ST1100パンヨーロピアン【1990～2001年】毎週更新の買取査定相場

ST1100パンヨーロピアンは1990年から主に欧州に輸出されたモデルです。
欧州市場で地力を発揮していたBMW Kシリーズに代表される欧州産ツアラーの対抗機として投入されました。
開発時期は80年代後半のバブル期、ホンダが欧州市場を開拓しようと本腰を入れて開発した車種ですから、細かいところまで気配りされた高品質さが特徴です。そのため登場1990年モデルは英国向けには9,845ポンド（当時のレート換算で約250万円）とハイエンドな設定でした。因みに1990年に米国産輸出車として国内初登場を果たしたゴールドウイングの売値は175万円で、国内生産のツアラー・パシフィックコースト800は89.9万円でした。
高価格に裏打ちされた高品質マシンとして知られざる名車と言っても過言ではありません。

開発された背景には、北米で【ゴールドウイングGL1800】が成功した次に欧州をターゲットとしたツアラー車種の開発です。ゴールドウイングよりも軽くスポーティで、シャフトドライブ、フルカウル、パニア装着などをパッケージし実現したモデルです。したがって排気量と車格は、ゴールドウイングと1986～90年に生産されていた当時のハイエンド・レーサーレプリカ【VFR750F】の間に位置するものとなっています。
フルカウル、エンジンまでフルカバードされたボディ、大型で高いスクリーン、左右パニアを装着したスタイリングなど、完全にツアラーとして位置づけられています。タンクに「HONDA」の文字がなければホンダ車とは気づかないでしょう。
エンジンは水冷4ストDOHCV型4気筒1,084ccを縦置きにレイアウト、最大出力100馬力を7,500回転で発生します。それを5速リターン式ミッション+シャフトドライブでリアタイヤを駆動します。
またブレーキは、当時としては先進的な二輪車専用ABSを搭載しています。

車体各部に目を向けると、フロントウインカーはハンドグリップ部にあり風防と視認性を両立しています。スクリーン下部にはスリットがあり、夏季のベンチレーションを確保。ガソリンタンクは2つに分かれており、膝の間にあるタンクは5リットル、シート下に約3リットル入る構造で重心位置を低くしています。つまり合計28リットル！　エンジンはシリンダーの一部が見えるフルカバードで、カウルはシート下まで車体をカバーしており整備性やスタイリングの面では賛否の分かれるところです。パニア前提のスタイリングも違和感はありません。
カウル内にはデジタル時計、水温計と燃料計、ヘッドライト光軸調整ノブがあり、40A高出力タイプのACジェネレータ、アンチノーズダイブTRAC、トラクションコントロールなども装備しています。
ただしこうした構造から装備重量は320kgとかなりの重量級となります。輸出車のためシートも800mmと高めですが、重さとカウルのため高速安定性は高く、重心が低いためにワインディングも走りやすいです。
96年モデルでは前後連動ABSブレーキが搭載されています。
このように、ST1100パンヨーロピアンは輸出車ゆえ国内ではあまり知られていませんが、実によくできたバイクだと言えます。ずっと所有しているライダーは皆、ベタ惚れのようです。発売時期が10年遅ければ、日本国内でも人気が出たかもしれません。
1990年の登場以降は
・1995年にはスクリーン改良
・1996年にはABS装備モデルに前後リンクブレーキを採用
・1997年にはオイルネーターの改良
とコナカなマイナーチェンジを受け、2001年モデルを生産終了となりますが、2002年モデルでは後継機となるST1300へと進化、2003年には北米でも展開され2018年モデルまでラインナップし、STシリーズとしては28年間のモデルライフに幕を閉じています

ライバルは、BMW【K100RT (84-89年)】【R1100RT (93-2001年)】、カワサキ【1000GTR (86-2003年)】などです。
売る際のリセールバリューですが、当時の新車価格を考えると、いささか振るわず 2024年現在で直近10年間の相場を見ると上限で30万円台、10万円前後平均となっています。この相場は仕向け地である欧州でも同様となっています。
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解説記事更新日：2024年03月02日