「タイヤの溝も無くなっていて...スリップして結構派手に転倒して....」と仰るオーナー様。
「事故現場が自宅に近かったので、何とか自宅まで押してきたのはよかったものの、さて?どうしようかと...」とオーナー様から査定の相談を受けて出張査定にお伺いさせて頂きました。
査定現場で拝見させて頂いたのは転倒によるダメージに加えて、電装系のトラブルも併発したのかエンジンの始動が確認できないYZF-R6。まずは2003年モデルの買取相場からご紹介させて頂きます。
2003年モデル YZF-R6の買取相場
1998年末のデビュー以来、ミドルクラスの傑物として高い評価を得ているヤマハ・YZF-R6。
数々のアップデートを重ね、速く走るための無駄なものを削ぎ落としたレーシーさが際立ったマシンで、現代の零戦とも言うべき軽快かつ俊敏な動きと鋭いスロットルレスポンスが自慢。
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データを見ると。
本機・YZF-R6(5S型)2003年モデルは、直近12ヶ月で10台の実働車が取引されています。
海外専用モデルという割引材料はあるものの、ミドルクラスSSの金看板とも言うべき知名度の高さからすると、いささか少ない印象を受けるでしょう。
しかし、この数字は本機が購入されてから手放すケースが少ないという証でもあり、平均取引価格は288,000円と20年近くも昔のSSとしてはかなり高い水準。
最高取引価格は35万円、最低取引価格は23.4万円とコンパクトなレンジで取引されています。下落基調であった相場もここ2年はコロナ禍の旺盛な中古需要を受けて下げ止まり若干上昇傾向にあります。
2005年モデル以降と比べると平均取引価格は見劣りするものの、これは仕様変更に伴って随時進化していく現行SSでは型落ちに伴い相場が下落していくのは一般的な傾向です。
2003年型の上値は35万円となっていますが、高価な社外品が入ったフルカスタムであれば相場以上に大幅な上値も期待できます。 実働状態にない、事故車不動車に目を転じると直帰12か月間で3台の取引があり、最高額は20.5万円、最低額は9.5万円で、16.7万円が平均となっています。
事故不動車は、下値はパーツ取りでの価値、上値は再商品化後の価値から修復コストを差し引いた額で概ね取引が成立しています。
1999年の発売以来毎年のようにアップデートを重ねているYZF-R6は、サーキット仕様にチューニングされるケースも多くパーツ確保のために不動車両をスペアとして探しているユーザーも一定数います。またカスタム車の比率が高いことから確実に車検を通すことができる純正マフラーもパーツ取り需要があります。そのためパーツ取り用途の全損事故車でも底値が固い車種となっています。
以上の買取相場を踏まえて、転倒事故後にエンジンが不動化していたYZF-R6(5S型)2003年モデルの査定内容についてご紹介させて頂きます。 (※上記の取引額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、買取相場は9掛け相当となります)
【2003~04年型YZF-R6】相場の推移
【2003~04年型・実働車】業者間の取引価格帯
【2003~04年型・事故 不動車】業者間の取引価格帯
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データ
損傷や使用感は強いもののフレーム状態は良好
査定現場で拝見させて頂いた2003年モデルのYZF-R6
車体の左側広範囲に及ぶ転倒によるダメージが生々しく、転倒歴が3度ほどあるそうで、現車は各部がキズだらけでした。エンジンも塗装の下地が剥離している箇所が散見され、そこからサビによる腐食も。カウル類一式の傷み度が目立ち、エンジン不動状態というかなりの難点を抱えています。
暫く放置されていたこともあり使用感が色濃く出ていますが、フレームに関してはかなり良好。
汚れてはいてもキズはほぼなく、フレーム単体でも値段はつけられるとの判定に。
奇跡的にダメージ皆無のフロントフォーク
全ての転倒・事故歴が横へ倒れるものであったため、奇跡的にノーダメージであることが判明したフロントフォーク。
汚れてはいるもののホイールも十分再利用可能なレベルで好材料に。
動きがよく年式の割には非常に良好なリアサスペンション
2003年製としては非常に珍しいほど動き具合のよいリアサス。
目視したところ腐食等もなく、丁寧に汚れを落とし切れば十分に価値あり
使用感強めながら中古パーツとして再販売可能なレベルにあるARATA製バックステップ
攻める走りを好まれたオーナー様が換装したARATA製バックステップキット。
擦り跡目立つもサビや塗装の剥離はなく、単体中古パーツとしての価値ありと判断させていただくことに。
多少のキズ・凹み確認できるも再利用可能な純正マフラー
数度の転倒によるものと思われるキズ・凹みが確認できる純正マフラー。
カスタム車両・レース仕様車の頻度が高いYZF-R6の場合、車検非対応マフラー装着のままとなっているケースもあることから、再利用可能な純正マフラーは十分な価値があります。
総合評価と査定額
1998年のデビュー当時、事実上のクラストップである120PSをマークし、アルミツインチューブ採用による驚異的な軽さを実現したYZF-R6。
まさにピュアレーサーと言えるほどの高い実力を誇り、スーパースポーツ世界選手権での華々しい活躍も納得のいく素晴らしいモデルです。
今回ご相談を頂いたオーナー様も、2000年当時の目覚しい活躍ぶりに憧憬を馳せて購入されたとのことでしたが、油断によって痛々しい姿にしてしまった、と非常に悔やんでおりました。
そんな現車の状態ですが、車体左側全体に走る擦りキズ、エンジンにも残る路面接触の爪跡、外装類に確認できる無数のキズなど、事故のダメージを抜きにしてもかなりくたびれたコンディションでした。
カウル類の割れ欠けこそなかったものの、表面を走る擦りキズの数々は修復を極めて困難にしており、カウル類は残念ながら再利用不可判定。
事故の衝撃で電装系のどこかに異常が発生したらしく、イグニッションをONにしてもメーター類は非点灯のままであり、当然ながらセルも回せませんでした。 電子制御の塊と言っても過言ではない大型SSの場合、エンジンの始動性は買取査定の面で非常に大きなウェイトを占める重要ポイントのひとつだけに、ここでのマイナスは大きな痛手となりました。
しかしながら、押し引きをチェックした際のハンドリングは極めてスムーズで、フロントフォークへのダメージが皆無であったことから廃車処分費用をいただくのではなく、買取にて対応可能な状態にあることが判明。
事故後、雨風にさらされたことによる汚れはあるものの、前後ホイールやスイングアーム、フレームといった需要のある部位へのダメージは見受けられず、十分価値のある状態であったことが明暗を分けました。
より詳細にチェックさせて頂きましたところ、リアサスペンションも非常によいコンディションを保っており、動きもしなやかでコシも上々。整備記録を拝見させて頂き、 中古車で購入された際に新品へと交換されていた事実が浮上し、査定金額の底上げに一役買ってくれました。
また、キズや凹みはあったものの、十分再利用可能な純正マフラーが装着されていたこと、使用感の強さによりそこまで大きな上積み材料とはなりませんでしたが 、ARATA製バックステップキットやブレーキシステム一式の状態のよさが評価材料に。
それらの好材料を積み重ねた結果、2016年当時の同程度の事故車両の平均取引相場を上回る165,000円という買取価格をご提示させて頂くに至った次第です。
この高額買取の理由はもちろん、弊社メカニックによる修理を経ての自社店舗販売を念頭に置いてのものでしたが、修理に伴う各種パーツのストックが弊社工場に揃っていたこともあって実現可能でした。
買取成約後、現車は横浜の弊社修理工場にてフレームの微細な歪みについてもチェックを受け、約1ヶ月のケアを受け事故再生車両として復活。
店内での販売展示からわずか3日後にお気に入り頂いたお客様へ事故車であったことを申し上げた上で、レース仕様車にするためのベースとしてお渡しさせて頂くことができました。
JR05型 2003年モデル
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 15台
- 平均価格: 288,200円
- 最高価格: 350,000円
- 最低価格: 2534000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 3台
- 平均価格: 167,667円
- 最高価格: 205,000円
- 最低価格: 96,000円
相場情報:2021年10月31日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。