ZL1000は、1986年から88年までドラッガースタイルの輸出専用車として製造販売されました。前身となったのはGPZ900Rのエンジンを使用した【エリミネーターZL900】で、ZL1000はGPZ1000RXのエンジンを利用しています。両者とも中低速寄りのセッティングとなっており、強烈なスタートダッシュができるギア比となっているため、エンジンフィーリングはかなり違います。
スタイリングはストリートドラッガーをイメージした前モデルの【エリミネーター900】を踏襲、エンジン外観は同じですが、900と1000ではサイドカバー形状、ハンドル高さ、ナンバープレート位置などが違っています。
ZL1000のルーツをたどっていくと、起源は1976年に登場した2000台限定モデル【KZ900LTD(リミテッド)】にたどり着きます。
その後、国内では【Z750LTD】、81年の【Z1000LTD】、84年の【Z1100LTD】などが発売されており、そして85年にはエリミネーター900/750がリリースされています。カワサキ製アメリカンの持ち味は、どれもが当時最速のオンロードバイクのエンジンを使用していることで、それぞれZ750FX、Z1000、GPZ1100、GPZ900R/750Rのエンジンとなっています。
70年代後半からぞくぞく製造販売された日本製アメリカン『ジャメリカン』が、オンロードバイクよりかなりマイルドな味付けがされていたのに対し、カワサキアメリカンは、どれもが「尖っていた」わけです。
わけてもエリミネーターシリーズの初代モデル900は、まだ一般的でなかった「ドラッグスタイル」を提唱し、ロング＆ローの車体、極太のリヤタイヤ、バーハンドル、強烈な加速を味わえるギア比など、そこには日本製バイクの新しいスタイルがありました。
上位モデルとして発売されたZL1000は、ハンドルがアップタイプとなり、ドラッガースタイルから一歩アメリカンに近づきました。強烈な個性は薄れたものの、900より余裕のあるパワーとトルクで、街乗りから高速道路まで余裕の走りをしてくれます。なおZL1000には「エリミネーター」のペットネームはついていません。
900と1000のスペックを比較すると、1000の余裕ある走りがうかがえます。
・ZL1000：最大出力110馬力/9,000rpm　最大トルク9.3kgf/7,000rpm
・エリミネーター900：最大出力105馬力/9,500rpm、最大トルク8.7kgf/8,000回転

登場モデルとなった87年モデルA1の北米向け小売価格（MSRP）は4,899$。当時のレートで換算すると約71万円。
ハーレーのメインストリームの一角を成しているヘリテイジクラシック（1337ccで最大トルクは113.89Nm/3,600rpm）が日本に初導入されたのが同1987年モデルのこと、そのメーカー希望小売価格は190万円でした。
また、当時北米で生産されていたゴールドウィング（1,520ccで97馬力/5,000回転）が日本に輸入されたのは1988年のことで、175万円で売り出されておりました。
直球のライバル機には1986年に海外展開が開始されたXV1100 Virago（1063ccで62馬力/6,000回転）が挙げられますが、リセールバリューではZL1000エリミネーターが一歩リード。

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解説記事更新日：2024年02月06日

1987年のZL1000は、輸出専用モデルとして製造販売されました。既に同じスタイリングの【ELIMINATOR】 (900cc)、【ELIMINATOR750】が発売されていましたが、ZL1000には「ELI,IMINATOR」の名前はついていません。
また900と750では、ナンバープレート位置がリアフェンダー上で、後ろから見ると一目で車種が分かったものです。いわばエリミネーターのアイコンでしたが、ZL1000では一般的なフェンダー下に移されています。
ホイールベースはエリミネーター900の1595mmから1615mmへと延長。その超ロングホイールベースによるドラッグマシンスタイルは900や750と同じ、低い車体、太いリアタイヤ等は900，750と同一です。実際の性能もドラッグマシンに近く、加速力は抜群ですがコーナーリングはあまり得意ではありません。
エンジンは【GPZ1000RX】のDOHC4気筒で、ZL1000では低中速の特性を高め、トルク感溢れる走りが楽しめます。トルクがある分、出力特性はエリミネーター900よりも柔軟性があり、扱いやすくなっています。
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解説記事更新日：2021年08月26日

1988年のZL1000は、前年モデルから変更されていません。
XL1000は、前モデル【エリミネーター900】が1984年から86年に製造された後継モデルで、エンジンは当時のフラッグシップモデル【GPZ1000RX】のものをチューニング。
スペックは、
ZL1000：最大出力110馬力/9,000rpm　最大トルク9.3kgf/7,000rpm
GPZ1000RX：125馬力/9,500rpm　最大トルク10.1kgf/8,500rpm
と、ZL1000のほうが中低速寄りにセッティングされています。ホイールベースもRXは1,505mm、ZLは1,595mmと90mm延長されています。
全体のフォルムもロー＆ロングのストリートドラッグマシンのイメージで、で、900のイメージを継承。900のスペック105馬力/9,500rpm、8.7kgf/8,000回転と比べても低回転域から余裕のある走りができたことが分かります。リアのドライブ方式はシャフトです。
外観上900との違いは、
・900ではサイドカバーが四角に近い形、1000では三角形
・900ではテールランプ上にあったナンバープレートが1000では下に移動
・900はフラットバーハンドル、1000はアップハンドル
110馬力モデルの輸出先は英国、オーストラリアで、 100馬力モデルはドイツ、フランス、スウェーデンで販売されました。
ハンドル変更で分かるように、1000の性格はドラッグマシンよりかなりツアラー寄りになっています。そのためかどうか、人気は900や750には及びませんでした。ファンは「最強エンジンを積んだ最速ドラッガー」のイメージを望んでいたためか、車種名に「エリミネーター」の名が冠されなかったことか、理由はそのあたりにありそうです。
ライバルは、ヤマハ【V-MAX】、ホンダ【X4】で、いずれもドラッグマシンイメージのスタイリングをしています。
見方によっては、ZL1000は万人受けするドラッガーに変貌したとも言え、ノーマルで楽しむならアメリカン+ドラッガーマシン、ハンドルを低くすればドラッガーとして楽しむことができそうです。
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解説記事更新日：2024年02月08日