900ccは、カワサキにとってマジックナンバーです。900ccという絶妙な排気量をもって発売されたバイクはいずれも名車として誉れ高く、1972年発売の【Z1】、84年の【GPZ900R】、2018年の【Z900RS】があります。80年代当時、750ccが排気量自主規制の国内市場において、GPZ900Rを750ccにスケールダウンして発売されたのがGPZ750Rです。
映画「TOPGUN」にも登場して世界的ベストセラーになった900のボア・ストロークを変更、900の72.5×55mmを70×48.6mmに変更、748ccとしています。
このエンジンは、水冷4ストDOHC4気筒16バルブ、9,000回転で77馬力を発生します。今では珍しくなくなったサイドカムチェーンを世界で初めて採用したのも、このエンジンです。ホイールはフロント16+リア18インチで、80年代当時流行した16インチは高い旋回性を示し、非常にクイックなハンドリングを示します。
900との外観上の違いはわずかで、900ではメーターパネル左がタコ、750ではスピード、またサイドカバーの車名が違うぐらいです。もちろんパワーは900の115馬力に遠く及びませんが、クラス最高の77馬力を持つGPZ750Rは、ライバルの【CBX750ホライゾン】、【XJ750EⅡ】、【GSX750S（カタナ）】が空冷だったのに比べてアドバンテージがありました。
しかし他車も次々と新型車を発売、ホンダはV4の【VF750F】、ヤマハは5バルブ【FZ750】、スズキはハイパフォーマンス【GSX-R750】を発売、900ccベースの750Rは苦境に置かれます。
その結果、1986年に後継機種の【GPX750R】が登場、GPZ750Rは意外に短命に終わりました。3年間発売された中で、マイナーチェンジもほとんど行われていません。900Rが84年から20年にわたって製造されたのとは対照的です。
その結果、現存する車両も900に隠れて少なくなっています。同じスタイルなら900に乗りたいと思うのが心情ですが、750もウェルバランスの1台です。
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解説記事更新日：2022年05月11日

1984年式のGPZ750Rは、同年に発売されたGPZ900Rを国内向けにスケールダウンしたモデルです。既にGPZ900Rは最高速253km/h、ゼロヨン加速10.543秒という圧倒的な高性能を示し、一躍「世界最速」の名をほしいままにしました。映画「TOP GUN」に登場したことも人気を後押ししました。
そのエンジンとボディはほぼそのままで、ボア×ストロークをダウンして748cc、77馬力としたのがGPZ750Rです。「ほぼ」と書いたのは、900と750の違いはわずかにサイドカバーの車名ステッカーと、メーターパネルぐらいだったからです。径の大きい左が900ではタコメーター、750ではスピードメーターになっています（年式により若干異なります）。
カラーリングは、《レッド×グレー》《ブルー×グレー》《ブラック×レッド》です。
まだ国産750cc超のバイクは逆輸入に頼るしかなかった時代、900ccと同じスタイル、同じメカ、水冷エンジン、750ccクラス最高の77馬力を持つGPZ750RはライバルのCBX750ホライゾン、XJ750EⅡ、GSX750S（カタナ）が空冷だったのに比べて一歩アドバンテージがありました。
他の新しいメカも数多く、4気筒16バルブ、フロント16インチホイール、サイドカムチェーン、フロントアンチノーズダイブなどを搭載していました。今かえりみれば、750Rは900Rの陰に隠れて目立たない存在ですが、1980年代なかばの最速ナナハンでもあったのです。
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解説記事更新日：2021年07月07日

1985年式のGPZ750Rは、カラーリングとグラフィックが変更されています。
84年式ではタンクのニーグリップ部境界で色が分けられていましたが、それがカウルを含めてよりシャープな配色になりました。それが《ファイヤークラッカーレッド×ギャラクシーシルバー》で、他は《エボニーブラック》です。
販売先は日本国内と欧州向けですが、後者では最高速230km/hを記録するなど、高性能ぶりは兄貴譲りです。これは同時期の750Turboを上回るものでした。
しかし、当時のバイク人気の中心は400ccクラスにあったとはいえ、他メーカーも次々と高性能車を送り出します。ホンダはV型4気筒16バルブのVF750F、ヤマハは5バルブジェネシスエンジンのFZ750、スズキはクラス最軽量ハイパフォーマンスGSX-R750を発売します。400ccや250ccの激戦の陰で、750ccクラスも激闘を重ねていたというわけです。
一方で兄貴分のGPZ900Rは世界的ベストセラーとして君臨し、日本国内にも逆輸入車が多数走り始めていました。
GPZ750Rには、世界と国内でライバルたちが熱い闘いを繰り広げていた、そんな80年代の熱い雰囲気が宿っています。
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解説記事更新日：2021年07月07日

1986年式のGPZ750Rは、カラーリングとグラフィックが変更されています。《ファイヤークラッカーレッド×グレー》、《ルミナスポラリスブルー×ギャラクシーシルバー》です。
しかし、750Rの人気はZ2に比べればあまり盛り上がりませんでした。どちらも兄貴分の900ccモデルをスケールダウンした点では同じですが、違いは時代性と多様性ということなのでしょう。GPZ750Rのクラス最高出力の77馬力、水冷エンジン、旋回性の高いフロント16インチホイール等の性能は高いものの、10年前から比べると逆輸入車のシェアもかなり違います。バイクの好み、車種も細分化されています。加えて、もともとは90ccベースの車体ですから、900ccの115馬力と750ccの77馬力の差が大きかったのも事実です。
GPZ750Rは、84年の登場からマイナーチェンジを受けず、カラーリング変更のみで86年モデルが最終型となりました。しかしながら750Rは、GPZ900Rの雰囲気を国内規格で実現したモデルでもあります。そのうえ、どのクラスでも4メーカーが死闘を繰り広げていた、80年代の熱い残照も感じられるというものです。
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解説記事更新日：2021年07月07日