルシュタインタイプのガス封入オイルダンバーを搭載した。
カラーバリエーションにはラジカルホワイト×ディープバイオレットメタリック1、ラジカルホワイト×ビビッドレッドカクテル1の2色を設定。
また、1993年に原田哲也選手がWGP250タイトル獲得を記念したTelkorカラーバージョンも用意された。中古車市場では往年のレプリカモデルとして人気も高く状態によって30万円〜60万円で販売されており、中でもTelkorカラーバージョンは人気が高く1段高い査定額が期待できるだろう。
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解説記事更新日：2022年03月27日

カラーチェンジを受けて発売された1997年モデルのTZM50R。
ボディカラーにはラジカルホワイトを設定。
ライバル車には当時日本国内で催された数々のミニバイクレースにおいて優勝台を争ったホンダのNSR50が挙げられる。1997年モデルの最高出力はTZM50Rと同じく50ccクラスの規制値最大であった7.2PS/10,000rpm、また、乾燥重量も同じ78kg。2台のパワーウェイトレシオは共に同数値の10.8kg/PSとなっており、知名度と人気ではホンダのNSRが圧倒的だったものの、走りではまさに50/50であったと言えるだろう。
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解説記事更新日：2022年03月27日