FLHTK114 ウルトラリミテッド買取査定事例｜使用感有の2019年モデル

「 King Of Harley 」の称号が付与されているFLHTK ウルトラリミテッド。
買取致しました2019年モデルでは、シリーズ3世代目となるMilwaukee-Eight114 (1868cc)エンジンへと進化しFLTRU ロードグライドウルトラと共にツーリングファミリーではじめて400万円超のメーカー希望小売価格を付けました。 （CVOファミリーにおいては、FLHTKに意匠が施されたFLHTKSEが2014年モデルでハーレー史上初の500万超えを達成しています）
更に、132リットルのラゲージ容量と416kg超の車両重量もロードグライドウルトラに次いで随一であることが「KING」たる所以でしょうか。

所有すること自体がステータスといえる本機ですが、売る際のリセールバリューも「キング」なのでしょうか？
2020年モデル以降の現行ツーリングファミリーのモデルと、査定額の指標となっている業者間オークションの落札額で比較してみましょう。

高く売れるツーリングファミリーの現行機
	平均落札額	最高額	最低額	台数
FLTRK114	333万円	350万円	310万円	3台
FLHXST117	310万円	310万円	310万円	1台
FLHXS114	253万円	359万円	197万円	10台
FLTRXS114	272万円	321万円	229万円	25台
FLHTK114	245万円	257万円	234万円	3台

2023年モデルで現行となっているツーリングファミリーにおいて最も高く売れる機種はロードグライドリミテッドFLTRK114。 2019年までウルトラリミテッドと並んで王座に君臨していたFLTRU ロードグライドウルトラの進化版として2020年モデルでデビューした機種です。

第2位はツーリングファミリーで最初にM8 117 (1923cc)エンジンを搭載した2022年登場のST シリーズからFLHXST ストリートグライドSTがランクイン
第3位と4位はロードグライドの上位グレードFLTRXS ロードグライドスペシャルとFLHXS ストリートグライド スペシャル。そして第5位が本機ウルトラリミテッドとなっています。
最新の高く売れるツーリングファミリーのランキングはコチラでご確認いただけます。

取引台数から見えてくる人気では、ストリートグライドの上級グレードが他のツーリングファミリーを圧倒している様子が見て取れます。
残念ながら業者間市場での平均取引額で比較すると買取時の再販価値では「KING」には至らなかったように見えるウルトラリミテッドですが、取引台数の少なさに着目する必要があります。
事実、直近1年間に取引されたFLHTK 114の3台は全て2019年モデルです。
最新2023年モデルは19年モデルから40万円以上もメーカー希望小売価格が高くなっており期中にアップデートも入っています。
その意味で、FLHXST117で取引された1台が2022年モデルである事と比較すると不利と言えます。

中古市場での流通台数の少なさは、必ずしも不人気を示すものではありません。コロナ禍によって極端に新車の供給自体が細った2020年モデル以降は特に供給の事情が影響しているケースが多いと言えます。 本機FLHTK 114もその影響を少なからず受けていると考えられますが、その点を踏まえて本機の買取相場について掘り下げてみましょう。

FLHTK 114の業者間取引額
落札額	年式	評価点	距離	カスタム
257万円	2019年	7点	3km	ノーマル
244万円	2019年	7点	133km
234万円	2019年	7点	1.1万km	ノーマル

上記は、直近1年間に業者間市場で取引されたウルトラリミテッド 114の3台を落札額の高い順に並べた表です。 横軸では査定額に影響を与える3要因『年式・状態・カスタム』を比較しています。

3台全てが2019年モデルである点は上述の通りで、アップデートが入り年々メーカー希望価格が上昇してきた背景から高年式モデルであれば更に落札額は伸びることは想像に難くないと言えます。

上記表の中で特に注目したいのが評価点です。3台いずれも7点（超極上）評価が付いている点は驚きに値します。
7点はプロが見ても新車と遜色が無い状態を示す評価点で、発売から4年が経過して7点が付く確率は1％にも満たず、3台いずれも7点評価であることは重ねて驚異的です。
ハーレーは構成パーツの素材も塗装も逸品で劣化が出にくいのですが、それを通り越してオーナー様が非常に大切に維持されていたことを示す「KING」ならではの現象です。

2019年モデルの超極上車で、かつノーマル構成である点は3台とも同じですが、走行距離には個体差があり落札額に差が付いた理由となっています。
最上位257万円で落札されたのは走行距離3kmのほぼ未使用車、次点244万円で落札されたのは走行133kmの超極上車、そして234万円で落札された個体の距離は11,728kmとなっています。
踏まえると2019年モデルの上限は250万円台後半、超極上の評価が付いても走行距離が1万キロを超えてくると230万円台の落札額になることが、少ないデータから読み取れます。

以上の買取相場を踏まえて、やや使用感が見られた2019年モデル・FLHTK114 ウルトラリミテッドの査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 （尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額＝販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は97％相当となります）

ベースグレードカラーとなる「Vivid Black」の外装を纏ったオーナー様の2019年モデル・ウルトラリミテッド。
先ずは見た目の印象を左右する外装から査定を進めてまいります。

本機の外装は、ツーリングファミリーの象徴であるバットウィング・フェアリング（ロードキングシリーズを除く）とハードケース・サドルバッグに加えてツアーパック（トップケース）が装備されている点もKing Of Harleyたる一因です。
その容量は132リットル。最も売れている原付2種スクーターPCXのシート下の収納容量 約30リットルと比較すると、規格の違いが際立ちます。
その他、外装はタンク・前後フェンダー・ラジエーター内蔵のロアフェアリング・バッテリーカバーで構成されています。

一見して綺麗な輝きを魅せる外装ですが、新車や超極上の評価が付くウルトラリミテッドと比較すると艶感は若干後退しています。
細かく見ていくとバッテリーカバーにデカールが貼付されていますが、こちらは簡単に剥離可能ですので買取額への影響はありません。
残念であったのは、外装全体の磨き傷。ししてタンクやロアフェアリング、バットウィング フェアリング、サドルスケースなどに見られた傷、そしてフェンダーチップの傷と錆びなどです。
外装全体の磨き傷はコンパウンド磨きやコーティングによってある程度目立たなくすることは可能ではありますが、処理にコストが掛かる点、目立たなくなっても残ることから買取価値を刻む判定に。
伴い外装の査定評価は5点判定に。

続いては肝心のエンジンを査定していきます。
オーナー様の愛機である2019年モデルからM8 114 エンジン(1868cc)を搭載しているウルトラリミテッド。
M8 114はFLHTKにシリーズおいて3世代目に位置するエンジンです。ウルトラリミテッドの登場は2010年で当初はTwinCam103エンジン (1689cc)を搭載していました。 2014年モデルでは、ヘッドを水冷化したTwinCooledエンジンを搭載したFLHTKTCが追加され、ScreamingEagle110エンジン (1801cc)を搭載したFLHTKSEがCVOファミリーから登場。 2015年にはローダウン仕様のFLHTKTCLが追加されました。
2017年モデルでは、FLHTKとFLHTKLのエンジンがM 8 107 (1745cc)に刷新され、CVOのFLHTKSEはMilwaukee-Eight114へアップグレード。
2018年モデルで、CVOのFLHTKSEはM 8 117 (1923cc)へアップグレードさて、2019年モデルで、FLHTKは M8 114絵人へアップグレードされ、2023年モデルでは唯一のシリーズ現行機となっています。

余談が長くなりましたが、オーナー様のウルトラリミテッドの走行距離は20,522kmと同機2019年モデルの相対的な比較で見ると多いと言えます。
先ずは目に見える範囲をチェックしていきます。メッキ処理されたプライマリーカバー、ダービーカバー、エンジンヘッド・ロッカーカバー、エアクリカバー、クランクケース、ポントカバー、トランスミッションサイドカバー などは光沢があり輝きを放っています。しかしメッキ処理されていないシリンダーブロックのフィンの内側やクランクケース上部に軽い白錆びが見れます。洗車後や雨天後に水分が残り易い箇所ですので綺麗に維持するにはマメな 吹き上げが要求される箇所です。細かい部分ですが軽いマイナス査定に。

ブラックアウトされたスイッチハウジングに収納されたスターターでエンジンを始動させます。
始動は一発、Bassaniの社外マフラーが独特のサウンドを奏でます。アイドルの回転数は1,000回転前後。インジェクションチューニングが済んでいない様です。。 こちらは最悪、焼付く可能性もあるのでインジェクションチューニングは必須。純正マフラーもお持ちでないことから、買取価値を落とす結果に。
エンジン自体はクランクやシリンダーブロック本体からも異音は無かっただけに上記の減点が残念でありました。

2019年モデルでBOOM! GTS（18年まではBOOM! GT）へと進化を遂げた本機。
電装系の査定では、BOOM! GTSや各種保安部品の動作チェックなどを行います。
トラクションコントロールやクルコンなどの電子制御機構も正直に言えば動作確認したいところですが。
最大164Nm（3,000rpm）と低回転寄りですが、ブレイクアウトなどソフテイルの軽量級（といっても300kg超）のグンと発信する滑り出しと比べるとマイルドなものの400kg超の車体は取り回しが大変です。万一オーナー様の愛車を傷つけでもしたら大変なことになってしまいますので、電子制御機構の確認は割愛しております。

日本語対応を果たし処理速度が大幅に向上した6.5インチスクリーンのBOOM! GTS。音声認識やタッチスクリーンに性格に反応し4つのスピーカーから出力します。
残念であったのは、タッチスクリーンにやや強めの使用感が出ている点。跨って目に付きやすい箇所に傷が多いことから軽いマイナス査定に。

ウィンカーやヘッドライトにホーン、ハザードなどスイッチハウジング格納の各種スイッチも正常に動作します。ただしこちらにも使用感が認められ見た目の印象を損ねています。伴い細かく買取価値を下げる結果に。

フロントはSHOWA製デュアルベンディングバルブ・フロントフォーク、リアはアジャスタブルプリロード機構を備えたエマルジョンショックで構成された本機の足回り。 足回りの査定では、前後サスペンションを中心にホイールやブレーキ回りを見ていきます。 前後のサスペンションはオイル漏れも無く減衰もコシがあり機能的には申し分ございません。ただしメッキ処理されていないインナーチューブの内側にはサビが浮いており、アクスルシャフトキャップ周辺にも軽い使用感が滲んでいます。

フロント17 / リア16インチのImpeller Contrast Chromeはパッと見て軽い使用感が出ています。各所に傷が入りスポーク部の所々で塗装剥離が見られるのが原因です。brembo製品を誂えたブレーキ回りでは キャリパーには軽い変色が、ブレーキディスクには細部にサビが出ています。
足回り各所で認められた使用感が買取価値を若干落とし総合評価は極上には至らない5点判定に。

カスタム個所は2点で、以下のパーツが社外品に交換されています。
マフラー（Bassani Road Rage 2-Into-1）
タンクキャップ（Skullデザイン）
共に純正品は欠品となっています。タンクキャップは安価な品の為査定額への影響はありませんが、Bassaniのフルエキは1250US＄相当なので純正品付きであれば確実なプラス査定となっていたのが残念です。
何れの社外品も傷が付いており使用感が出ていた他、社外マフラー変更に伴うインジェクションチューニングが未完了であった点は買取価値を落とす結果に。
アイドル時に排気音のトーンが途中で変化する（スポンスポンといった綺麗なサウンドからポコンポコンといったサウンドに変わる）のもその影響と思われます。

ハーレーの日本仕様はインジェクションマッピングがローカライズされていますので、排気管を変えた際にはインジェクションマッピングの書換えが推奨されています。 気筒当たり934ccもある半空冷エンジンですので、コンピューターが補正されていない状態で走行し続けると最悪のケースでは焼付く可能性も否定できません。
その意味で純正品の欠品は予想以上に買取価値を下げる結果に。。

車検切れが間近に迫っていますので、再販時には車検を通す必要があり、その際には純正マフラーが必須となります。
タマ数の多い車種であれば純正の中古マフラーを安価に入手できるため、純正戻しの簡易さから査定額の減額は軽微で済みますが、 タマ数の少ないM8 114 ウルトラリミテッドの純正マフラーは中古で出回っていないのが痛いところであり残念です。

査定させて頂いたオーナー様の2019年モデル FLHTK ウルトラリミテッド。査定の総合評価は5点。走行距離は2万キロ強。 使用感が散見された点が響き極上には至らない判定となりました。

上段で触れた業者間オークションに出品した場合、想定される落札額は強気予想で210万円、弱気予想で200万円です。 要インジェクションチューニング（実費96,800円～＋諸経費）、又は要入手の純正マフラー（10万円～？＋工賃）を考慮するともう一段下げる可能性も否定できません。
踏まえると、買取業者としては確実に赤字を出さない190万円以下、出来れば185万円以下の査定額を提示したいのが本音です。

弊社バイクパッションが提示いたしました査定額は210万円。
相場的には大赤字覚悟の金額を提示できた理由は以下3点です。
・日本一中古ハーレーを売っている系列販売店の存在
・車検用の対応マフラーを常備している
・市価より安価に整備可能な自社工場の存在

「査定の時間も楽しめたし、ディーラーの査定額より高く気持ちよく売却できる」とオーナー様のご返答を受けて買取の成約となりました。

ローンの残債が150万円ほど残っているとのことでしたので、以下の一連の手続きは弊社で無償サポートさせて頂きます。

（1）ローンの一括返済
（2）完済証明書の取得
（3）所有権の解除（販売店押印の譲渡証明書の取得）
（4）廃車手続き

残債金額の詳細については、FAXで早々に確認が取れて145万円であることが判明いたしましたので、ウルトラリミテッドの買取額210万円から、一括返済代金の145万円を差し引いた65万円を翌日にオーナー様のお口座に振込いたしました。
以降は弊社にて一連の処理を薦め、廃車手続きを完了させ次第、オーナー様に廃車証のコピーをご郵送差し上げて買取の完了となります。

今回はFLHTK ウルトラリミテッドのご売却を誠にありがとうございました。