ボンネビル T120 SE買取査定事例｜良好判定の2020年式

ご存知のことと思われますが、ボンネビルT120という機種は史上2回登場しています。
1つは、市販最速機として1959年に登場した初代650cc ボンネビルT120で、トライアンフ最速の黄金期を象徴する機種です。 もう1つが、2016年に登場した1200cc ボンネビルT120です。こちらは2001年から続く復刻版ボンネビルにおいて最初に水冷化を果たした機種でオーナー様の愛車が該当いたします。

現在の買取価値としては、初代が超希少なプレミアム機となっている一方、水冷ボンネビルT120も現行機として高いリセールバリューを誇っています。 ただし2021年には大掛かりなアップデートを果たし、当初136万円～（以下いずれも税抜）であったメーカー希望小売価格は 2022年モデルでは147.2万円～となっています。そのため年式によって若干、買取相場が異なります。

【年式別】ボンネビルT120 の業者間取引額
	平均落札額	最高額	最低額	台数
2016年型	74万円	88万円	60万円	2台
2017年型	97万円	117万円	79万円	7台
2018年型	102万円	114万円	92万円	3台
2019年型	-	-	-	0台
2020年型	123万円	145万円	90万円	12台
2021年型	113万円	118万円	107万円	2台
2022年型	129万円	136万円	125万円	台

7kgの軽量化やクルコン標準化にbrembo製キャリパー採用など進化を遂げた21年モデルを境に大きく相場が変わると予想していましたが、実際には2020年モデルから相場が高くなっています。
2020年モデルは取引台数も突出して多くなっていますが、その理由はBUD EKINS SPECIAL EDITIONの存在にあります。 以下では買取させて頂きました2020年モデルについて掘り下げ、先ずはカラー別の落札額を見てみましょう。

【カラー別】2020年型ボンネビルT120の業者間取引額
	平均額	最高額	最低額	取引台数
白/赤	123万円	145万円	90万円	台
黒/橙	126万円	142万円	111万円	2台
銀	126万円	126万円	126万円	1台
黒	119万円	137万円	95万円	3台

バド・イーキンスSEを含め2020年に設定された各カラーのメーカー希望小売価格も似通っていることから、カラーリングによる中古相場に大きな差異は見えません。
続いて状態別の相場を見てみましょう。

【状態別】2020年型ボンネビルT120の業者間取引額
評価点	平均額	最高額	最低額	取引台数
6点 極上	135万円	145万円	126万円	6台
5点 良好	111万円	137万円	90万円	6台

評価点別の平均落札額に着目すると、車両状態が落札額に直結する結果となっています。
評価点について補足すると、7点は新車と遜色のない状態。6点は小傷など極細かい減点が認められる極上車。5点は新車と比べると使用感が認められる良好車です。5点以上はルーティーンの通常整備で再販に回せる中古車となります。

同じ評価点ながら最高額と最低額の差が「6」点では19万円、「5」点では47万円も開いていますが、その理由は「走行距離」と「細かなの状態差」そして「落札時期」になります。
「落札時期」とはコロナ禍根で新車供給が細り高騰ししていた中古バイク全体の相場が2022年秋以降に反落に転じたことから、2022年夏までの取引額が高く、秋以降は同じ状態でも取引額が低くなっていることを指します。
「細かな状態差」とは、総合的な評価点は5点で同じであっても、重整備となるマイナスが入った4.6点の車両と、特別な付加整備を必要としない5.4点の車両は共に整数の総合評価では「5」点となることを指します。
「走行距離」は低走行の個体の方が高額落札に直結しやすいことを指します

• ▼2020年型の落札額と状態の傾向
• 130万円以上で落札された6台
  走行距離は0.04～0.3万キロで評価点は5.8～6.8点
• 120万円台で落札された2台
  走行距離0.6～1万キロで評価点は5.4～6点
• 100～110万円台で落札された2台
  走行距離0.2～0.3万キロで評価点は4.8～5点
• 90万円台で落札された2台
  走行距離0.1～2万キロで評価点は5～5.4点
  最下位の個体はエンジン警告灯が点灯

総じて走行距離と評価点で落札額が説明できる範囲に収まっていると言えます。
以上の買取相場を踏まえて、2020年モデル・バド イーキンスSEの査定内容と買取額についてご紹介させて頂きます。 （尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額＝販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は95％相当となります）

オーナー様の愛車ボンネビルT120 BUD EKINS SPECIAL EDITION（バド・イーキンス スペシャルエディション）。
1963年公開の映画「大脱走」でSteeve McQueenが駆ったマシンがT120であり、そのスタントマンを務めたバド・イーキンスの名を冠したスペシャルエディションです。
SEの違いは、当時風の2トーンに塗られたタンクに貼付されたロゴは当時のグラフィックを再現し最初のTが大きくあしらわれている他、サイドカバーに「BUD EKINS」の文字が入り、フロントフェンダーに「BUD EKINS SHERMAN OAKS CALIFORNIA」と印字されたデカールが添付されています。 因みにSHERMAN OAKSはバド・イーキンスがオーナーを務めていたトライアンフ・ディーラーショップの所在地です。

SE仕様の特別点であるタンク・フェンダー・サイドカバーといった塗装面の外装は色艶が良く綺麗です。
細かいところで、タンクパッドの目立つ変色、タンクキャップ付近の小傷、リアフェンダーにやや目立つ線傷が入っていたのが残念です。

シートはメーカーアイテムのベンチシートがセットされています。シートとしては高価な品ですが、ボンネビルT120の多くで採用されているアイテムであることから差別化要因には至らずプラス査定は小幅に。
また両サイドにパニアレールとパニアケース、そしてスクリーンを装備しています。こちらはオプション品とあって買取価値の向上に寄与いたしました。

59年登場の初代Bonneville T120から受け継いでいるバーチカルツイン構造のエンジン。本機2代目 T120では水冷化された1200ccを搭載していながら初代のシルエットを存分に引き継いでいます。
排気量アップと水冷化によって、2001年から登場した復刻版の空冷Bonnevilleシリーズの最終型から18馬力アップし最大80馬力となっています。

視認できる範囲から査定していきます。
フィン形状を残したシリンダーブロックは手が入りにくいのですが錆びは浮いていません。右側の3角形状がアイコンのクランクケースは左側にやや目立つ傷が入っています。 またメッキ塗装されたシリンダーヘッドカバーにも細かい傷が入ってます。オイル漏れなど大きく買取価値を下げる不具合はありませんでしたが、ラジエーターやインジェクターの細かい錆び等と合わせて若干マイナスの査定が入ってしまいました。

続いてエンジンを始動させます。一発始動でアイドリングは安定。吹け上りやギアチェンジも滑らかで機能的には不調を示す兆候はなく極めて好調です。それだけに細かな傷やサビで評価を落としていた点が残念です。

スポークやキャリパーにリアショックなど、手が入りにくいパーツが多く路面との接点が近いことから使用感で出やすいのが足回りです。
買取価値としてはフロントフォーク回り、次いでリアショックが基幹部品となります。KYB製の両サスペンションには要オーバーホール判定となるオイル漏れなども無く、高年式モデルとあってどちらも機能的には申し分ありません。
ただしツインのリアサスペンションには所々細かい錆びが浮いています。またnissin製キャリパーには細かい塗装剥げやボルトの錆、ブレーキディスクには錆、ホイールリムには各所小傷、スポーク各所には小錆が認められることから 極上には至らず良好判定に留まりました。

初代ボンネビルT120のフレームはダウンチューブ1本構成でしたが、後に2本になり、また1本に戻されるといった経緯を持っていますが、復刻版ボンネビルシリーズには2本ダウンチューブの管状スチールクレードル構造のフレームが採用されています。
フレームはエンジンと並んで買取価値を決定づける最重要パーツです。
ノーマル構成の車体には目立った外傷もないことからフレームの瑕疵はないと予想できましたが、その通り衝撃痕は皆無で綺麗な高い剛性を保持していました。
ただしスタンドやステップなど接合周辺部に細かい傷や錆びは見られ細かくマイナス査定が入る結果に。

電装系で大きな査定項目となるパーツはコンピューター類やメーター回りです。電装系はノーマル構成で電子機器は一通り正常動作し大きな減点対象はありません。 総じて綺麗な状態でしたが、灯火類のカバーの小傷、2連メーターのパネルが僅かに変色している点、キーシリンダー回りの小傷などが細かく買取価値を刻む結果に。

走行距離は7,850kmで総合評価点は5.2点となったオーナー様の2020年モデル ボンネビルT120のバド・イーキンス スペシャルエディション。
総体的には綺麗で状態良好でしたが、高年式モデルの高額車両とあって大切にケアされている車両が多く、細かい減点の有無で総体的な評価が変わってきてしまうのが事実。
上段で触れた業者間オークションに出品した場合に想定される落札額は120万円前後です。
120万円は買取業者にとっては転売額・販売業者にとっては仕入れ額に相当しますので、出品手数料や運送費などの経費と儲けを差し引くと116万円が競争力の高い査定額となります。

弊社が提示致しました査定額は125万円。
相場的には赤字必死の査定額ですが、修理単体での儲けを必要としない自社工場で徹底的に研磨することで6点に近い状態までリカバーできる点。そして単店舗ベースでは日本一バイクを売っている弊社直営販売店の出の再販も視野に いれたことで可能となった査定額です。
「査定も丁寧で好感が持てたし想っていた以上に高い金額だから」とオーナー様のお言葉を受けて現金買取のご成約となりました。