ヨンフォアの買取相場について先ず押さえておきたいのは、直近で大きく動いた相場の変動です。
右欄下段一番上のグラフをご覧ください。76年型CB400FOURの買取相場が直近8年間でどう推移してきたかを示したグラフです。
買取相場と申し上げましたが、具体的には業者間オークションの取引額の推移です。業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場です
以下、業者間オークションの取引データを元に買取相場を詳述いたします。
2017年までは90万円台平均で取引されていたCB400FOURですが、2020年には一気に150万円、更に2021年には230万円平均まで急騰。しかし2022年には反落し220万円台、2023年は180万円となっています。
直近5年間で、史上空前となる大変動を記録しているのですが。実は、この値動きはヨンフォアに限った事ではありません。元来からプレミアムが付いていた旧車に共通して認められる傾向なのです。
ご参考までに、プレミアムが付く旧車の筆頭格である「Z2」と、ここ10年来最も高く売れている400ccの3機種「ヨンフォア」「CBX400F2」「Z400FX」の相場変動を比較してみましょう。
【最も高く売れる400cc】業者間の平均落札額(と買取率)推移 |
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ヨンフォア 76年型 |
CBX400F2 84年型 |
Z400FX 79~82年 |
Z2(750RS) 73~75年 |
2016年度 |
90万円 (275%) |
126万円 (260%) |
74万円 (183%) |
210万円 (452%) |
2018年度 |
105万円 (321%) |
118万円 (243%) |
98万円 (242%) |
240万円 (516%) |
2020年度 |
160万円 (489%) |
126万円 (260%) |
144万円 (356%) |
263万円 (566%) |
2021年度 |
231万円 (706%) |
396万円 (404%) |
251万円 (620%) |
537万円 1155%) |
2022年度 |
227万円 (694%) |
405万円 (835%) |
194万円 (479%) |
373万円 (802%) |
2023年度 |
181万円 (554%) |
460万円 (948%) |
193万円 (477%) |
322万円 (692%) |
業者間オークションの取引履歴を2023年11月時点で12ヵ月間遡った数字
業者間オークションとは、買取業者の最大の転売先であり、販売業者の最大の仕入れ先として年間に約20万台のバイクが取引される会員業者間の市場
新車価格は、
74年型CB400FOUR=32.7万円
CBX400F2=48.5万円
Z400FX(81年型E3)=40.5万円
Z2(73年型)=46.5万円
上記は「Z2」「ヨンフォア」「CBX400F2」「Z400FX」の4機種について、直近8年間の業者間での平均取引額と(参考買取率)を比較した表です。
参考買取率とは『業者間での平均取引額÷当時の新車価格』で算出した数字で、100%であれば当時と同じ値段で、300%であれば当時の3倍の値段で業者間にて取引されていることを示します。
※尚、業者間の取引額は、買取業者にとっては転売額(販売業者にとっては仕入れ額)に相当しますので、査定現場での買取額で換算すると2~5%ほど率が下がります。
上記表からご紹介したいトピックは何点もあるのですが。
先ずは2021年をピークに相場が急騰している変動について。
2020~21年にかけて相場が高騰した理由には、コロナ禍で新車供給が細った点が挙げられますが、特に相場が上昇したのが元来からプレミアムの付いていた旧車と入手困難となった人気の現行モデルです。
事実、中古バイク全体を通じた業者間の平均取引額は2019年度が22万円、20年度が23万円、21年度が29万円、22年度が33万円、23年度が34万円となっており。21年度に25%と大きく上昇したものの全体としては右肩上がりが 続いています。
対して上記の旧車は、2020年度と2021年度に各々50~100%近い急騰を記録しており、僅か数年で2.5倍の値段となっています。 Z2に至っては2021年には参考買取率が1155%(業者間で当時の新車価格の11倍以上の値段で取引)を記録するなど、まさに実体のないバブル相場となっていました。
しかしながらこのバブルは高過ぎるプライスカードを下げた旧車が売れずに販売店で不良在庫化することで終わりを迎えます。 それが2022年のことで、この現象はZ1、Z750FX、Z1000MK2、Z1000R、CB750FOURなどZ2に次ぐプレミアム価値を保有していた旧車にも当て嵌まります。
唯一の例外が上記表にあるCBX400F2です。
2023年現在では、旧車ジャンルでZ1以上のプレミアムを付け最も高く売れる機種となっています。 (
最新版 高く売れる旧車ランキング)
81年型CBX400F、82年型CBX400Fインテグラも2022年以降は反落に転じており、CBX400F2だけが相場を伸ばしている理由としては明確な回答はありませんが、ネット配信のドラマが今も人気を集めている点、 物価高が進む海外コレクターの需要が旺盛な点が挙げられます。
世界初の量産4気筒マシンとなった1969年の「CB750FOUR」 、実速ベースで日本初の世界最速機となった1972年のDOHC4気筒「Z1」。その弟分として中型クラスで初の4気筒を搭載した「CB400FOUR」。 当時最大馬力の4気筒400ccとして爆発的なセールスを記録したZ400FX(1979年)。最速4気筒400ccを塗り替えた軽量CBX400F(1981年)と。70~80年代初期のバイク史を彩った名機に最も高いプレミアムが付いている400ccクラス。
CBX400F2を除くと2022年以降は上がり過ぎた相場は反落傾向にあり、2023年現在の相場は2022年や2021年の相場とは完全に別物となっています。
現在の相場を読み解く上で重要なのは、今後どう推移していくかを読みながら、ごく直近の相場にフォーカスすることです。
それでは398cc CB400FOURについて直近1年間に焦点を当てて掘り下げて見てみましょう。
76年型ヨンフォア【評価点別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
4点 |
183万円 |
250万円 |
150万円 |
7台 |
3点 |
171万円 |
179万円 |
164万円 |
2台 |
1点 |
159万円 |
159万円 |
159万円 |
1台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年11月時点で12ヵ月間遡った数字
5点:ルーティンの整備で再販に回せる良好車
4点:軽い追加補修や整備が必要となる劣化または軽い難がある
3点:追加整備が必要な難がある車両
1点:事故車又は不動車
上記は、直近1年間に業者間オークションで落札が記録された1976年型CB400FOURについて、評価点別に落札額を比較した表です。
平均落札額に着目すると、「高評価=高額落札」と順当な結果を示しています。
しかしながら同じ評価点でも最高と最低落札額に大きな開きが存在します。例えば4点評価のヨンフォアの最高落札額は250万円に対して最低のそれは150万円です。
なぜでしょうか?
何点か理由が挙げられますが、大きな理由を2つ挙げれば(1)評価点の中身、次いで(2)オークションという取引の性格(3)カスタム内容(4)カラーリングになります。
1)評価点の中身
評価点は、エンジン・フレーム・足回り・外装など6項目を評価した点数の平均整数です。そのため3.5~4.4点が4点評価に含まれるます。
更に同じ3.8点評価であっても評価を下げた主要因が、エンジンを降ろして整備する必要があるオイル漏れなのか?オーバーホールを必要とするサスペンションのオイル漏れなのか?ダウンチューブ(フレーム底部)の凹みなのか?
減点対象となった不具合(回復に要する整備コストの多寡)によって落札額は大きく異なってまいります。
2)オークションの性格
例えば買取業者のアルアルなのですが、「11月に出品した車両の入札が低調に終わり、翌月に再出品したところ前回の数割増しで落札された」といったケースです。
同一車両であっても出品のタイミング(買い手である販売店の競り具合)によって値段が跳ねることもあれば逆も然りです。
この現象は流通の少ない希少車に多く見られる傾向で、次回の出品タイミングが読めないことから入札が競った場合には相場以上の金額に跳ねやすい反面、入札が競らない場合は相場以下の低調な落札となり易いです。 更に、落札額(販売店の仕入れ値)と店頭販売額が激しく乖離するプレミアムな機種ではその傾向が顕著で、今回のヨンフォアは正に該当すると言えます。
3)カスタム内容
ヨンフォアにおいて、高額査定の基本線は塗装も含めて全てが純構成のフルオリジナル車両です。
しかしながら発売から50年近い歳月が立っている機種とあって、フルオリジナルの個体比率は減少の一途を辿っています。
純正の代替部品が無く社外品化するケース、再販を繰り返すうちにレストアやオールペン仕上げとなっているケース、嗜好に合わせてカスタムされているケースと様々ですが。 直近1年間に業者間で取引された実働車9台についても、8台は一見して分かるカスタム車両となっています。 (因みにフルオリジナルに近いのは最高値250万円を付けた個体の1台のみとなっており、オリジナル度が高い個体の再販価値の高さを示しています)
カスタムが施された8台ですが、カスタムの内容によっては評価点以上に査定額が伸びているケースもございます。
と申しますのも、社外品が装着されていると純正品の欠品扱いによって評価点上は減点が入りますが、純正品保管の社外品カスタムでは落札額が伸びる傾向があるためです。
定番ともいえる社外品には、
マフラー・キャブ・ホイール・シート・サイドカバー・プラグコード・ジェネレーターカバー・ハンドル・ミラー・ヘッドライト・点火コイル・灯火類・オイルクーラーなどですが。
モリワキやヨシムラの当時物ショート菅・当時物の高価なキャストホイール・F/CRキャブなどは純正品付きで査定額が伸びやすい傾向にあります。 対してリアショックや灯火類にリアフェンダーなどを変更している個体、電装系を改造している個体は落札額が伸び悩む傾向があります。
4)カラーリング
レッドとイエローが設定されてた76年型ヨンフォア。カラーリングでの取引額を比較してみると。
76年型ヨンフォア【カラー別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
レッド |
196万円 |
250万円 |
164万円 |
3台 |
イエロー |
162万円 |
170万円 |
150万円 |
4台 |
その他 |
190万円 |
201万円 |
179万円 |
2台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年11月時点で12ヵ月間遡った数字
台数が少ないため傾向としては弱いのですが、メーカー設定のレッドのカラーリングが大幅に高くなっています。
直近5年間と期間を長くするとその差は僅差ではありますが、やはりレッドが高く、ヨンフォアとしてイメージされるアイコンカラーの強みを発揮しています。
上記表で、「その他」となっているのはメーカー設定に無いオールペン(再塗装)のカラーリングで、具体的にシルバーとZ1000Mk2風のグラフィックが入ったワイン色です。
メーカー設定には存在しないカラーリングながら平均取引額がレッドに次いで高いのは、フルレストアとセットでフルオールペンされており、コンディションが良く綺麗にお化粧されている点が評価されてのことです。
上段のカスタムの段で「高額査定の基本線はフルオリジナル」と申し上げましたが、次点となるのはフルレストアやフルオールペンで綺麗に仕上げられた個体です。
フルレストアは、エンジンのオーバーホールに加えて、コイルやレギュレーターが劣化している場合には信頼性の高い社外品に変更してコンディションを向上させます。伴って評価も高まります。
オールペンに関しては、傷隠しでも多用されることから評価が上がるかは微妙な領域ですが、ヤレの強いメーカー塗装であれば、メーカー塗装を再現した仕上がりの良いオールペンは近似する価値があります。オールペンは外装に留まらず、フレームやエンジンにも施されます。こちらも綺麗なメーカー塗装が最上ではありますが、綺麗な―ルペンは外装同様に次点の評価となります。
ここまで、ヨンフォアについて76年型や398ccといった補足を記載してまいりましたが。その理由は74年型の408ccが存在するためです。
最後に74年型と76年型の相場を比較してみたいと思います。
ヨンフォア【排気量別】業者間での落札額 |
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平均落札額 |
最高額 |
最低額 |
台数 |
74年型 408cc |
87万円 |
190万円 |
41万円 |
66台 |
イエロー76年型 398cc |
181万円 |
250万円 |
150万円 |
9台 |
業者間オークションの取引履歴を2023年11月時点で12ヵ月間遡った数字
CB400FOURが登場したのは1974年12月。当初408ccであった排気量は、免許制度の改正によって1976年に398cc化されています。
そのため74年型と76年型で排気量(具体的にはストローク)が異なるのですが、上記表のように買取相場も大きく異なります。
398ccの相場が高い理由には、中型免許で乗れる76年型の方が需要が多い点に加えて、408ccの輸出仕様が逆車として多く還流されていることから供給数が多い点が挙げられます。
事実、直近1年間で取引が記録された66台の408ccフォアのうち、40台以上がここ5年ほどで新規登録された逆車となっています。 国内の相場上昇を商機ととらえ世界中からかき集めてタマ数が増えた408ccと、漸減傾向にある純国内物398cc。稀少性が高い398ccの価値が高いのは自然な現象と言えるでしょう。
以上、「評価点」「カスタム」「カラー」の切り口で76年型ヨンフォアの相場を見て参りましたが、落札額で区切ると以下の様な傾向となります。
- ▼76年型ヨンフォアの落札額と車両状態
- 250万円以上の1台
フルオリジナルに近いオール4点の個体
- 180~200万円台の2台
純正度が高くレストア済の2台。共に3.8点評価
- 150~170万円台の6台
カスタム車
ここまで買取相場の紹介に多くのスペースを割いてしまいましたが。。。
以上の相場を踏まえて、いよいよ今回買取させて頂きましたカフェレーサースタイルのフルカスタムが施された76年型CB400FOURの査定内容についてご紹介させて頂きます。 (尚、上記の業者間市場における落札額は、買取業者の転売額=販売業者の仕入れ額に相当するため、実際の買取額は95~98%相当となります)