メグロ&カワサキ 目黒製作所時代からカワサキ・Wシリーズまでの歩みと歴史
目黒製作所 戦前期/1937年~1941年
戦前期/1937年~1941年
目黒製作所 戦後期/1947年~1960年
500cc単気筒・Zシリーズ
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Z1
1947年-
498cc 4ストOHV単気筒 最大13馬力
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1947~51年Z(メグロ Z1)
戦前のZ98式を再販化した戦後初のメグロ号。戦火によって材料調達・加工工程上の問題があったため構成パーツによる車体寸法の差異あり。軍需工場としての期間に培った技術を投入し最高出力を13PSにまで強化。
1951~52年Z2
Z1をベースに油圧式フロントフォークを採用し改良した戦後のZシリーズ2代目
1952~53年Z3
Z2をベースにプランジャー式緩衝器(リアショック)を採用した戦後のZシリーズ3代目
1953~55年Z5
戦後Zシリーズ初のフルモデルチェンジ車。トライアンフを規範に4速ロータリーミッションの採用と最高出力18PSの新型エンジン搭載で次世代メグロ号の誕生を印象づけた意欲作
1955~56年Z6
警視庁白バイ車両としての採用を目指しZ5のエンジンを最高出力20.2PSにまで強化した戦後Zシリーズ5代目
1956~60年Z7スタミナ
一般公募で「スタミナ」の愛称が決定したZ6のマイナーチェンジ車。メグロ500cc単気筒モデルの集大成として知られる戦後Zシリーズ最終型
250cc単気筒 ジュニアシリーズ
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ジュニアJ型
1950年-
248cc 4ストOHV単気筒
最大7馬力 最高時速75km
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1950~51年ジュニア(J1)
戦後急速に伸びた軽排気量市場をターゲットにした日本初の250ccオートバイとして登場。メグロ初のテレスコピックフォーク採用モデルとして軽快な運動性で評判を呼んだジュニアシリーズの原点
1951~52年ジュニア(J2)
J1のヒットに伴い1951年12月に投入された改良版。後のメグロ車全てに受け継がれるY字カバーとメグロメグロウイングのタンクエンブレムなども特筆事項
1953~54年ジュニアS
排気ポートを1ポート化した高回転型エンジンを搭載したジュニアJ2のリニューアルモデル。以後。メグロ250ccバイクの象徴的存在として名を残すことに
1953~56年S2
先代モデル・Sの基本構成を受け継ぎつつメグロ初の4速ロータリーミッションを実装したSシリーズ2代目。350ccのレックス号と650ccのセニア号開発による発展を支える大きな原動力に
1956~59年S3
S2をベースにティアドロップ型タンクなどを始めとする洗練された外観と上位グレードにのみ許されていた足回りで完成度を高めたSシリーズ3代目。メグロ250ccシリーズ最多販売台数を誇る金看板
1959年S5
メグロ初のOHCエンジンを搭載したメグロ F型の不評に伴い急遽リリーフ役として登場したS3のマイナーチェンジ版。「鉄かぶと」と称されるガソリンタンクなどSシリーズの中でも異色の存在
1960~63年S7
S5の車体を下敷きに大幅な見直しを行ったOHVエンジン搭載でリニューアルを図ったSシリーズ5代目。絶大な人気を誇ったZ7の車名や「ラッキーセブン」にあやかったのか、ナンバリングが一段飛びになったモデルとしても有名
1962~64年S8
メグロ単独でのSシリーズ最期を飾ったシリーズ集大成とも言えるモデル。大ヒット作のS3へ原点回帰を図った外観とスイングアーム式リアサスなどオートバイとしての完成度の高さが光る名機
1964~69年SG
後のカワサキ・エストレヤの原点にもなった昭和メグロ最期の250ccモデル。タフで信頼度の高いエンジンにより現存台数がもっとも多くメグロを象徴するモデルのひとつとして定評あり
350cc単気筒 レックスシリーズ
650cc2気筒シリーズ Tシリーズ(セニア号)
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セニアT1
1955年-
650cc 4ストOHV2気筒
最大29.5馬力 最高時速130km
当時の発売価 格33万円
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1955~60年セニアT1
後発メーカーの多気筒エンジンに対抗すべくメグロ初の並列2気筒(バーチカルツイン)エンジンが投入された試験機的モデル。高級感のあるデザイン性で後のカワサキ・W1へ多大な影響を与えたものの現役時代は高額すぎる価格設定で販売台数が伸び悩んだ不遇の一台
1957~60年セニアT2
商業的には失敗に終わったセニアT2の反省を活かしコスト削減化を図った廉価版。最高出力31PSを発揮し警視庁白バイ車両としての採用実績を持つスタミナ K1の兄貴分的存在
500cc2気筒・Kシリーズ
カワサキ Wシリーズ(W1~W3)/1966年~1974年
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W1(国内仕様)
1966-67年
624cc 空冷4ストロークOHV2バルブ2気筒
最大51Nm 45馬力 最高時速180km
当時発売価格 32.8万円
- 1964年9月に目黒製作所が経営破綻したことにより、業務提携していた当時の川崎航空機工業がその基盤と技術を吸収して誕生したカワサキブランド。吸収後しばらくの間は自社製空冷2ストエンジンを搭載した小排気量車を中心にオートバイメーカーとしての実績を高めておりましたが、かつてのスタミナ1K&K2を基にその水面下では完全自社設計による大排気量4ストロークエンジンの開発が進められていました。
その耐え忍ぶ期間が2年に差し掛かろうとした1966年、満を持して世に送り出されたのがメグロ車の造形美と自社技術の粋を結集して作られた名車として、今日現在も一際ステータスの高さで知られるカワサキ・W1(ダブワン)シリーズ。メグロの名が冠された500ccエンジン搭載最後のモデルであったK2のフレームを中心とした車体設計、"スタミナ"の愛称で知られるK1の並列2気筒エンジンに改良を行った624ccバーチカルツインを搭載し、高速時代に適した直進安定性の高さと最高出力47PSという高性能により、名実ともに日本国内最高スペックの持ち主として人気を博しました。英国の名門であるBSA車のA7 シューティングスターなどをオマージュした高級感ある外観も大きな見所で、クロムを基調に上質なキャンディートーンカラーを加えたビジュアル性の高さでも評判を呼びました。
元々、カワサキは1965年の東京モータショーにプロトモデルとして『650 メグロX』を出展しており、その反響の大きさに手応えを感じたことで北米市場をターゲットにした戦略車として、日本国内のW1とは別に輸出専用モデルを展開することに。現地販売会社であるアメリカン・カワサキ・モーターサイクルによる公式カタログでは、エンジンを日本仕様車より高出力化したW1を筆頭に、専用キャブトンマフラーや前後フェンダーを採用したバリエーションモデルのW1SS、北米市場専用車としてツインキャブによってさらにハイパワー化したW2SSとそのスクランブラーモデルであるW2TTを投入。残念ながら海外市場では「これは英国車のオマージュに過ぎない」と外観に関しての厳しい評価に加え、空車のままでアイドリングしていると勝手に車体が動くほどの強烈すぎるエンジンからの振動が不評を呼び、厳しい展開を強いられることに。
その一方、日本国内では国産最高クラスの排気量が生み出す図太いトルクと強烈な加速力とが評価され、当時はあまりにも高価すぎる「高嶺の花」となっていた英国車風のクラシカルかつ高級感あふれるスタイリングとが若者たちの心を掴み、後に”Z2”の名で知られる新型4気筒エンジンを搭載した『750RS』が1973年に日本へ投入されるまでの間、海外専用モデルのW2TTで得たノウハウを基にツインキャブ化したW1スペシャル(W1S)、W1Sを下敷きに左シフト化しツートーンカラーが施された進化版・W1SA、新型4気筒エンジンで比類のないハイパフォーマンスを発揮した『750RS(Z2)』と肩を並べる”RS(ロードスター)”の文字が車名に付与された昭和のバーチカルツイン搭載マシン最後のモデルとなった『650RS(W3)』と代を重ね、1974年の後期型650RS(W3A)を以ってひとまずメグロ由来の大排気量車としての歴史に幕を下ろしました。
W1~W3が該当する初期Wシリーズの買取相場ですが、日本のバイク史に三千と君臨する最長シリーズの中興の祖としてしっぱりしたプレミアムが付いています。
ただしKAWASAKIが1号機に1を付与したZシリーズ (丸Z⇒角Z)や H/SSマッハシリーズに比べると色褪せるのは世界に与えた衝撃度によるかもしれません。相場観としてはAシリーズに近いと言えます。
初期Wシリーズにおいて最も買取相場が高いのはW2TT。次いでW3そして僅差でW1シリーズという順になっています。査定額が伸びるのは純正度が高くコンディションの良い個体となります。
カワサキ 新生Wシリーズ/1998年~
カワサキ 復刻メグロシリーズ/2020年~
カワサキ Wシリーズ海外版/2020年~
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W250
2018年-
空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
最大18馬力
当時発売価格 7300万インドルピー
- 以上、駆け足ながらも目黒製作所時代から今日現在のカワサキプロデュースによるWシリーズと復刻メグロシリーズについて紹介させていただきましたが、海外では2017年に惜しまれつつ日本市場から去ったエストレヤがタイカワサキ製モデルの『W250』と名を変え、東南アジア戦略モデルとして活躍。デビュー当初はタイカワサキでしたが、タイにおける排ガス規制強化の高まりを受けてインドネシアへと製造拠点を変え、日本製クラシックバイクの完成度の高さを見せつけました。
このW250は車体・エンジン・外装とタンクエンブレムを除くほぼ全てがエストレヤを踏襲した構成でしたが、東南アジア地域では250ccクラスは高級モデルという位置付けであったため、上質なクロムパーツがおごられた日本メーカー製バイクの中でも特に華やかな存在として好調なセールスを記録しました。
また、W250が高級モデルという位置付けであったことから、より親しみやすく扱いやすいエントリーモデル『W175』も同時にリリース。こちらはフィリピンにて展開されていたトライシクル(3輪タクシー。いわゆるバイタク)向けのビジネスモデル『バラコ2』のプラットフォームを流用したもので、最高出力13PS・最高速度120km/hと平凡ながらもフラットなトルク特性とリーズナブルな価格設定で若いライダーたちから支持されました。日本市場へも一部法人・ショップによって若干数が渡海しており、今日現在では絶対的な玉数は少ないもののコストパフォーマンスの優秀さで一定以上の評価を獲得しています。 W250はデビュー当初から良好なセールスを維持し続けてはいたものの、メインマーケットであるインドネシアでは排ガス規制が以前よりも格段に厳しくなったことで対応化を迫られ、2023年を以って完全に生産を終了。ただし水面下では新たな排ガス規制適合モデルの開発が進められており、同年半ばには排気量を230ccにダウンしつつも最高出力を同一に保った正統後継モデルの『W230』がリリースに。インドネシアを中心に先代同様に高評価を博し、日本市場への導入にむけて入念な適合化が図られ、凱旋帰国を果たしました。
円安以前に輸入されてきた個体が比較的多く流通している海外モデルのWシリーズ。その買取相場はネオレトロとしてアジア圏を中心としたモデルの中では非常に高い買取査定率を誇っています。