1980年代も終わりに差しかかったころにカワサキが400㏄クラスにオーソドックスなスタイングのネイキッドモデル「ゼファー」を投入。一躍、人気モデルとなりネイキッドブームの兆しが見え始めていた。この流れは中型クラスのみならず、リッタークラスのバイクシーンにも波及。1992年には「ゼファー1100」が登場し、ホンダからは「CB1000スーパーフォア」が同年にデビュー。そして、ヤマハからは排気量ではライバル2モデルを上回る「XJR1200」が発売。デビューモデルとなった4KG型は1994年3月に登場した。
車体はダブルクレードル型フレームにDOHC4バルブの空冷4ストローク直列4気筒エンジンをマウント。ボア・ストロークが77.0mm×63.8mmの1,188ccユニットで、デビュー時の最高出力は8,000回転で97馬力を発揮。トランスミッションは5速リターン式を採用した。
足回りには、フロントにテレスコピック式正立フォークを装備して17インチホイールを装着。ブレーキは320mmディスクをダブルで組み合わせる。リアは、スイングアームにオーリンズ製のツインショックをセット。ホイールはフロントと同径の17インチにシングルディスクブレーキを装備する。
ライバルモデルとしては、カワサキ「ゼファー1100」が比較対象になるだろう。エンジンはDOHC2バルブの空冷直列4気筒ユニットを搭載。1,062ccで最高出力は93馬力にとどまっていた。そして乾燥重量は243kgで本モデルより11kg重かった。スペック面のみで語ればライバルモデルの中でも「XJR1200」は、高性能モデルだった。
格下排気量となるホンダの「CB1000スーパーフォア」は、DOHC4バルブの水冷直列4気筒エンジンを搭載。乾燥重量235kgの車体で93馬力を発揮した。水冷ユニットなど構造面の違いもあり本モデルより3kg重かった。
なお、デビュー以降の「XJR1200」は翌年のマイナーチェンジでフロントブレーキにブレンボキャリパーを装備。1996年モデルまで展開され98年に「XJR1300」が登場するタイミングでカタログ落ちとなった。

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解説記事更新日：2022年05月20日

1994年型のXJR1200は初期型です。
当時を振り返ると、90年に750cc超の自主規制が撤廃され、今後リッタークラスが人気の中心になると予想されていました。94年は大型二輪免許取得が教習所で取得可能ではありませんが大型免許「解禁」かと皆が予想していた頃です。
既にリッターネイキッドとしては91年発売のカワサキ【ゼファー1100】、92年ホンダ【CB1000SF】があり、人気を集めていました。そこに投入されたのが（当時）空冷最大排気量のXJR1200です。エンジンは【FJR1200】ベースの空冷DOHC4気筒、中低速トルクを豊かにしたセッティングで97馬力を発生しました。
カラーリングは《ニューシルバーダスト》《ブラック2》《ディープレッドカクテル2》です。
スタイリングは80年代の【XJ400】【XJ750E】を彷彿とさせるもので、ヤマハらしくすっきりとまとまった造型となっています。リアサスは左右2本のオーリンズ、左右2本出しマフラー、ニーグリップ部を絞ったタンク、砲弾型メーター、角形ウインカーなど、ヤマハファンならずとも、どことなく懐かしささえ感じるデザインです。
ブラック塗装されたエンジンは、フィンのみアルミ地のままで空冷であることを強調しています。エンジンの熱対策のために大型オイルクーラーを装備しています。
XJR1200の登場によって、ヤマハ、ホンダ、カワサキからビッグネイキッドが揃ったわけで、これらマシンはフラッグシップたる存在でもあり、三者三様、リッタークラスの静かな闘いを繰り広げていくのです。
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解説記事更新日：2021年11月29日

1995年型のXJR1200はマイナーチェンジを受けています。
・フロントブレーキにブレンボ製対向4ポッドピストンキャリパーを採用
・チョークレバーをキャブレター横から左ハンドルグリップ部に移設
・シートクッション素材にワイラックスを採用
・シート高を従来型より10mmダウン
XJRとよく比較されるのがホンダ【CB1000SF】とカワサキ【ゼファー1100】ですが、実車を見て最も小さく感じるのはXJRです。ホイールベースはゼファーが1,495mm、XJRが1,500mm、CBが1,540mmと中間なのですが、やはりエンジンを含めてスリム＆コンパクトに感じるのでしょう。なお最も大きく感じるのは、「乗れるもんなら乗ってみろ」と言わんばかりの威圧感でそびえるCBです（それが開発コンセプトでもあります）。操縦性はもっと個性があり、ゼファーはどっしり系、CBは見た目は大きくても走れば軽快。
両車を研究して作られたＸＪＲは、操縦性も素直で癖がなく、幅広い支持を集めました。街乗りから高速、ロングツーリング等オールマイティに使える懐の深さがXJRの持ち味だとも言えるでしょう。
国内向けとしては初のヤマハ製ビッグネイキッドXJR1200は、「ハンドリングのヤマハ」の歴史に1ページを加えたのです。
カラーリングは《ニューシルバーダスト》《ブラック2》です。
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解説記事更新日：2021年11月29日

1996年型のXJR1200はマイナーチェンジを受けています。
・前年モデルより50mm幅広のオイルクーラーを装備
・シリンダーフィンを延長し冷却効果をアップ
・オーリンズサスをフルアジャスタブル方式に変更
・燃料計を加えた3連メーターを採用
1,200cc4気筒エンジンを空気で冷やすのは困難なことが分かります。ゼファー1100もオイルクーラーをつけていますし、空冷ネイキッドが徐々に減っていった理由の一つは冷却の難しさでしょう。混合気を濃くすれば若干冷却効果は上がりますが、そうすると燃費が悪くなります。どのあたりでバランスさせるかが技術者の腕の見せどころです。
XJR1200の開発においては、まずは「ハンドリングありき」で開発が進められました。フレームも、久しぶりのダブルクレードル製と、意外な苦労があったようです。さらには日常の回転域でライダーの感性に訴えるエンジン、常用速度でコントローラブルなブレーキなど、ヤマハならではの哲学が垣間見えます。《軽すぎない、重すぎない、リッタークラスにふさわしいハンドリング》は、初心者からベテランまでも納得させる、XJR1200ならではの一つの持ち味です。
この96年には、大型二輪免許が教習所で取得可能となりました。XJR1200はこれがモデル最終型となりますが、98年には排気量を拡大した【XJR1300】としてさらに進化していきます。
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解説記事更新日：2021年11月29日

4PU型のXJR1200は輸出仕様です。主に米国と欧州に輸出されました。エンジンとボディ構成、ホイールベース等、スペックはほとんど日本国内仕様と同じです。
具体的には、空冷4ストDOHC並列4気筒16バルブ、最大出力98馬力/8,000回転、最大トルク91.2Nn/6,000回転、ホイールベース1,500mmです。リアサスはオーリンズ製をOEMで装着（日本では「ヤマリンズ」と呼ばれました）。
外観上の違いはわずかで、輸出先によって、フェンダー長さ（写真：欧州向けのロングフェンダー仕様）やメータースケール表示（キロメートル/マイル）が相違点です。
大きく違うのは最大速度で、国内仕様はリミッターつきで180km/h、輸出仕様は228.5km/hです。輸出仕様は最大出力が1馬力高いこともありますが、これは測定方法による差です。
XJR1200の大きな長所はスリム＆スタイリッシュなボディ、素直なハンドリングで、これらは他のヤマハ製バイクも同様です。ライダーがXJRにそうした特性を求めるのは他国でも同じで、レトロな日本製バイクを好む層から支持を受けています。
XJR1200のエンジンルーツは水冷の【FJ1200】にあり、こちらは最大出力130馬力/9,000回転ですから、FJのパーツをXJRにも流用すればパワーアップも図れるようです。それよりXJR本来の楽しみ方は、市街地から高速走行まで幅広く楽しめるネイキッドスタイルにあります。
タイヤサイズをライバルの【CB1300SF】と比べてみると、前後17インチは同じですが、幅が違います。CBは前後で120と180サイズですが、XJRは130と170サイズです。フロントの130サイズから、CBに比べて落ち着いた粘りのあるハンドリングが推測できます。最大出力の発生は8,000回転、最大トルクは6,000回転ですから、低中速型と言えます。速いバイクが欲しい方には【YZF-R1】がありますから、XJR200は景色を楽しみながら余裕のパワーとトルクで心に余裕をもって走る姿が合っています。
他のライバルとしては、カワサキでは1992～2006年の【ゼファー1100】、スズキでは1995～99年の【GSF1200】や1998～99年の【イナズマ1200】2000～06年の【バンディット1200】などネイキッドというジャンルが確立されれ始めた時期でリッターオーバークラスでも多様な機種があげられます、リセールバリューでは歴史的名の系統であるCBとゼファーに分があり、XJR1200は90年代ネイキッドとしては中堅のポジションとなっていますが、国内仕様と海外仕様で買取相場に大きな差はございません。
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解説記事更新日：2024年04月18日