長期の単身赴任中に車検切れが迫ることに気付き、悩まれた末に車検前に手放すことを決意された現オーナーの藤井様(仮名)。留守を預かる奥様に委任する形で弊社へお声がかりとなり、ご自宅へ出張査定へお伺いさせて頂き現車を拝見することとなりました。
お伺い先ご住所が弊社履歴に残っていたことから、お義兄様が以前弊社に2009年型ハヤブサをご売却くださったご縁があることが判明。最短のスケジューリングでご相談当日にに早速ご訪問させて頂くことになった次第です。
査定内容に先立って先ずはMT-03の買取相場からご案内させて頂きます。
2016年モデル MT-03の買取相場
250cc版よりも力強いトルクを武器に、扱いやすいミドルクラスSSとして人気のあるYZF-R3ベースのストリートファイター・NT-03。
ベースのYZF-R3同様、頼もしい中間トルクと低速時の粘り強さ、加えて250ccと同じ車格による俊敏さがウリのモデルで、車検を厭わないユーザーからの評価はいたって上々。
ヤマハ車らしい軽快なハンドリングに加え、取り回しの面でも軽くて扱いやすく、非力な女性でも乗りやすいという点が人気を呼んでおります。
2022年現在では、昨今のコロナ禍における中古バイク全体が日常使いの利く足として再評価されたこともあり、本機MT-03も現行販売モデルとして需要が増加仲。
良好な個体は安定した価格がつきやすく、相場状況的にもまずまずのリセールバリューが期待できるモデルだと言えるでしょう。
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データを見ると。
直帰1年間で36台の取引があった2016年モデルの実働車。取引の最高額は39.8万円、査定額は15.2万円で、平均は29.5万円となっています。
約15万円の値幅の中で36台が取引されていますが、ボリュームゾーンは25~30万円となっています。 30万円以上で取引された個体は、走行距離の浅いノーマルの良好車が占めています。
25万円以下で取引された個体に目を転じると、走行2万キロ以上、強めの使用感、状態に難がある、のいずれかに当て嵌まる個体が中心となっています。
カスタムによって取引額が伸びる車種が多い中、MT-03の場合は、手の込んだカスタムや主流メーカー以外のマフラーなどは評価が伸び悩む傾向があります。
相場の変動についてはジャンル的にはSSに連なる現行モデルであるため、型落ちや年式落ちに伴い相場は下落していく傾向が強いといえます。
2016年型の直近5年間の相場を見ると緩やかに下落基調です。
以上の買取相場を踏まえて、事故車起こし疑いが濃い2016年モデルMT-03の査定内容についてご紹介させて頂きます。 (※上記の取引額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、買取相場は9掛け相当となります)
【2016年型 MT-03】相場の推移
【2016年型 MT-03】業者間の取引価格帯
買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される業者間オークションの取引データ
ダメージ箇所と損傷隠しのカスタムから事故車起こしの疑いが濃厚
外観上は大きな問題点はなく、年式的にも標準的な使用感といったところ。
カラーリングは定番の黒であり、転倒キズやサビといったマイナス材料もほぼなし。
ただし、査定員が気になったのは、不自然なヘッドライトのカスタムと、メーターステーの曲がり。
メーターステーは大きな衝撃を受けない限りダメージを負う可能性が少ない箇所です。
そのメーターステーに曲がりがあるのは大きな衝撃を受けた痕跡と考えられます。
次に、バルブ交換なしで社外ステーと社外ヘッドライトが装着されている点。こちらはメーターステーの曲がりと合わせて考えると、メーターバイザー・アッパーフェアリング・ステー・ヘッドライトが破損したために 社外ライトに交換したと考えられます。
購入時点で社外ヘッドライト仕様であったとのお話から、事故車起こしの可能性が高いものと判断。
修復痕やダメージ痕が残りやすいフレームのネック部分などを入念にチェックいたしましたが、ハンドルストッパーに歪みはあるものの、買取価値の今回を占めるメインフレームやフロントフォークの骨格に損傷は確認できませんでした。
走行距離が比較的浅いことに加え藤井様の扱い方が丁寧であったことを示すメーターとキーシリンダー周り
事故車起こしの可能性が高いという扱いが難しい状況の中、査定スタッフが特に重要視したのがこのメーターとキーシリンダー周り。
乱雑に扱うとキーホルダーやキーリング等によるキズがつきやすい箇所ですが、ご覧の通りほぼキズなし。
これはオーナーである藤井様の扱い方を如実に示すポイントのひとつで、現在は単身赴任中ですが乗る時は丁重に取り扱っていたことを示す材料のひとつと言えます。
エンジンやフレームへのダメージがなかったこと、購入されてから3年近く何も問題なく走らせることができていたというお言葉の根拠となり、フレームやフォークに損傷がないことの担保になりました。
総合評価と買取額
まずは全体的な外観チェックからですが、パッと見る限りでは塗装の色褪せや目立つサビ・キズはなく、2016年式(5年落ち)という経年に見合った使用感。
押し引きに関しても特に問題はなく、タイヤの山の残り具合もまずまずあり。
キーシリンダー周りにも引っかきキズ等はほとんどなく、走行距離17,323kmと相対的には平均並みに乗り込まれてはいたものの、過走行とまではいかないレベル。
2オーナー車両という経緯を考えると決して悪い状態ではございません。
引き続き各部を詳細に見ていったところ、社外ヘッドライトとミラーを装着しており、取りつけ具合のチェック段階でメーターステーに曲がりが生じていることに気付きました。
事故修復歴の記載は書類等にはなく、エンジンや腹下といった箇所にもそれを伺わせるキズ等はなかったものの、この箇所はよほどのことがない限りダメージが生じる箇所ではございません。
考えられるケースとしては、追突事故などによりヘッドライトやウインカー類が損傷し、その補修のために社外ヘッドライトにて代替した可能性が考えられること、 比較的簡単な交換作業で済む損壊状況であったため、事故車起こしであることを隠して販売された可能性が高く、代理人である奥様に状況をご説明した上で現オーナーである藤井様へお電話にてお話をお伺いさせていただくことに。
藤井様の話しぶりは穏やかで誠実さを感じさせるものであり、乱暴なライドで事故を起こす可能性は低いという印象。
ご自身で装着されたというフレームスライダーは、車検証に購入時のレシートが挟まっており、こちらには何ひとつダメージがなかったことで販売店側の問題であると判断。
現車状況を丁寧にご説明させて頂き、事故疑義車である可能性が高いことをご説明した上で買取査定の継続について確認させて頂きました。
藤井様はショックを受けておられましたが、「昨年暮れに閉店したので可能性は十分あるかも。このままだと宙ぶらりんすぎるので、一応査定は続けてもらいたい」というお言葉を頂けたため、 引き続き細部を拝見させていただきました。
その他箇所に関しては、マフラーのエキパイとサイレンサー接合部に目立つサビがある程度。
バッテリーのへたりがあってエンジン始動が危ぶまれましたが、大きな問題はなく始動性確認は問題なし。
フレームへの深刻なダメージも見受けられなかったことにより、フロント周りに難ありの実動車両として買取させて頂く方向で弊社上司から決済を取得。
買取業者の転売先である業者間オークションに流した場合、取引額の想定は事故車疑義で嫌気されることも想定し20万円台後半です。
しかしながら事故による損傷が骨格には無い点を評価し、弊社販売店(ご購入希望のお客様に状態と修復経緯のご説明を差し上げます)での仕入れ価格として 30万円の査定額をご提示させて頂くことに。 奥様よりスピーカー通話で藤井様におつなぎして頂き、査定内容のご報告と合わせ買取金額を申し上げたところ、二つ返事でのご成約となりました。
仮にですが、査定日がコロナ前であった場合の買取価格は20万円前後でしたが、コロナ禍でコンテナ輸送が滞り新車は品薄に、2輪の免許取得率も高まり、需給の影響で中古価格が上昇しています。
注相場の高騰を受けて、事故車起こしの疑義車ながら全く問題を抱えていない実動車両並みの価格にて買取可能とさせて頂いた事例となります。
減点のみで車両評価を進めるのではなく、販売力と再生技術に自信のある弊社バイクパッションならではの強みを活かした好事例のひとつです。
現在訳あり車両を所有しておられるオーナー様の判断材料としてもご一考頂ける事例だと自負しております。
2016年モデル
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 36台
- 平均価格: 295,056円
- 最高価格: 398,000円
- 最低価格: 152,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 4台
- 平均価格: 127,550円
- 最高価格: 185,000円
- 最低価格: 70,000円
相場情報:2022年1月31日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。